カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
潜水艦を舞台にした名作映画と言えば、ハリウッド大作「眼下の敵」('57年)や
ドイツの「Uボート」('81年)を思い浮かべる映画ファンが多いかと思いますが、 なんのなんの、日本にも目を見張るような素晴らしい作品があります。 今年の8月15日(終戦の日!)に亡くなった松林宗恵(しょうえ)監督の 「潜水艦イ-57降伏せず」('59年 東宝)です。 潜水艦イ-57降伏せず(DVD) ◆20%OFF! 翌年、やはり松林監督で製作された東宝オールスターキャスト大作の「太平洋の嵐」に比べたら キャスティングや舞台設定は地味ですが(おまけにモノクロ)、 舞台の80パーセントを狭い潜水艦内に限定しているだけに、 人間ドラマはとても濃厚。 何より、当時の海軍軍人のヒューマニズムが、ことさらに美化されることなく、 かなり抑えたトーンで、丁寧に描かれています。 昭和20年夏、日本海軍の中枢は、敗戦を予期。 参謀(藤田進)は潜水艦イー57の艦長・河本少佐(池部良)に、 連合軍との和平工作のために、欧州の某国の外交官とその1人娘を、 イ-57で西領カナリー諸島まで送り届けるよう命じた。 既に世界に誇る戦艦大和を失い、それでも国を守るため、 ぎりぎりの兵力で最前線で命を賭けている海軍軍人としては、 到底受け入れがたい敗戦と和平。 しかし河本少佐は、軍人というより一人間として、 国民や国土への被害を少しでも食い止めるべく、断腸の思いで特命を受け入れた。 イ-57に乗る紅毛碧眼の外交官とその娘。外交官は日本の軍人たちに好意的だったが、 娘は日本人を頭から軽蔑し、忌み嫌っているそぶりだった。 監督が元海軍中尉、 主演の池部さんも元海軍中尉、 脚本の須崎勝弥氏も元海軍士官(しかし練習機をいくつも壊した逸話あり)。 ‥‥ここまでだと、軍事色のやたら濃い大日本帝国万歳映画に仕上がっていたかもしれませんが、 もう1人の脚本家・木村武氏が元非合法時代の共産党員(服役10年の猛者!)であることからか、 かなりヒューマンな仕上がりになっていました。 池部艦長もカッコ良かったけど、 それよりもっとカッコ良かったのは、平田昭彦演じる軍医。 英語が上手なことから、欧州人の外交官父娘の接待役をやらされるも、 ジャップ大嫌いのわがままお嬢さん・ミレーヌの態度に ついにブチきれる様子が、すごく良かったです。 普段はちょっと偉そうで血気盛んな若い少尉・久保明が、 船酔いに苦しむ姿は思わず笑えました。 しかし不満もあります。 当時の東宝の中堅俳優・土屋嘉男の扱い。あれじゃ「ただ出ているだけ」です。ひどいや。 宇宙人は潜水艦の中ではおとなしくしてろってことなのでしょうか。 ああ、大事なことを忘れてました。 円谷英二大先生の特撮も堪能できます。 駆逐艦とイー57の激戦は、実写と見紛うほどのできばえです。 他の作品では大抵、「大根だなあ‥‥」と思ってた池部良さんですが、 この作品では全然大根だと思えませんでした。 海軍エリートの役があまりにリアルだったからでしょうか。 浄土真宗の僧侶でもあった松林監督の仏心も伝わってくる名作です。 世界大戦争(DVD) ◆20%OFF! 社長太平記(DVD) ◆20%OFF! 【送料無料選択可!】太平洋の嵐 / 邦画 連合艦隊 <劇場公開版> / 小林桂樹 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 22, 2009 08:15:54 PM
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