カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
ラブストーリー‥‥と言っても、日本がまだ戦争の影をひきずり、今よりもずっと貧しかった頃のお話です。
しかも恋に落ちる二人は、どちらも札付きの不良と言われた少年少女。 少年院を出たばかりの貫太郎(江原真二郎)は、ひょんなことから、 スリから足を洗いたいと言ったばかりに、仲間に輪姦されそうになるミツ子(中原ひとみ)を助け、 二人はコンビでスリをはたらくようになった。 ところが二人とも逮捕され、貫太郎は久里浜少年院に、 ミツ子は群馬の女子少年院に送られた。 貫太郎は心優しい保護監察官(岡田英次)の励ましで、 少年院で自動車修理の技術を取得し、退院したら真面目に働く決意をした。 しかし、女子少年院に入れられているミツ子の身体に異変が‥‥ いやあ、昭和30年代前半、高度経済成長の前の日本って、 ほんと貧しかったんですね。 この頃、いわゆる非行に走る少年少女って、 今と違って、大部分が貧困が原因だったんじゃないかと思います。 「毎日が面白くないから」とか、「親がうるさいから」なんて理由じゃない。 泥棒でもカツアゲでもやらなきゃ、生きていけなかった若い人たちがいたんですね。 だから何というか‥‥この頃の非行少年って、今のヤンキーより、 はるかに生活力があって、考え方も大人ですね。やってることは犯罪だけど。 モイラは最初、この映画を名画座で観た時、 「やさしいお母さん」のイメージだった中原ひとみサンが、不良少女を演じているのに驚きました。 そして、自分が原爆症に冒されているのを知り、心の底から怯える様子が、とても印象的でした。 水木洋子氏の精緻な、感情移入をしすぎない、どちらかというと突き放したタッチのシナリオ、 今井正監督の、きめ細かい念入りな演出が、 下手をすれば、安手のメロドラマになりがちなこの悲恋物語を、 一流の青春映画に仕立てていました。 この作品、反戦をテーマにもしているんですよね。さすが左翼映画人・今井監督です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 7, 2022 11:17:16 PM
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