カテゴリ:素晴らしき銀幕のバイプレイヤーたち
名老け役として大活躍した日本映画界のバイプレイヤー・加藤嘉‥‥
もともとは舞台出身で、劇団民芸の創立に一役買った左翼俳優ですが、 日本映画の黄金期から'80年代末まで、主におじいさん役だけど、 幅広い役柄と、卓抜した演技力で、映画ファンを魅了した人です。 「若い頃からおばあさん」が北林谷栄さんなら、 この人はまさに、「若い頃からおじいさん」です。 金持ちのヒヒ爺、認知症の老人、暗黒街の大ボス、好々爺の職人、たたき上げの老刑事などなど、 それは幅広いジャンルの役をこなし、数々の名作に出演していますが、 モイラが特に印象に残っているのは‥‥ 1 「米」('57年 東映)の貧しい農家の中風の老人。この時、加藤氏は44歳だったけど、マジで80すぎに見えました。 「ひえー、この人、何十年も前からおじいさんだったんだ?!」と、驚嘆したもんです。 2 「真昼の暗黒」('56年 現代ぷろだくしょん)の鬼刑事。前科もちというだけで、罪のない若者を拷問して殺人犯にでっちあげる恐ろしい役でした。 3 「拝啓天皇陛下様」('63年 松竹)。こんな優しい人間味のある老中隊長がいる軍隊なら、入隊してもいいかなと思わせる役柄でした。 4 「ふるさと」('83年 松竹富士)。認知症の老人役がコワいくらいリアルでした。モスクワ国際映画祭最優秀主演男優賞受賞作! 5 テレビドラマ「太陽にほえろ!」のゲスト出演での、孤独なバタ屋のおじいさん。無愛想だけどテキサス刑事といつしか心を通わせるやりとりが、じーんときました。 だ・け・ど‥‥モイラの脳裏にいっちばん強烈に残っているのは、 この超名作映画の本浦千代吉役! 忌み嫌われる不治の病を抱え、幼い息子と巡礼の旅に出るけど、息子と離れ離れに‥‥ そして後年、立派に成長した息子の写真を見せられるや、「うーーッうッううーーーーー!!!」と泣き崩れ、 「し、し、知らねえ!知らねえ!あああああああーーーーーッ!!」と絶叫する‥‥ この瞬間に、丹波哲郎も加藤剛もどこかに吹っ飛んでしまいましたね。 日本映画史上に残る名演技でしょう。 加藤さん、役柄はいつも年寄り臭かったけど、 私生活ではなかなかの色男で、(なにせトップ女優・山田五十鈴を落とした上に、 彼女を左翼思想に一時期染まらせたほどですから)、 山田さんと離婚したあと、娘くらいの年の女優さん(中村雅子。「米」で加藤さんの娘の役)と結婚。 いつもおしゃれで、服装なども若々しかったそうです。 それにしても、20年前に亡くなった時に、まだ75歳だったとは驚きでしたね。 亡くなった時の歳よりもはるかに上の役をいくつもこなした役者さんって、 あんまりいないと思います。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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