【粗筋】
謀叛を起こした平将門、7人の影武者を出して同時に攻めてくるので、相手はまどわされて破れる。俵藤太がこれを討ち取りたいと不動に願を掛けると、本物の将門を教えられ、そのこめかみを狙うようにとのお告げがあった。教えられた通りに本物の将門を見破って、矢を射ると見事に命中。こめかみがすうっと上がって下がったので……米屋町では大騒ぎ。
【成立】
くすぐりを加えた地噺で、赤坂の柳亭燕路が演った。米が上がったり下がったりすれば米屋町では騒ぎになる。
将門はこめかみよりぞ射られける俵の藤太のはかりごとにて
という狂歌は、こめかみ(米)、俵、はかり(秤)と米屋に関わる言葉を集めたもの。
【蘊蓄】
平将門は親族の土地争いで注目され、従兄に奪われた土地を取り戻したが、そこで暴利をむさぼった役人から財を取り戻して農民に還元した。これが関東で評判となり、救いを求めて来る人々のために勢力を広げて行ったらしい。この延長で国司を追い出したことと、天皇を名乗ったことで反乱とされたが、都の藤原氏に、回りがそう呼んでいるので自らは名乗っていない、国司も私腹を肥やしていたのを懲らしめたので、印形その他は次の国司に返すという弁明書を贈っている。しかし、従兄の貞盛が報復を狙っている様子があったため、直接都に出て行かなかったことが、政権の反発を招いたらしい。結果として、瀬戸内海の海賊を集結した藤原純友と共謀して乱を起こしたことになり、神のご加護で天皇が守られたと宣伝に使われた。
海音寺潮五郎の「平将門」と「風と雲と虹と」は、二人の謀叛人を描くが、同じ場面が全然違うものだったりして面白い。NHKの大河ドラマ「風と雲と虹と」(1976年)は、二つを原作とし、冒頭に海音寺が出て解説、将門と純友を毎週交互に描くという異色の作品。絵巻では平安着の鎧兜や十二単が描かれるが、まだそうなっていないはずだという考証、関東には挑戦からの移民が多かったという考証、これらが一般の常識を持った視聴者から間違いとして指摘された。反論には確たる資料はない。因みに、子供のための将門の本を3冊読んだが、全て源平合戦時代の鎧兜だった。