テーマ:落語について(2311)
カテゴリ:落語
【粗筋】
むやみに気の長い男が、むやみに気の短い友達を訪ねる。 「夕べ、寝ようとしたがどうしても寝つかれへん。布団の中でごろごろしているうちに、小便に行きたくなったが便所に行くのは面倒やから、庭でしようと思うてな、雨戸を開けて表へ出ると、明るい月が出ている。ああ、この月なら明日は晴れやなと安心したせいか、その後はゆっくりと眠ることがでけた。さて、今朝起きてみると、思った通りええ天気や……ええ、本日は結構なお日和で……」 と、挨拶をするだけでこれだけの手間隙が掛かる。気の短い方がいらいらして、用件をきくと、田舎からの土産を持参したとのこと。受け取ってさっさと追い出そうとするのだが、気の長い男はのんびりと煙草を吸い始めた。これを見ているとまた、腹が立って、 「煙管てえものはぱっと吸ったらぱっとはたくんだ。火玉が踊ってるじゃねえか。いいか、こうだ……ほれ……俺なんざ忙しい時は吸わねえではたいちまうんだ」 「しかし、まあ、何や……あんはんは気ィが短いし、わしはどっちかいうと長めやし……どうしてこないに気が合うか……」 「合いやしねえよ」 「あんはん、人から物を教わるのは嫌やろうな」 「お前だったら友達だ、構わねえから教えてみな」 「さよか……でも怒るからやめとこ」 「怒りゃしねえから、言ってみろよ」 「さよか。ほな……あんはんは煙草がお好きだ」 「何を言ってやがる。好きで吸ってるんじゃねえ。お前が来ていらいらするから、気を紛らわすために吸ってるんだ。もう喉がいがらっぽくなってるんだ」 「えらい済まんこって……わてがここへ来てもう36服吸いなはったが、その8服目の火が煙草盆へ入らんと、あんはんの袖へ飛び込んで、あ、ええかなと見てると、煙が出てきたようやが、ことによると消したほうが……」 「何を言ってやがるんでェ、こちとりゃァ隣の火事だって驚きゃしねえんだ。それを、袖から煙が……ああッ、おっとっと……この野郎、どうしてもっと早く教えねえんだ」 「ほうら、やっぱり怒った。だから教えない方がよかった」 【成立】 中国の笑話集『笑府』の「性緩」を本案した、寛文7(1667)年の仮名草子『和漢りくつ物語』巻1の「裳の焦げたるを驚かぬこと」がほぼ同じで、相手を驚かしていいものかどうか、試案をしたことを長々説明する落ち。安永9(1780)年『初登』の「焼抜」は、吸い殻が膝に落ち、知らずにいると焼け抜けて慌てる。息子が最初から気付いていたが、父親にきちんと見届けないのがいけないと言われていたから、焼け抜けるまで見届けようと思ったと言う。 「気の長短」とも。宋の時代の『籍川笑林(せきせんしょうりん)』にあるものは次の通り。 のんびりとした人がいた。冬の日、人と共に炉を囲んでいて、相手の着物のすそにひ火かついたのを見て、「一つ言いたい。前からこれを見て言いたいと思っても、君が短気なのを恐れて言わなかったのだ。言わなければ君の被害が大きくなるだろう。そこで話してもよいか、それとも言わない方がよいか。」と言った。相手は、「何事だ。」と言ったので、「火が着物を焼いている。」と言った。すぐに着物を脱いで火を消した。大いに怒って、「前からこれを見ていてどうして早く教えないのだ。」と言うと、「私はあなたが短気だと言った。やっぱりそのとおりだった」と言った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.10.04 05:53:18
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