カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
日本の社会派推理小説の第一人者・松本清張の作品は
数多く映画化され、その中には日本映画史に輝く傑作が少なくありません。 堀川弘通監督の「告訴せず」('75年)は、 「点と線」、「砂の器」などの大作に比べると、知名度が低いようですが、 ユニークなキャスティングと人間描写の点では、大作にひけをとりません。 告訴せず 【DVD】 省吾(青島幸男)は選挙に出馬する義兄(渡辺文雄)の裏金3千万円を持ち逃げし、 伊香保温泉に偽名でしけこみ、仲居のお篠(江波杏子)といい仲になった。 持ち逃げした大金は、決して明るみにはできないものゆえ、 義兄は決して自分を告訴しない‥‥ そう睨んだ省吾は、3千万円を元手にハイリスク・ハイリターンの小豆相場に手を出し、 危ない橋を渡りつつも、見事に2億円あまりを儲けるのだが‥‥ 主演が売れっ子の放送作家兼タレントで、のちに国会議員になり、 東京都知事も務めた青島幸男というのが、実にユニークです。 高飛車な女房(当時、悠木千帆の芸名だった樹木希林)の尻に敷かれっぱなしで、 これまた高飛車な義兄にも頭が上がらぬ冴えない中年男の役が、 見事にハマっていました。 お色気むんむんのお篠役・江波杏子も、二枚目の先物取引会社営業マン役の村井国夫も、 怪しげな不動産屋役の小松方正も、もっと怪しげな老相場師役の加藤嘉も、 オカルトそのものの占い師役の天本英世も、 ぱっと見ただけでも震え上がるほど恐ろしいヤクザの親分役の西村晃も、 議員会館にいるだけで絵になる大物議員役の小沢栄太郎も、 まさにぴったんこでしたね。なかなかすごいキャスティングです。 冴えない人生を送っていた省吾は、自分には一生縁がないと思っていた大金を ひょんなことから手にしたことで、夢を?もうとするのですが、 どこへ逃げても、義兄の手の者が追いかけてくるのではないかと戦々恐々。 そんな小心者がよくもまあ、大金を拐帯したものだとも思うのですが、 そこは「平凡な小市民がふとしたことから犯罪に手を染める」というテーマがお得意の清張センセイと、 キメが一見粗いようで、細かい人物描写がお得意の堀川監督、 省吾という人間をうま~く描いていますね。 この男、タカビー妻の元を去って、お篠に乗り換えても、女の尻に敷かれっぱなし。 所詮冴えない小心者の男は、生き方を変えてみようと焦ってみたって、 結局は前と同じ生き方しかできないってわけですね。 哀しいけど、それが現実ってもんです。 砂の器 デジタルリマスター2005 【東映まつり】★ 点と線(期間限定)(DVD) ◆25%OFF! ゼロの焦点 送料無料 DVD/邦画/けものみち/TDV-19248D 張込み お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 28, 2010 10:32:52 PM
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