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Dec 12, 2008
カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評
今夜とりあげるのは、'88年、カンヌ国際映画祭で絶賛された問題作です。
それは、クロード・シャブロル監督の「主婦マリーがしたこと」。  マリーは第二次大戦下の北フランス・ノルマンディー在住の まだ幼い２児を抱える、決して裕福ではない家の主婦。 この時、フランスはナチス･ドイツ占領下にあり、 彼女の夫ポールは兵隊にとられた挙句、負傷して復員したものの、 妻子のために働く気力さえ失っていた。 マリーは子どもを食べさせるため、夫の復員中、一度だけ手を染めたことのある 闇の堕胎に手を染め始めるのだった‥‥ 日本では医師による堕胎は、一定の条件を満たせば、かなり前から合法ですが、 カトリックの勢力が強いフランスでは、30年ほど前まで、 医師でもやってはいけなかった大罪だったのです。 まして普通の主婦が、先を曲げた針金を女性の体内に挿入したり、 バスタブに満たしたジンに女性の下半身を浸して堕胎を行うのは‥‥ 危険極まりないなんてもんじゃありません。命を落とすこともあったそうです。 でも、生きるために身を売り、その結果、妊娠してしまった娼婦や、 貧しいのに子どもが多すぎて、お腹の子が生まれても育てる余裕のない主婦にとっては、 闇の堕胎に頼る他なかったんですね。 マリーは闇の堕胎を続けるうちに、経済的にどんどん豊かになり、 いかにも「貧乏人の子」みたいな服装だった子どもたちにも、こぎれいな身なりをさせることができ、 自分も新しい服や装飾品で身を飾って、女としての美しさを磨くようになり、 無気力な夫にはとっとと愛想をつかして、若い恋人を得て、 パラダイスのような日々を送るのですが‥‥ その先に待っていたのは逮捕、拘留、 そして、ナチス占領下の道徳の統制による、みせしめの処刑でした。 闇の堕胎は決してよくないこと。 しかし、廃人同様になった夫や幼い子どもたちを養うためには、 こんなことでもしなければ、仕方なかったんじゃないかと思うんです。 それが‥‥行き着いた先はギロチン。 一家で外食した時、マリーが幼い息子に、「将来何になりたいの？」と、 母親なら誰でも問いかける質問に、息子が「首斬り役人！」と答えたのが、 まったくもって彼女の将来を暗示していて、不気味でした。 フランスは今でこそ死刑制度はないけど、30年前まで大革命時と同じ ギロチン刑を行なっていたそうですね。 これも伝統にこだわる欧州人の気質のひとつの表れなんでしょうかね‥‥怖い怖い。 お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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