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2006.06.25
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カテゴリ:コラム
 クォーツショックから30年が経過し、現在機械式時計は目覚しい復活を果たし世界中の愛好家から愛されるに至りました。そして愛好家の関心は心臓部であるムーブメントに向くようになり、時計メーカーは彼らの関心を集めようとムーブメントの付加価値を高めることに必死です。その甲斐(?)あってムーブメントによる時計の価格差は大きくなる一方です。ブランドネームだけで価格が決まっていた時代よりは進歩したと言えるでしょうが、現在のムーブメントによる価格吊り上げ合戦が正しい方向とも思えません。そこで、ムーブメントの価値についてじっくり考えてみたいと思います。(多少偏った見方をしているかもしれませんがご容赦を...)

「第1回:そもそも何故ムーブメントに拘るようになったのか?」はこちら

「第2回:そもそも時計なのだから「精度」が価値ではないのか?その1」

 先ずは現在に至るまでの歴史から「精度」について考えてみましょう。
 もともと時計の価値は「いかに正確な時を刻むか」ということが最大の価値でした。各社(者?)時計の精度を上げることにしのぎを削り、高価な材料や複雑な機構、丹念な仕上げなどにより「正確=高価」という価値観が成り立っていた時代が長く続きました。

 18世紀から20世紀初頭にかけて様々な機構の発明や技術の進歩により、機械式時計は目覚しい進歩を遂げました。重力による影響(姿勢差)を打ち消すための「トゥールビヨン」や、温度による変化を補正するための「バイメタル切りテンプ」をはじめ、様々な脱進機や緩急調整装置の発明、また優秀な時計師による入念な調整など、「精度」への飽くなき追求が感じられます。
 そしてこれら精度を高めるための努力は全てコストに跳ね返ることになり、必然的に精度が高い時計は高価であったのです。19世紀に入って工業が発達すると少々「高価」のニュアンスは変わってくるのですが、「精度」が価値の大部分を占めていたことには変わりありません。あちこちで精度を競う「コンクール」が開かれ、上位入賞することは時計メーカーとして大変名誉なことであり、コンクールの成績が売り上げに直結していたことは想像に難くありません。

 20世紀に入って暫くすると、インバーやエリンバーなどの(温度による変化が極端に少ない特性を持つ)金属が時計に利用されたり、工業の発達で部品の製作精度が向上したことで、時計の構造は単純化していきます。またこの頃から主役は懐中時計から腕時計に移っていきます。これは構造の単純化や製作技術の向上によるムーブメントの小型化や、戦争での需要によるところが大きかったのでしょう。
 次第に時計も大量生産されるようになり低価格化が進みますが、当然高級品もあり、メーカー毎の住み分けがはっきりしてきたと言えます。高級品の代表、例えばパテックフィリップ、何故パテックフィリップが高級品として不動の地位を保ち続けていたかと言うと、精度を追求した妥協のない一貫した時計作りが、コンクールなどの成績によって認められていたからでしょう。
 ブランドによる住み分け(格付け)がされるようになったと言っても、その根底には精度が大きく関わっており、少なくとも20世紀中盤(1960年代)までは、やはり精度こそが時計の価値という価値観が支配的だったと言えるのではないでしょうか?(メーカーや国の思惑などもあり、必ずしも精度と価格が比例関係にあった訳ではないのでしょうが、「一般的な消費者にとっては」と解釈して下さい)

次回は1970年代に起こったクォーツショック以降の「精度」に対する価値観について考えてみます。




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Last updated  2006.06.25 22:07:16
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