77:梅若七兵衛(うめわかしちべい)
【粗筋】 梅若七兵衛という能役者、芸熱心だが、無欲で大名や贔屓のお誘いにも行こうとしない。家はいつも火の車で、年末になるとかみさんに文句を言われ、仕方なく番町の旗本のお屋敷へ金を借りに行く。先方は大喜びで、御上から授け渡された黄金2枚のうち1枚を恵んでくれる。これ1枚で25両になるのだ。そのまま帰ろうとするが、勧められる酒を断ることが出来ず、酔って気分が悪くなり、帰る途中の堀をさらった溝泥(どぶどろ)に吐いてしまう。さあ、家に帰ると大切な黄金が見当たらない。さっきの場所だと思って、泥をさらって黄金を見つけ出した。そこへ女房が慌ててやって来て、路地の所に落ちていたと黄金を持って来たではないか。さあ、大変お屋敷のを2枚と持って来てしまったのだ。七兵衛はすぐに番町のお屋敷に飛んで行く。ところが、お屋敷にちゃんと1枚残っている。おかしなことだと調べてみると、泥の中から見つけたのは、堀の底に沈んでいた古い黄金だったのである。このことが評判になって、七兵衛の人気が出るようになります。「梅若七兵衛」というお噺でございます。【成立】 三遊亭円朝作。梅若六郎がこういう噺があるというのを知り、三遊亭円生(6)が聞かせる約束をして準備をしたが、実現せずに円生が亡くなったため、梅若の希望で、三遊亭円楽が演じた。昭和58(1983)年1月12日、梅若の会で初演。