【粗筋】
旅回りの一座、「新しい芝居をやるが、いつもの通りだ。茶店の娘が5分くらい天気予報をやって、二枚目と親分が行き会って因縁付けられ、二枚目が斬り付けられる。額を斬られてネコ吹いたところで、座長の登場だ」
新入りがいて符丁が分からない。「天気予報ってのは、今日の天気はどうだ、明日は明後日はと、時間をつなぐんだ。ネコ吹くってのは腹を立てるんだ。ネコがプウッというだろう。そこでツケが入る」
「借金取りから逃げようとこの一座に入ったんですが、借金取りが追い掛けてきますか」
「ツケってのは木でパタンパタンと音を立てて盛り上げるんだ……そこで親分と座長で遊んでもらいましょう」
「何して遊ぶんです。お手玉、綾取り」
「遊ぶってのはアドリブで会話をするんだ。座長は辱めを我慢して、親分が捨て台詞で去って行き、座長と子分らの見栄で一幕の終わり」
台詞はほとんどアドリブ、その場で聞いたストーリーで、もう舞台にかかるという……予定通りうまく行って、二枚目が斬り付けられた。さあ、座長が出ようとすると、「座長、明日の小屋を買って下さる建元さんが見えてます」これを放ってはおけない。
「舞台はどうするんです」
「少しつないでおけ」
「でも、もうやることが尽きて、みんなで舞台をぐるぐる回っています」
「しょうがねえな、二枚目を斬っちまえ」
二枚目が斬られ、簡単に死んではいけないと言われてのたうち回る。茶店の娘の母親役は二幕目に出るはずが、ここで出て行って、二枚目を助け、どうして斬られたのか、経緯を最初から全部話させるということにする。二枚目は苦しみつつ話をするが、もう限界……やっと座長が話を終えてやってきた。
「もう死んでもいいよ」
と言われて、ガクッと息絶えた。途端に座長が現れて拍手が起こると、死んだ二枚目が起き上がって、
「ようよう、待ってました」
【成立】
神津友好の作品を、三笑亭笑三が演じた。