【粗筋】
寺に化け物退治に出掛けると、相手は狸だった。奥へ追い詰めると、狸の姿はなく、仏像が2体になっている。「本物なら、お供えをお食べになるはず」と出すと、一方が手を出して姿を現す。再び追っていくと、天井に金箔の羽衣をまとった天女の絵が描かれている。「本物なら棒を差し出すと踊りを始めるはずだ」と言って棒を突き出すと、何と全ての天女が絵から抜け出して踊り始めた。どれが狸だか分からず呆然としていると、1人の天女が何やらつぶやいている。そばへ行ってよく聞いてみると、
「キンがすれる、キンがすれる」
【成立】
上方噺。『日本昔話集成』282「似せ本尊」。桂米朝が復刻して演じている。「狸化寺」「化寺」「狸寺」とも。落ちは羽衣の「金箔」と「睾丸」と掛けたもの。古いものは「キンの擦れたんは醜いもんや」、更に昔のものは「狸の死んだん、はんしょじき」という落ちが記録されている。「キンが重い」というのも聞いたことがある。
私事であるが、学生時代に夜中にこれが放送されるのを見つけた。寝ないと学校で居眠りするのがコワイので、録音を仕掛けたところ、臨時ニュースで放送が遅れ、「そばへ行ってよく聞いてみると……」でプツッ……落ちを知りたかったが当時はネットなどなく、まさかこの程度のことを手紙で尋ねるのは失礼だし……再放送(?)されたのを見事に捕まえるまで、悶々とした日々を送った。