スクールカウンセラー
南向きの暖かい部屋。カウンセリングルームでは、物静かで上品な年配の女性の先生が迎えてくださいました。卒業式の前日まで、約4ヶ月間、週に一度先生とお話するのが、その頃の私の気づきと癒しの時間になりました。いつもゆっくりと美味しいお茶を入れてくださって、「どんな様子ですか?」と優しく問われると、私はこれまでの息子の様子思いつくまま、全部話しました。そして、話している間に、あんなことも、こんなことも、ああ、あれはそうだったんだ・・・。これはそうだったんだ・・・と「ストン」と落ちる感覚を感じました。合点がいくというんでしょうか。たいていは、「そうですか・・・」と聞いてくださることが多かったのですが、私が、「娘はあまり何でも出来ない方だったので、何か出来ると、もう拍手してブラボー!!というくらい大げさに心からほめました。でも、息子は何でも出来たので、「すごいね」とはいうけれど、心がこもってなかったように思います。」と言うと「あら、出来てほめてもらえないのは損ですね」と先生「息子には、いつも出来て当然、出来ないとサボってると思っていました。」と私。そこで、はっと気づきました。あ~息子は私にほめて欲しかったんだ!と。小さい頃から息子は何か出来ると「すごいでしょ!」と私にアピールしていました。「子供はね、小さい頃に親からもらえなかったものを、思春期に取り返しに来るんですよ。そのために、親から見たら困った行動にでるんです」と先生。私からもらえなかったのは、何だろう・・・。ほめてもらうこと?認めてもらうこと?いつも早く!早く!とせかせてばかりで待ってあげれなかったから、待ってもらうこと?そう気づくともう息子に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。あれも、これも、あの場面も、息子は認めて欲しかったんだ。ほめて欲しかったんだ。私は息子に対して不満ばかりを持っていました。もうちょっと頑張ればいいのに!いいかげんなんだから!と。ああ!!申し訳ない!!ごめんなさい。私ははなんてひどいことをしてきたんだろう。どんなに傷つけてきたんだろう。カウンセリングから帰って、私は息子に謝りました。「ごめんな。ママはあんたの事認めてなかった。不満ばっかり持ってた。あんた頑張ってたのにごめんな。」息子はびっくりした顔で「おかあちゃんはワシをかいかぶりすぎやねん。ワシ、がんばってたで。」「そうやんな!!ほんまごめんな!!」「もういいよ。わかったよ。」それ以降息子は落ち着きました。塾も行かないし勉強もしなかったけど、表情が柔らかくなり、暴言を吐かなくなりました。息子が変わったのではなく、私の息子への態度が変わったからだと思います。子は鏡なのだと思いました。けれど、これは、私が楽になっただけで、息子はそれ以降恨み言ひとつ言うことがありませんから、そいう吐き出しの機会を奪ったことになるのかな?と気になっています。受験が近づくにつれ、学校も五月雨登校になっていきました。年が明けるといよいよほとんど学校に行かなくなりました。眠れないといい、昼夜逆転がひどくなりました。「受かる気がしない」「絶対無理や!落ちた」そんなことばかり言っていました。その頃、ネットで色々調べ、「黙る」ということが大切だと知りました。わからないながら、心がけるようにしました。けれど、その頃は息子のそんな状態は、受験へのプレッシャーだと思っていましたから、きっと受験が終わったらすっきりするものだ、くらいに思っていたのです。