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カテゴリ:時事関係
マスメディアがこぞって報道している次期首相の内容で、良く出てくるのは「特定アジア関係」の話題だ。今回は、このことについてちょっと話してみようと思う。
政治的に見て、日本の首相選びに、中国や韓国との関係を重視する意見があるのにはきちんとした理由がある。 その理由の一つにあがるのが、「東アジア共同体」思想だ。 簡単に、そこに至るまでの状況説明をする。 まず、念頭において欲しいのは、「日本が色々な国に多くの融資を行っている」という事実。 それから、日本との貿易船は、多くの場合「東南アジアの海域を通らなければならない」という状況。 日本が、多くの国々に融資を行っているのは、”過去の歴史云々”などというセンチな理由からではない。純粋に、日本という国にとって、利益がある(又は、利益が見込める)からだ。 では、どんな利益があるのかというと、今更言うまでも無いが日本には資源が乏しいという難点があり、しかし、それを補ってあまりある技術がある。 一方、日本が融資を行っている多くの国には、他国が必要とする資源はあるが、自国が必要とする技術が乏しいという状況。 となれば、利害一致。手を結んで当然であろう。 そして、日本にとっては貿易を行う上で、重要な海域を有している国々が多いので、その国々に融資を行う事で、国が安定し安全な航海が行えるのであれば日本にとっては、多いに利益となる。 また、融資を行った国が安定するだけではなく、大幅に発展してくれたら、融資を行った金額が早くに返済される上、大口の貿易国となってくれるかもしれない。 これは、ビジネス上では大いなるメリットであろう。 しかし現実は、東南アジア市場に対して、そういう思惑を練るのは日本だけではない上に、そういう思惑の外で、動く人々もいる。 なによりも日本にとって一番困るのは、ドルの価値を上げるために、東南アジアの国々が発行している紙幣価値を下げて、利益を得ようとする動きだ。 これは、経済発展の妨げになる上に、下手をすればその国が潰れる行為だ。 その国にとっても、日本にとっても、とんでもない話である。 だから、日本は、そういう兆候が見られたら、即座に対応しなければならず、そのためには、大量のドルを保有していなければならないのだが、、、当然ながら、お金は無限にあるものではない。 つまり、イタチごっこなど「やってられない」のである。 そこで担ぎ出されてきた構想が、『東アジア共同体』である。 これは、簡単に言うと、ドルの影響が大きいから、東南アジア市場が左右されるのだから、アジア共通の紙幣があれば事はすむんじゃないの? ドルの影響力を減らそうよ!アジアにはアジアの経済基盤を作ろうよ!っていう思想だ。 この構想は、日本がはじめに言い出したことではなく、1990年に当時のマレーシアの首相が提言したものだった。 でも、即座に米国に潰された。(米国には米国なりの理由がある) その次に、言い出したのは日本で、きっかけは1997年の経済危機。 だけど、これもアメリカと中国に潰された。(米国には米国なりの、中国には中国なりの理由がある) それでも諦めきれずに、中曽根康弘が評議会会長となって、今またその構想が提言されているのだ。 色々な経緯があって、「アジアにはアジアの経済基盤を!」という願いを達成する為に、ASEAN(東南アジア諸国連合)と、日本・中国・韓国が、協力してアジア経済を支えていこうという構想が、実現に向けて練られているのである。 この『東アジア共同体』構想は、過去に2回潰されているだけあって、米国と中国の思惑抜きには語れないところがある。 ハッキリいってしまえば、東南アジア市場への影響力を米国が握り続けるのか、中国が取って代わるのかという抗争手段になっているのだ。 なんてことだ、日本の利益を考えて日本が音頭をとって言い出したことなのに、日本の思惑なんて蚊帳の外と化しているではないか。 でもここで「いや日本がやりますからお構いなく」なんて言おうものなら、先の戦争思想がどうのこうのという輩がでてくるので、下手な事は言えない。 なので、日本としては進行役に徹しながらも、「ドルの影響」も「中国支配」も最小限に押さえるべく立ち回らなければならないのだ。 ASEANからみれば、アジアの経済基盤がほしいのであって、ドルから中国元に影響力が塗り変わるだけでは、なんの意味もないのである。 もっと言えば、「ドルからの完全脱却」なんて露ほども思っていないし、米軍の有難さも有効に活用したいと考えているのだ。 それは、日本にとってみても同じ事で、そうでなければ、日本が音頭をとった意味がなくなってしまう。 さぁ、困ったぞ日本! と、まぁ、こういう構想があるのだから(本当はまだ他にもいろいろあるが、今の話題はこの件だけなのでとりあえず限定とする)、 ASEANからも、日本への中国や韓国との関係改善を望む声が多いのも分かるだろう。 これは、中国の意向に従えと言うのではなく、日本にうまく立ち回ってもらって、アジアの経済基盤を打ち立ててほしい、という要望なのである。 そういう各国それぞれの思惑で、注視されている「日本の次期首相」の話題を、日本のメディアはどのように伝えているかといえば、なんと情けない事に、靖國問題一辺倒なのである。 某メディアに至っては、中韓だけではなく、米国までも、次期首相が靖国参拝を行うことに懸念をもっていますよ、とでも言わんばかりの報道であり、ASEANから寄せられる、切実ともいえる中韓との関係重視意見も、日本のマスメディアの手にかかれば、陳腐な中韓重視論に摩り替わってしまうありさまだ。 いくらマスメディアの使命のひとつに、「政府批判」というシステムが組み込まれているとはいえ、この状況はあんまりであろう。 マスメディアがこぞって取り上げる、「靖國参拝問題」「戦犯分社論」なんてものは、中韓の国内問題(反日政策)を日本に押し着せようと言う計略にすぎず、それを”現政府批判”というお題目のもとに、まんまとハマって報道している姿でしかないのだ。 (日本のマスメディアは自分たちが伝えたいことしか伝えようとしないから、たちが悪い) いくら中韓政府が自国有利に働くようにもっともらしい非難をしてくるからと言って、そして、それをマスメディアがこぞって取り上げるからと言って、”ハイその通りですね”と、日本がそれに諾々と従うようでは、「アジアの経済基盤」なんていう構想は、幻想でしかなくなってしまうのである。 中韓政府の言い分に従って喜ぶのは中韓政府だけであって、他の、特にASEANでは、最も選択して欲しくない選択肢なのだ。 そのような政策が取られれば、『東アジア共同体』構想は、早くも頓挫してしまうか、空洞化してしまうであろうということは、想像に難くない。 日本は今後、政治的にどのようなスタンスを取ろうとしているのだろうか? マスメディアが垂れ流す印象操作に惑わされることなく、散りばめられている事実をかき集めながら、今後の動向を注視していきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 23, 2006 09:23:05 AM
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