カテゴリ:嗚呼なつかしのテレビドラマ♪
秋葉原の通り魔殺人事件、元厚生次官夫妻の連続殺傷事件、千葉の幼女殺害遺棄事件と、
今年は眉をひそめたくなる凶悪事件がやけに目立ちますが、 今から37年前に起こった、群馬での連続女性誘拐殺人事件には、 日本中が愕然とし、震撼しました。 8人もの若い女性を言葉巧みにドライブに誘い、性的関係を迫った挙句、無惨に殺した男・大久保清の名は、 小学生の脳裏にも刻まれたものです。 その大久保清の犯罪人生を、秀逸なシナリオと、効果的な演出、 そして何よりユニークなキャスティングで、1983年にテレビドラマ化したのが、この作品! 稀代の殺人鬼・大久保清を演じたのは、ビートたけし。 この頃のたけしは、まだ役者としてはそう活躍していなかったのですが、 日本犯罪史上稀に見る凶悪犯を、ただの極悪人ではなく、 視聴者に多少の共感を抱かせる一人間という側面を垣間見せた 実に存在感あふれる演技をしています。 たけし演じる大久保清は、兄嫁さえ妻(清にとっては母)の前で平気で寝取る、性欲が有り余っているような旧国鉄職員の父と 「ボクちゃん、ボクちゃん」と彼を盲目的に溺愛するロシア人との混血の母の間で育ち、 幼少の頃からある種の性的トラウマを抱き、 小学生の時、近所の幼女に対して強制わいせつ行為をはたらき、 長じて性犯罪を繰り返し、何度か刑務所入りした男。 虚言がひどく、またそれがうまく、 読書家、特にヨーロッパの詩の愛好家で、地方ではわりと博識、 おまけに、西洋人の血が混じったエキゾチックな風貌も手助けしてか、 自らをある時は詩人、ある時は画家と称し、 元妻を含めた多くの女性が、彼の一種教養を感じさせる話術にころりと騙されてしまうのです。 事実彼は、谷川伊風のペンネームで「頌歌」という詩集を自費出版していて、 それを愛車のマツダロータリークーペの中にいつも置いていたそうです。 女性に対する猥褻事件はたびたび起こしていたものの、 殺人には手を染めたことがなかった大久保が、なぜ8人もの女性を次々殺したのか‥‥ このドラマにその答えらしきものが出ていますが、真意のほどはわかりません。 しかし、モイラの脳裏に強烈に印象に残っているシーンがあります。 それは、たけし扮する大久保清が、自ら書いた詩を呟くように朗読するシーンです。 その詩は、確かこんな内容でした。 「伊凡は待った。ひたすら待った‥‥来る、来ない‥‥来る、来ない‥‥」 平坦な表現ですが、大久保清という男の心の葛藤と孤独が垣間見えましたね。 なんだかとても寂しく、哀しい詩でしたが、稀代の殺人鬼の中にも心の清らかさ ある種の文才のようなものの存在を感じさせるシーンでした。 大久保清は一審で死刑判決を受け、その後控訴せず、 '76年1月22日に東京拘置所で絞首台の露と消えました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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