テーマ:時計NEWS(281)
カテゴリ:コラム
クォーツショックから30年が経過し、現在機械式時計は目覚しい復活を果たし世界中の愛好家から愛されるに至りました。そして愛好家の関心は心臓部であるムーブメントに向くようになり、時計メーカーは彼らの関心を集めようとムーブメントの付加価値を高めることに必死です。その甲斐(?)あってムーブメントによる時計の価格差は大きくなる一方です。ブランドネームだけで価格が決まっていた時代よりは進歩したと言えるでしょうが、現在のムーブメントによる価格吊り上げ合戦が正しい方向とも思えません。そこで、ムーブメントの価値についてじっくり考えてみたいと思います。(多少偏った見方をしているかもしれませんがご容赦を...)
「第1回:そもそも何故ムーブメントに拘るようになったのか?」 「第2回:そもそも時計なのだから「精度」が価値ではないのか?その1」 「第3回:そもそも時計なのだから「精度」が価値ではないのか?その2」 前回までの考察では20世紀中盤までは「精度」が時計の価値を決める重要な要素であったという結論でした。ところが1970年代に起こった「クォーツショック」によって、時計に対する価値観は大きく変わっていくことになります。 1969年、日本のセイコーが初のクォーツ腕時計「アストロン」を発売します(初のクォーツ腕時計商品化はジラールペルゴとも言われていますが・・・。また現在も広く使われているクォーツの周波数(32,768Hz)を決めたのはジラールペルゴらしいです)。クォーツ(水晶振動子)を時計に使うと言う概念はそれ以前からありましたが、腕時計に搭載できるほど小型化したということが大きな技術革新であったようです。 そして何よりクォーツ時計のすごいところは、機械式に比して桁違いに高い振動数により、文字通り桁違いに高い精度を誇ったことです。当時の一般的な機械式時計の精度がせいぜい「日差」数秒~十数秒だったのに対し、クォーツ時計は「月差」で表現しなければならないほど誤差が少なかったのですから、正に「桁違い」の精度だったと言えます。 ただ、セイコーが発表した「アストロン」は当時45万円(車が買えるくらい)という高価な製品で、当時の価値観(精度=価値)から外れた存在ではなかったと思われます。しかしその後クォーツ時計の量産・低価格化に成功したセイコーは、70年代から80年代にかけて正確で安価な時計を大量生産し、市場を席巻しました。それまで高級品であった腕時計が、子供のお小遣い程度で買うことができる価格にまでなりました。一気に「精度=価値」という価値観は崩れ去り、それまで精度を上げることで価値を高めてきた機械式時計の存在価値そのものがなくなりかけました。 機械式に拘り、クォーツの開発に後れを取ったスイスやアメリカの時計メーカーは大打撃を受け、多くのメーカーが駆逐されました。これがいわゆる「クォーツショック」です。 その後、スイスの時計メーカーは見事に機械式時計を復活させるのですが、復活の原動力となった「価値」は、もはや「精度」ではなかったと思えます。精度に価値がないと言うと語弊がありますが、精度に価値があるとすればあくまで建前的なもので、本当に精度が必要なら安価なクォーツという選択肢があるわけですから、機械式を選択する時点で既に精度に対して大きな期待をしていないと言えます。つまり「機械式なのだからクォーツほど正確でなくて良い」というふうに、「精度」に対する価値観が変わったのです。 次回は機械式時計の価値が精度から何に変わったのか考えてみたいと思います。 <特集> ボーナスで買う!一生モノの本格機械式時計 ボーナスの残りで買う!プチ贅沢機械式時計 売り上げランキング上位の常連 人気のWatch SHOP こだわりのラインナップ!当BlogオススメSHOP 用語など解説はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.07.02 23:28:09
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