カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
気骨の左翼映画人山本薩夫監督が
1970~73年に渡って撮った超大作映画といえば‥‥ 映画通の方はもうおわかりでしょう‥‥「戦争と人間」三部作! きょうは、「第1部 運命の序曲」を、ちょっとご紹介します。 戦争と人間 第一部 運命の序曲(DVD) ◆20%OFF! 昭和3年、農民が凶作に、工場労働者が低賃金にあえぐ中、 新興財閥の伍代一族は、当主・由介(滝沢修)を中心に栄華を極めていた。 由介は頭がきれる上に腹の据わった弟・喬介(芦田伸介)を中国大陸に送り、 豊富な東北部の資源を一族の手に握ろうとはかり、 冷酷で右翼思想を持つ長男・英介(高橋悦史)は、 兵役逃れもかねて渡米、 ピアノが上手な才色兼備の長女・由紀子(浅丘ルリ子)は、言い寄る金持ちの青年が大勢いながらも、 金や権力の権化のような父や叔父、兄を内心では嫌い、 実業とは無縁の純粋な若い陸軍中尉・柘植進太郎(高橋英樹)を、密かに愛していた。 そして、まだ中学生の次男の俊介(中村勘九郎・現勘三郎)は、 友達になった工場労働者の弟・標耕平の影響で、 虐げられたプロレタリア階級へ目を向け始め、世の貧富の差に疑問を抱くようになっていた。 そんな伍代一族に、十数年の長きに渡る「戦争」の影と、軍靴の音が近づいてくるのだった‥‥ 超大作らしく、キャスティングは超豪華。 三國連太郎、加藤剛、石原裕次郎、二谷英明、田村高広、丹波哲郎、山本学、山本圭兄弟(二人とも山本薩夫監督の甥)、高橋幸治、地井武男、中谷一郎、江原真二郎、青木義朗‥‥ 吉永小百合、岸田今日子、栗原小巻、松原智恵子、水戸光子‥‥ 日活配給作品らしく、ルリ子、裕ちゃん、二谷さん、小百合さん、松原さんといった「日活組」が多数出演しているのもうれしいです。 キャスティングだけじゃない。シナリオもよく練られています。 あくまで日本を「侵略側」として描いた視点は、疑問や反論、いろいろあるでしょうが、 中国東北部、旧満州国の生まれ育ちで、大陸在住の日本人の繁栄と、敗戦による惨めさを実体験で味わった亡父から、 戦争、ことに侵略戦争がいかに間違ったことかを、子どもの頃からたびたび聞かされていたモイラは、「よくやった!」と拍手を贈りたいです。 ブルジョアとプロレタリアの問題、 国家が経済的に行き詰まると、必ずといっていいほど近づく軍靴の音(あえて言いますが、今も油断なりません!) 軍隊や特高警察、日本人の中国人や朝鮮人へのあからさまな差別感情‥‥ こうした歴史的背景、社会的テーマもさることながら、 浅丘ルリ子扮する由紀子の、一人の男への一途な愛が、心を打ちます。 もうひとつ心を打たれたのは、三一事件で家族を殺された抗日パルチザン・徐在林役の地井武男。 粗野な男だけど、祖国の日本の支配からの独立を信じて、仲間と高らかに故郷や祖国を讃える歌を歌う姿が、とても印象的でした。 でもこの三部作、DVDで観たら、なんか新春特別企画ドラマみたいに目に映るんですよね。 やっぱ暗い映画館のスクリーンで観ないと、じっくり作品の深みが味わえません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 9, 2009 07:32:16 PM
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