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カテゴリ:時事関係
記事などを書く上で、ある程度の結論を決めておいて取材することを、「決め打ち取材」というらしい。これは、取材を行う時の方法の一つであるので、このこと自体は問題視する必要はない。
記者によっては、伝えたい結論を持ってくるためにそれに沿ったニュースを探しだすこともあると思う。 しかし、結論が違う話をもってきているのに、先に報道されている結論と結びつけさせるような「印象操作」を行うのはいかがなものかと思う。 というのも、今朝のネットニュースで、先日私が書いた「東アジア共同体」記事に関連すると思われるニュースがアップされたのだが、(相変わらずと言うべきか)読み手に誤解を与えるような構成だったのである。 (ネットニュースは一定期間を過ぎるとネットから削除されてしまうので、後から読んでも分かるように全引用しておく) ---------------------------------------------------------引用開始 靖国問題「日本のためにならない」 米元国防次官補代理 2006年05月24日01時13分 米クリントン政権で国防次官補代理を務めたカート・キャンベル米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長は23日、都内でのシンポジウムで小泉首相の靖国参拝問題について「今起こっていることは日本のためにならない、ということで専門家の意見は一致している」と懸念を示した。 キャンベル氏は、靖国問題に対する米国の対応について(1)関与すべきでない(2)「憂慮している」と伝えるべきだ、と研究者の間で両論があることを紹介。「ASEAN(東南アジア諸国連合)の多くの国が私に『何で米国は日本を非難しないのか』と言う。克服すべき問題だ」と語った。 ---------------------------------------------------------引用終了 asahi.com > 政治 > 国政 > 記事 靖国問題「日本のためにならない」 米元国防次官補代理 より全引用 http://www.asahi.com/politics/update/0524/001.html ここで、このニュースを読んだ人が、”米国もASEANも「靖国参拝問題」を懸念して、小泉首相の靖国参拝を非難しているのだ”と思わされたとしたら、それは記者の思惑にのらされて、記事の印象操作に翻弄されていることになる。 何故なら、この元次官補はそのようなことを一言も言っていないからだ。 米国は今、日本が音頭をとって話し合われている「東アジア共同体」構想によって、下手をしたら東南アジア市場から締め出しを食らうかもしれないという危機的状況なのだ。(概略は「東アジア共同体」を参考) 「東南アジア市場」をめぐって、中国との勢力争いをしているまさにその時に、自国が不利になる(日本に中国よりになってもらいたいという)ようなコメントをするわけが無いのである。 そのことを踏まえた上でこの記事を読むと、全然違う「結論」を得る事が出来る。 まず、表題にある、”靖国問題「日本のためにならない」”で、省略されている<靖国問題>の意味は、<靖国を参拝している問題>ではなく、<靖国参拝で騒がれている問題>である。 「今起こっていることは日本のためにならない」の<今起こっていること>の意味は、<中韓が抗議していることを理由に、参拝中止論や戦犯分社論が出て、世論がそれに誘導されている現状>のこと。 ASEANから出ている『何で米国は日本を非難しないのか』の非難は、<何>に対しての非難かと言えば、<中韓の勢いに押されて、および腰になっている日本政治家の動きや、乗らされてしまっている世論に対して>である。 ASEANの言い分は、もう少し言葉を足さなければならないかもしれない。 東南アジア市場は、ドルの影響が大きすぎるので、米国経済の影響を受けやすい。 なので、アジア経済の基盤を打ち立てて、ドルの影響を抑えたいという構想がある。 この構想自体は、現在の米国にとって、そう悪い話ではない。 全てを自分の国の経済力で操作するよりも、遠隔操作するほうが自国の負担が少なくて済むからだ。 では、提言されている構想のどこが問題かといえば、『東アジア共同体』への参加国の中に、米国と友好な関係を結んでいて、中国と対等に話ができる国が日本以外は排除されている事が、問題なのである。 そんな中で、日本が外交ベタを発揮して、中国の言い分をそのまま受け入れるような言動(外交)をするということは、ASEANにとっては脅威なのだ。 ASEANは、アジアの経済基盤が欲しいのであって、ドルから中国元に変わって欲しいわけではないからだ。 話をもとに戻す。 つまり、この記事の本当の内容は、 ”中韓の意向にしたがうというような日本国内の動き”に対して、米国もASEANもそれでは困ると言っている。 というものなのである。 略語を使用する。主語を省略する。発言者が対象としている事柄を明記しない。 というような手法によって、新聞社いわく”事実を記事にしている”にもかかわらず、読み手に与える印象を変えてしまうような報道を、印象操作という。 私たち読者は、こういうような印象操作というフィルターがかかった報道によって、事実誤認をさせられないように気をつけなければいけない。 事実誤認をさせられたままで判断を下しては、良い結果を得られるわけがないからだ。 その為には、日本が今、どのような立場にいるのかを知らなければならないと私は思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 24, 2006 09:11:22 AM
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