カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
昭和40年代終盤、学生運動がどんどん下火になっていった頃、
巷で流行り出したのが、「神田川」「赤ちょうちん」といった かぐや姫の貧乏臭さ全開の歌。 そのかぐや姫のヒット曲をモチーフに、 都会の片隅で生きる若い同棲カップルの挫折を描いたのが、 「赤ちょうちん」('74年日活) 田舎から都会に出て、アルバイト生活を送るちょっといいかげんな青年・政行(高岡健二)は、 これまた田舎出の娘・幸枝(秋吉久美子)と知り合い、ほどなくアパートで同棲するが、 ナーバスな幸枝は、意地悪な大家のおばさんやうるさい近所の主婦らと うまくやっていけず、そのため若い二人はアパートを転々とする。 そのうち、幸枝は政行の子を身ごもり‥‥ 結構残酷な話です。 若さだけしか持ち合わせない、貧しく、危なっかしいカップルが、 どうにか夫婦となったものの、社会とうまくやっていけず、 とうとう幸枝のほうは、精神に異常を来たしてしまうのですから。 ナイーブで打たれ弱い幸枝を、若い秋吉久美子が、 息を呑むほど上手に演じていました。 終盤近く、鶏が大の苦手で、鶏肉すら食べられないのに、 完全にイってしまって、鶏の丸焼きにガツガツとかぶりつく幸枝の姿には ぞ~っとしました。 かつて子どもを自らの過失で死なせてしまったことから 赤ん坊を産んだ幸枝に敵意を持ち、 恐ろしいまでの嫌がらせをする大家役の樹木希林(当時は悠木千帆)も いかにも現実にいそうな人物で、めっちゃ怖かったです。 救いのない物語ではありますが、 若さというものの危うさ、もろさを、どこか突き放したタッチで、 それでいて、とても優しい視線で描いています。 さすがは青春映画の巨匠・藤田敏八監督ですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 20, 2022 11:16:18 PM
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