名作落語大全集

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• 共謀罪について

  「さあ、いよいよ共謀罪が国会で成立しそうじゃな」「テロ防止法案でしょ」「ああ、名前を変えたが、中身は変わらない」「え、そうなんですか」「法務大臣がそう言ったじゃないか。この人も失言が多いから、事務官が出てきて法案の説明をするという、史上初の国会中継が行われた」「能力ないですね」「昨日の復興大臣といい勝負」「はあ」「委員会では、例によって強硬採決。野党が森友問題を追及するので、もう法案についての質問はないものとみなしますと、議長が勝手な発言で終わらせた」「へえ」「ちなみに、後で謝罪して、違う問題ばかり出してくるので、もういいんだと思ってしまったそうじゃ」「はあ」「さて、今回のテロ防止法案という名前にして、これを成立させないとオリンピック、パラリンピックは開けませんとアピールしている」「そういう宣伝はうまいからねえ」「それで重要な中身についてはテレビではあまりやらないなあ。そこでクイズ、次のうち今回の法案で逮捕される可能性のあるのはどれじゃろう。１：沖縄の基地反対。工事車両が入れないようみんな集まって人の壁を作ろう。２：原発反対の抗議集会をやろう。みんな集まって下さい。３：大臣にこんなスキャンダルがあるって、ネットに出ているけど本当かな。真相解明のため拡散してね。さあ、どうじゃ」「どうなります」「正解は全部。１は国のやろうとすることに暴力で抵抗しようとしている。２は国が推し進める政策への妨害。３はデマを広めようとしている」「なんだかすごいですね」「これも、法務大臣がちゃんとあり得ると答えている。政府批判だけでも捕まる可能性もあるようじゃが、今の政府はやらないと断言した。今の政府はやらないということは、後々解釈によってやれるということじゃないか」「そうなりますか」「そうなる。何だかとっても怖い法案と思うが、国民はそれが必要だと感じているので」「あまり言わずにおきましょう」

  2017.04.02

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• またしても大臣の失言

  「もう何度目になるのか……また復興大臣が震災は東北でよかったと発言した」「しょうがないね。前は記者に切れた人ですね」「あの時も、説明しているのに、記者が理解力ないので切れてしまったと謝罪した」「おかしいですね」「今回も、心配をかけて申し訳ないと謝罪」「え、誰に謝罪しているんです」「さあ、こんなのを大臣にした人じゃろうか」「何を言っているのかよくわかりませんね」「総理がそういう答弁をしてお手本を示しているからなあ」「そうですか」「法案提出について質問すると、それは私が提案したんじゃない、委員会が出したんです」「ひどいね」「カジノ法案も、それは最初に民主党時代に提案したんじゃないですか、説明責任があるのはあなた方ですよ」「あれ」「世論調査で、森友問題はこのままではだめという意見が８５％にもなっていると質問すると、同じ調査で内閣支持率は５２％です」「答えになってませんね」「まあ、それで国民が納得しているから」「しているんですか」「している。安保法案も、後で国民が納得するよう説明を続けると言っていたが、次の選挙で勝ったら、国民は納得しているからこれ以上説明は要しないと変わった」「ああ、そうでした」「甘利の時もそう。姿を消して復帰しても、誰一人追及しない」「はあ」「もっとも、安保の強行採決の直後に、国民は３ヶ月経てば忘れるから大丈夫だと断言していた」「ひどい……けれどその通りになっているね」「森友問題で公有地を安く払い下げた問題についても、総理が適正価格だと断言したので、もう追及するほうがおかしいという風潮になっているね」「そうなんですか」「森友側にこういう書類を提出すれば考慮するという29枚にわたる例を国交省が出していることが分かった」「へえ」「例のゼロ回答の翌年らしいね。申請理由までちゃんと森友側に立って説明しており、要するにそのままコピーして名前と日付を入れれば申請書が完成するというもの」「すごいですね」「大臣は、役所は親切だから、誰にでもそのように応対していると説明している」「じゃあ、私が役所に行って書類がよくわからないと、全部作ってくれるんだ」「そう、申請理由まで考えてくれるのじゃ」「親切な国だったんですねえ」「まあ、大臣の暴言、失言、はっきり言って能力を疑うというのが３月からの二月で、わしのメモだけでも二桁になっている」「ひどいですね」「もっとも、防衛大臣が日本で北朝鮮を攻撃できるようにしなければならないとか、そのために核兵器を持っていないと馬鹿にされるとか、話題にならない部分も含む」「あの大臣も森友問題ではしどろもどろでしたねえ」「そうじゃな。国会答弁で矛盾が七回出てきて、ばれたら全部記憶違いだったとごまかしてね」「それでいいんですか」「いいのじゃ。ほら、５２％の国民が支持している」「おかしいと思いますがねえ……他にないからという理由の人もいるでしょう」「それはおかしい。他にないからという理由にせよ、今の政権を支持するのは、今のまま続けてくれという意思表示じゃないか」「はあ」「駄目なものはダメと言わないと。それで大臣がすっかり緊張感がなくなって失言を繰り返しているのじゃ」「はあ」「明日は共謀罪について」「どうでもいいけど」

  2017.04.01

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  3月の食事

  「さて、３月のおいしかった外食」「どうでもいい企画ですね」「百香亭のチャーハン」「多いですねえ」「３人分じゃな。安くてうまい」「はいはい」「続いては千葉のタンメンしょうや」「すごいですね」「これでも食べきれるから……野菜ファンに」「はあ」「こちらは佐倉タンメン。焦がしネギがポイント」「いいですねえ」「玉子がおまけについていたぞ」「卑しい大家さんにぴったり」「ということで、３月の外食から」

  2017.03.31

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  OK散歩スペシャル「北海道」：最終回「馬」

  「ということで、ノーザンホースパークのお馬さん」「これはポニーですか」「ではご一緒に。　♪お馬の親子は仲良しこよし～　どうした」「どうしたって……」「ご一緒にと言ったじゃろう。歌うのじゃ」「へ……」「せえの」「♪おうまのおやこは……」「ここは引退した競馬馬も飼育されている」「ひどいよ、人に歌わせておいて」「ポニーのショー……の練習。バーを飛び越えるはずが、失敗するという芸」「へえ」「これでおしまい、ばいばーい」「大家さん、一生懸命手を振らないの」「ここは見学のための椅子もお馬さん」「あ、おしゃれですね」「ということで、雪をかき分け、牛舎へ」「それは牛でしょう」「あそうか……じゃあ、馬舎へ」「ばしゃって言うのかなあ」「白い白馬」「当たり前です」「お馬さんの床屋さん」「毛を刈っているんですか」「わしらよりちょっと毛深い」「当たり前だ」「とまあ、そういうことで、無事帰りました」「残念ながら」「今回の北海道スペシャルいかがでございましたでございましょうか」「何言っているか分からない」「今回をもって読み終わりといたします」

  2017.03.30

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その17「昼食」

  「さあ、食事だ食事だ」「食べるときは元気だねえ」「昼食はノーザンホースパークのレストラン」「はい」「北海道産の鮭の定食」「へえ」「こちらも北海道産の豚さん」「ほう」「デザート」「ふうん」「ということで、ホースパークだけに、お馬さんとふれあい」「参りましょう」「それは次回」「まだ続くの」

  2017.03.29

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その15「地球岬」

  「さあ、北海道もいよいよ最終日」「はい」「白鳥大橋を渡って……」「遠景ですね」「車の右側の座敷でどうも写真がダメじゃった」「あら」「ということで、地球岬からの遠望」「はい」「ということで地球岬。３６０度の景色というがどこにでもあるなあ」「まあ、そういわずに楽しみましょ」「渡島半島を望む」「はあ」「灯台」「はあ」「とまあ、こんなとこで」「適当なんだから」「さ、最後の予定地へ向かおう」「続く」

  2017.03.28

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その14「ホテルの朝食」

  「さあ、朝食。こちらは洋食」「はあ」「朝からお酒もつく。わしもこっちにすればよかった」「呑ん兵衛だねえ」「夕食と同じで、飯島豪氏監修」「はい」「こちらがメイン」「ほう」「家内が食したので、メニューは暗記しなかった」「はいはい」「こっちがわしの食した和食。季節の青菜とリンゴの野菜ジュース。旬の生野菜、柚子胡椒と白味噌ソース。日本蜜蜂の山蜜漬け紀州南高梅。雑魚とわさび漬け。伊達産の黒豆。札幌市場より届く本日の魚料理。出汁巻き玉子と香の物。椎茸とレンコンの引き肉団子。北海道産大豆「とよまさり」の手作り豆腐。洞爺の海より淡雪塩・山葵・オリーブオイルを添えて。本日の珍味……ああくたびれた」「セリフ長いから」「オリジナル納豆と「帆森好の卵」。ご飯は「ななつぼし」「ゆめぴりか」「コシヒカリ」のブレンド米。「ななつぼし」が多め。これに伊達（洞爺のすぐ南東）米味噌と白味噌、麹、魚介のお味噌汁、京都御所之園のほうじ茶が付く」「なかなかですね」「ま、こんなところで、さあ、出発じゃ」「適当だね。次回に続く」

  2017.03.27

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その13「ホテルの朝」

  「ホテルの朝」「まだ暗いね」「月の下、海が広がっているが、釣舟の明かりが見える」「いいですねえ」「洞爺湖からの朝日。ダイヤモンド富士じゃな」「富士じゃないでしょ」「あ、手前に看板のようなものが見えるが、ここがサミットの記念撮影をした場所」「でも、参加者の普段の行いが悪くて湖が見えなかったんですね」「朝湯へ行く廊下」「どうでもいいね」「右奥に羊蹄山が見える」「分かりません」「湯上りに一杯。ガウンは２万円もした」「お金の話になるのが卑しいね」「ということで、朝飯になるが、それはまた次回」「まだ出発しないの」

  2017.03.26

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  OK散歩スぺシャル「北海道」：その１２「夕食」

  「さあ、旅の一番大事なイベント」「何ですか」「ホテルの夕食じゃ」「あらら」「飯島豪総料理長の、小波薫る北海道の海の幸と洞爺湖畔の畑の恵み」「まずは、菜の花ソースに飾る北海道の天然魚と水蛸、季節の彩り野菜、隣町伊達産鶏と「とよまさり」豆乳入り大地の香る牛蒡のスープ、洞爺の海より作られる「淡雪塩」とオリーブのディップソース、洞爺湖町阿部さんの生絞り菜種EXバージンオイルの香り」「北海道の徳さん「真鯛」のフリット、蜂蜜とバルサミコソースとオレンジ風味のクリームソース、トマトのレリッシュ、ビーツのピュレと蘭越産ななつぼし米のリゾット」「柔らかい北海道産牛のアッシュと無花果のパイ包み焼き、色とりどりの野菜とポテト、豊浦下向さんの原木春椎茸のソテー、ボルト酒と甘酸っぱい「月浦ワイン」風味のクラシックソース」「ヴァローナショコラのフランとキャラメルソース、キルシュ風味のジュレとグリオットチェリーのコンポート、アロマハーブ「タラゴン」の香る爽やかな北海道産ミルクのソルベ。尚、パンはホテルにあるお店プーランジュリー「ウィンザー」の北海道産小麦の自家製パン。　ああ、くたびれた」「今日はお料理のみ」

  2017.03.25

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その11「ホテル」

  「ということで、山の上にあるホテルに到着」「温泉じゃないんだ」「遊びに出て戻らないのを心配したのじゃろうなあ」「大家さんなら帰らなくてもいいのに」「ウエルカムドリンク」「いいですね」「おかわりしたのはわし一人だけだった」「するか」「洞爺湖が見えるロビーで記念撮影」「はあ」「洞爺湖。世界の要人が来たが、普段の行いが悪くて湖が見えなかったそうじゃ」「大家さんでも見えるのに」「これは反対側の海。そろそろ夜になるので飯じゃ」「食事は」「また次回」「やっぱりね」

  2017.03.24

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  OKスペシャル「北海道」：その１０「移動」

  「さあ、後はホテルに向かうだけ」「写真、見事な山ですね」「羊蹄山じゃな」「ほう」「こんなに見事に見えるのはわしの行いの良さを物語っている」「はあ……スーパー晴れ男ですからねえ」「わしが傘をさすと、一緒に行った人が写真を撮ったほどじゃからな」「はい」「反対側も、ニセコの山々が」「はい、見事でした」「さあ、またしても羊蹄山」「同じような写真ですね……手抜きが始まったな」「もうすぐホテル」「そのホテルは」「また次回」「あら」

  2017.03.23

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その９「ニッカ工場見学」

  「さあ、北海道スペシャルのメイン。ニッカのウイスキー工場でございます」「ほう……メインはいくつあります」「え……最初の日はサッポロビール、次の日は小樽ワイナリー、それからニッカ」「お酒ばっかりじゃないですか」「他に何があるのじゃ」「しょうがないね」「こちらは石炭を燃やしてウイスキー作りをする」「今でも稼働しているんですね」「歴史博物館」「記念写真です」「こちらはマッサンの妻であるリタさんの住んだ家」「日本のウイスキーの最初の人ですね」「こちらは同じ間取りで作られた資料館」「ほう」「ということで試飲コーナーへ、待ってましたパチパチパチ」「一人で盛り上がっているな」「この日は三種類のウイスキーを試飲」「飲んでばっかりですね」「ということで、ホテルを目指す」「はい、また続く」

  2017.03.22

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  OKスペシャル「北海道」：その８「昼食」

  「さあ、小樽での昼食」「またビールですか」「北海道開拓ビールなど」「はあ」「北海道ならではのネタを使ったお寿司。ウニとカニ」「はい」「こちらもイカ」「どのくらい食べました」「北海道でなければ食べないなあってものが８種。マグロ、タコなど７種類」「よく食べますねえ」「さあ、次行くぞ」「続く」

  2017.03.21

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  OKスペシャル「北海道」：その７「小樽」

  「さあ、小樽へ移動」「またお酒ですか」「小樽ワイナリーで試飲したのがこの５本」「一杯ずつならいいでしょう」「何を言うとる、最低二杯じゃ」「飲みすぎ」「小樽運河で一曲」「また歌うの……小樽の人よですか」「♪運がよけりゃ、うんがよけりゃ」「運河の歌ですか」「こちらは小樽が一望できるという神社じゃが、雪がすごいのでパス」「すごいですね」「そこで小樽の歌を一曲」「またですか」「♪お、お、おーたる来い」「それ蛍」「次回昼食」「え、続くの」

  2017.03.20

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  OKスペシャル「北海道」：その６「札幌朝市」

  「さあ、北海道の旅。札幌の朝一は札幌朝市で、というのは浅い知恵かも知れないな」「朝一と朝市はわかるけど、浅い知恵は声に出さないと洒落が分かりませんね」「浅井千絵ちゃん、元気」「誰ですか」「ここは昆布作りが有名」「はい、香りがすごいね」「カニ。♪カニさん、カニさん、どこ行くの～　私はナマズのひげかりに……」「歌わなくていいの。しかも踊って」「エビ……エビさん、エビさん……」「そんな歌ないから、力が入らないね」「♪エービーシーデー、いい絵富士」「無理やりだね」「そんな訳で次行こう」「適当なんだから……続く」

  2017.03.19

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その５「ホテルの朝食」

  「ええ、そういう訳で北海道へ来ております」「そういう訳って、どういう訳」「……こちらが泊まったホテル」「無視しているな」「こちらが朝食」「はあ」「ピエール・エルメ・パリのヴィエノワズリーが人気」「はあ」「味噌ラーメンがあれば、これで札幌名物は全部いただいたことに」「手抜きでしょう」「さあ、今日も食べるぞ、飲むぞ」「何しに行っているんだか……続く」

  2017.03.18

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その４「札幌の夜」

  「♪夜のさっぽろ～」「何の歌です」「いま思いついた」「適当なんだから」「この日がイルミネーションの最終日だった」「へえ」「♪さっぽろのよ～る～」「あ、これは聞いたことがありますね」「本当か、今適当に歌った」「しょうがないね」「はい、テレビ塔」「♪さっぽろ～さ～っぽろ～」「だんだん……じゃない、どんどんめちゃくちゃになりますね」「車道は雪が除けてあるが、歩道はごらんのとおり」「すごい」「ということで、夕食は居酒屋で北海道のあれこれを」「またビールだ」「北海道はお酒がうまい……もとい、お魚が……」「無理して言い直すな」「ということで、初日はおしまい」「続く」

  2017.03.17

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  OKスペシャル「北海道」その３「駅」

  「さて、札幌まで鉄道で移動」「あ、来ましたね」「これは貨物列車」「あ、来ました」「これは普通列車で、この駅通貨」「あれ」「これは……向こうのホームのようですね」「貨物は通過待ちをしていたんじゃな」「へえ」「乗った列車は普通列車」「え、さっき通過しませんでした」「よく分からない」「特急に乗り換え。大谷号」「はあ」「ということで札幌に到着。夕飯を食いに出かけよう」「続くのね」

  2017.03.16

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その２「サッポロビール」

  「さあ、北海道といえば札幌。サッポロといえばビール」「結局飲むのね」「試飲は２種類」「やっぱり飲む」「わしだけもう一杯いただいた」「どういうこと」「特別の味見があったのじゃ」「あれえ」「ということで次回に続く」

  2017.03.15

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  OK散歩スペシャル「北海道」：その１「新千歳空港」

  「さあ、OK散歩スペシャルは北海道へ。今回は道南を回ります」「まいりましょう」「まずは新千歳空港」「チョコレート工場ですね」「最近人気じゃな」「ドラえもん。　♪おさかなくわえたドラえもん、追っかけて～」「それ、違う」「キティちゃん」「どうでもいいけど、子供だね」「ということで、次回は大人の時間に」「続く」

  2017.03.14

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  馬るこ披露宴

  　カボスのソルベ　牛フィレミニヨンヌのステーキにセーブ茸、緑胡椒入りクリームソース　ホワイトチョコレートと苺のムース、ブルーベリーソースを添えて「ということで、お料理おしまい」

  2017.03.13

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  馬るこ披露宴

  「ええ、そういうわけで……」「どういう訳」「馬るこの披露宴のお料理でございます」」「人の話は聞いてないね」「フォアグラのテリーヌと鴨のコンフィのブレッセ、オレンジの香り」「鶏のロワイヤルに三陸産ツブ貝と野菜のサフラン風味のスープ」「京王プラザホテルおなじみのパン」「色鮮やかなトマト風味のパン粉を纏った真鯛のブレゼ、トマトとシブレット入りのブールブランソース」「まだあるけれど、続く」

  2017.03.12

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  馬るこ披露宴

  　馬るこが真打昇進。今日はその披露宴。　ゲストのＴＡＭＡ。「♪今日まるちゃんが初めて真打になったよ～」　親代わりのおかみさん。馬るこという名前もおかみさんが付けた。　鏡開き。おめでとうございます。

  2017.03.11

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• 上野広小路亭

  「さて、寄席のお話」「今年も参りました」「3月8日、前座は昇りんの子ほめ、晴太の道灌」「まあ前座はこれから頑張ってもらおう」「はい」「落語協会はみんな一応の腕になっているな。芸協は腕不足も多い。しかし、個性があって将来伸びたら面白いなあという人が多い」「個性的ってことですか」「まあ、方針の違いかな」「顔ぶれに乗っている人。鷹治」「期待の星。天狗裁きをテンポよく演じた」「吉幸」「元犬。犬の考えが面白い。他の人と違って、犬としての自覚が残っているのじゃなあ」「宮田章司」「おなじみの江戸売り声。ちょっと勢いがなくなってきている。お年じゃな」「慎太郎」「時そばと時うどんのどちらがいいかというリクエストで、うどんの方に決定。そばは二軒目のひどい店が説得力に欠ける。内容的にはうどんの方が勝っているな」「鯉橋」「蒟蒻問答。江戸っ子が坊主になるまでの経緯に新しさがあった」「小天華」「おなじみのマジック。体重は軽くなったが、元気」「夢太朗」「長屋の花見。これも演じる人によってくすぐりの順番が違って面白いぞ」「はい、仲入りのちは笑好」「お得意のぜんざい公社。まだお役所仕事があるから生きているね」「陽昇の漫才」「これもおなじみ県の位置とアフリカの国名」「遊喜」「錦の袈裟。褌を各自で用意するというのは無理じゃな」「柳橋」「やかん。昔のから魚の名前の由来が変わっているのは面白いね」「今丸」「紙切り。今回も作品をいただきました」「トリは遊吉」「城木屋。発端からお裁きまでをテンポよく進めて、よかった」「ということで」「満足の一日でした」

  2017.03.10

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• パガニーニ伝：その49（完結）

  ４９：マリアンヌの話　パガニーニが亡くなった後についてお聞きになりたいというのはあなたですか。　ああ、後継者問題はお聞きになったのね。遺言の件は……まだお聞きになっていない、そうですか。ではそれからお話ししましょう。愛用のヴァイオリンは博物館に寄贈するようにと遺言されていたのもご存知ですね。　その遺言によると、遺産の一七〇万フランがアキレの物になりました。……ええ、これをまとめている作者、はっきり言いますがいい加減で、一フランをそのまま一万円にしていますが、パリの市長が年俸四〇〇フランですよ、四〇〇万円じゃあ安すぎるでしょう。二倍か三倍と考えていいんじゃないかしら。パガニーニは浪費もすごかったから、それだけしか残っていないのっていう感じですがねえ。　それから、譜面も全てアキレのものとなりました。パガニーニの作品は内容がないという中傷があって、全く世に出しませんでしたがね。　パガニーニの妹二人には七万五千フランと五万フラン。アキレの母アントニアには毎年一二〇〇フランを死ぬまで贈ることになっていました。他にもう一人……これはアキレの世話をずっとした乳母のような人なんですが……その人に六二〇〇フランが贈られました。　さて、死んだ後の騒ぎが問題です。妻であったアントニアとの間も正式には結婚せず同棲だったので、ローマ教会との間に確執もあったのです。パガニーニのヴァイオリンのテクニックは悪魔に身を売って得たものだという噂があったのはご存知ですね。ローマ教会は、それを理由に埋葬を許さなかったのです。　教会では葬儀は出来ませんが、死んだ者をそのままにしておくことも出来ません。当時は自宅に死体を置いておくことはしませんから、霊安室に置くことだけは許しました。その日からそれを見学するのに長蛇の列が出来ました。私は列の整理を手伝いましたが、最後尾は教会をぐるっと一周して戻って来るんです。その人たちがぞろぞろと霊安室へ行って、裏から出て行くんですが、並んでどのくらい待っていらしたんでしょうね……へえ、日本では行列するという文化があるんですか……こちらが元祖かも知れませんよ。まあ、教会としてはそういう人の出すお布施も入るし、近くのホテルは死体を見るために全部満室という状態が続いたんですから……どれだけの経済効果があったかわかりません。ただ、パガニーニが時々目を開けて笑ったり、夜中に近所を散歩をするので、教会でも困っていたんですよ。一週間で百万人を超える見物人があったのです。　結局最後は遺族が裏金を出して密葬が行われましたが、今度は墓地が作れません。墓地が出来るまで、またさらし者には出来ないと考えたのでしょう、正体を隠して地方の墓地に葬ったのですが、それがばれて別の墓地に移します。ここも管理者が交代した時に追い出されました。　結局教会が埋葬を認めて、正式に墓が出来、永住の地を得たのは一八九六年の八月……死んでから五十六年も経ってからだったのです。　　　※　　※　　※　パガニーニ作品はその他にも色々あって、ヴァイオリンの曲をチェロ、ギター、フルート、クラリネット、マリンバ、マンドリン、声楽、エレキギターなどに編曲して演奏したものも多数所有している。中野二郎氏がギターのための変奏曲を贈って下さったが、震災で消えてしまった。　その他、持っていないものも含め、何でもバレエ「パガニーニ」　ボリショイ劇場の演奏記録がある。レオニード・ラヴロフスキーの振り付けをヴラディーミル・ヴァシーリエフが再現したものとされていて、アレクサンドル・コブィエフの指揮というのだが、肝心の作曲者について何も書かれていない。パガニーニが舞踏会の演奏で全盛を極め、やがて人生に絶望していくというストーリーらしい。映画「若き日のショパン」　１９５１年のポーランド映画。アレクサンドル・フォルト脚本・監督。カジミエシ・セロツキ音楽とある。ショパンが政治情勢と関わりながらコンスタンツェと恋に落ちる。パガニーニの演奏に感動して音楽に生きる決意をするが留学問題に悩み、ポーランド独立運動の中で、ショパンの演奏会も暗殺に利用されそうになる。ウィーンへ留学したショパンは病に倒れるが、パリでかつての仲間と再会し、ポーランド独立を訴えるデモに参加する。映画「パガニーニ」　ルイス・コーテス脚本。この人は「鮮血のイリュージョン３」「スタークラッシュ」など、怪奇映画の専門家なので、パガニーニが悪魔に魂を売ったのをテーマとしたものか。「パガニーニ・ホラー」という題で公開されたのがこの作品という情報もある。映画「パガニーニ・悪魔のヴァイオリニスト」　デビッド・ギャレットがパガニーニを演じている。悪魔の力でとてつもない技術を身に付けるが、少女を人気歌手に育て上げ、彼女の歌を聞きながら死を迎えるにあたり、彼女の魂の救いを求める。ヴァイオリン協奏曲第４番第２楽章の美しいメロディが愛のテーマとして、ソプラノとヴァイオリンの「愛の二重奏（あなたに）」と題して歌われる。パガニーニ弦楽四重奏団　テミアンカ、ロッセール、クールト（フォダールに交代）、マス（フリーズンに交代）の室内楽団。１９４６年１１月にニューヨークでデビューし、６６年に解散するまで精力的に活動した。パガニーニが所有していた楽器を使って演奏している。パガニーニ号　イタリアの特急列車。どこからどこへ走っているのか、イタリア語で読めない。ニコロ・パガニーニ　バラの一種。真っ赤な花が、まあそれらしい。ニコロ・パガニーニ　二つの数字で、元の数字を除いた約数の和がもう一つの数字になる組み合わせを「友愛数」という。「１」も除くものが「婚約数」、友愛数は全て偶数同士か奇数同士、婚約数は全て奇数と偶数の組み合わせで、宗教家のピタゴラスが世界は全て数字で成り立つと説明し、２が男で３は女、これを掛けた６は結婚であり、間違いであると説明した。６が悪魔の数字だと言ったのも彼。元の数字を除く約数を全部加えると元の数字に戻るのを「結婚数」というのもここから。三角関数のピタゴラスその人であるが、平方根を知らなかったので二等辺三角形は計算の出来ない間違った形だと言っている。　さて、友愛数はこのピタゴラスの時代から知られており、聖書にも登場しているが、最小の組み合わせは「２２０」と「２８４」。フェルマーやオイラーといった数学者が研究し、「オイラーの法則」というのは聞き覚えがあると思う。こうした研究家がやったのだから、それより下はないだろうと思われていたが、１８６６年に学生であった十代の少年が「１１８４」と「１２１０」という二番目に小さい物を発見。教師はこれを自分の手柄としようとしたのでひと騒動持ち上がった。この発見した少年がニコロ・パガニーニ。ここで取り上げた作曲家と同姓同名である。パガニーニ　１９８５年に結成されたドイツのヘヴィメタバンド。ボーカルのマーク・パガニーニは作曲家のパガニーニの子孫だと名乗っていたが、男系の子孫はいない。尚、音楽はアメリカン。

  2017.03.09

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• パガニーニ伝：その48

  ４８：ウィルレの話   　パガニーニの死んだ後の問題について話そう。 　まず問題は後継ぎさ。パガニーニの死が伝えられると、その偉業を継ぐものが誰かという話題になった。当然息子のアキレが第一候補になる訳だが、息子は演奏活動は行っているものの、父親ほどの才能は持ち合わせていなかった。父の残した協奏曲第五番のソロの譜面に伴奏を作ってくれと依頼したこともあるが、例の、技術だけで中身がないという中傷があったので、父親の残した譜面をほとんど表に出さずにしまっておいた。 　アキレには女の子しか生まれず、その孫娘が一九二〇年代に演奏したのが協奏曲第三番の第二楽章で、実は彼女らには第一楽章と第三楽章は演奏出来なかった。あまりに美しい第二楽章だけをピアノ伴奏に編曲して演奏していたのだ。シェリングがこれをパガニーニの作品だと見抜いて譜面を求めたが、この二人もパガニーニ作品はひどいといわれ続けていたので拒否した。結局二人が説得に応じたのは四十年も後、一九七一年一〇月一〇日、遂に協奏曲第三番が日の目を見たのである。パガニーニの曽孫二人と、その孫娘が会場に現れた。同時にパガニーニの愛用していたガルネリが使われることで話題も呼んだ。この曲を聞いた人々は、パガニーニもいい曲を作っているじゃないか……ということで見直されるのだが、本当に認知されるまでさら十五年、はっきり言えばいまだに正しい認識はされず、技巧のみを求めた作曲家となっている。 　さて、そのパガニーニの愛用したガルネリも話題になった。これを使用する許可を得た者が後継者として認められたことになる。これは特にパリで賭けにもなった。候補者として上位にランキングされたのが、ベリオ、エルンスト、リビンスキー、マイゼーダー、モリク、オール・ブル、シュポーア、ヴュータン。この八人が有力候補だというが、本人が宣伝のために噂を流したことも発覚した。この演奏家たち、エルンストの『夏の名残のバラ（庭の千草）変奏曲』、シュポーアのヴァイオリンとチェロのための協奏曲、ヴュータンのヴァイオリン協奏曲が演奏されるくらいで、そのスケールからも、とてもパガニーニと並ぶとは思えない。まあ、今パガニーニの作品も粗末に扱われているから同等なのかも知れないが。 　パガニーニはガルネリをどうしたのか……手に入れた時に約束した通り、博物館に寄贈して、一切演奏させないようにしたよ。私はショーケースなどを掃除することがあるが、中をきれいにするときには警備員が立ち合い、専門家がガルネリを動かす。楽器に息をかけることも許されなかった。 　本人が「オルガンのように響く」と言ったが、太い音色は伴奏が鳴り響いていてもしっかり通って来る。素晴らしい楽器であることは間違いない。 　先日……といっても、協奏曲第三番が演奏された後だが、イギリスかアメリカかの「何とか鑑定団」とかいう番組があった。世界の名器に値段を付けるのだ。そこにガルネリが登場したが、普通のヴァイオリンとして十億円、パガニーニが使ったという付加価値で三十億円という値がついたね。   　　　※　　※　　※   レハール：喜歌劇「パガニーニ」 　北イタリアでフランス領となっている地区へパガニーニがやって来て、挨拶に「美しきイタリア」を歌う。演奏会が予定されていたが、大公の命令で中止され、人々は残念に思う。そこへやって来たのが大公の妻であるエリーゼ、ナポレオンの妹である。彼女は身分を隠してパガニーニを自分の屋敷の音楽家に雇う。 そのヴァイオリン演奏に聴衆は熱狂するが、パガニーニは賭けでヴァイオリンを取られてしまう。落ち込むパガニーニと慰めるエリーゼ、この夜ついに結ばれる。そこへ、宮廷に仕える信奉者が宮廷にあるヴァイオリンの名器を探し出して届けたため、危うく二人の仲がばれそうになる。 ナポレオンは妹の金遣いの荒さに怒り、パガニーニの逮捕命令を出す。エリーゼはパガニーニが若い女性歌手に手を出しているのを知って、その嫉妬心からこの逮捕命令を承諾する。最後の演奏会、演奏が終わると会場に入って来た軍によってパガニーニは捕まってしまうのか…… 　まあ、予定通りの結末だが、パガニーニの逸話をいくつも盛り込んで、パガニーニとエリーゼの純愛として描き、なかなか面白いものになっている。 　ＤＶＤを持っているが、解説がどうもおかしい。パガニーニの影響や主題による作品を紹介しているが、発売当時にはまだ音源が無いもの、訳の間違ったもの、などが紹介されている。例えば、ウェッバーの「スーパー・ヴァリエーション」は「Variations」という題で発売され、私がフルートで遊んだ時に、洒落で「ウルトラ・ヴァリエーション」とをやり、ウェッバーの作品をＨＰに「スーパー・ヴァリエーション」で紹介した。このタイトルを使っているというのは私のＨＰからの引用という以外の原因は見つからない。当時音源の無い曲もその当時は同じＨＰ以外には見つからない。どうも疑惑だらけの解説である。   ローゼンブラット：パガニーニ変奏曲 　奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。 　シミットの演奏を所有。   ロックバーグ：カプリース変奏曲 　奇想曲第２４番による、無伴奏ヴァイオリンのための曲。１９７０年の作品。５１の変奏を書いたが、そこから２４曲を選んで順番も大幅に入れ替えて改定した。一方、自由に選んで演奏してよいということもやっているので、演奏によっていつも同じではない。１つの変奏が１分半くらいで計算すると演奏時間が分かる。原曲の番号がついている。 ７番にはベートーヴェンの弦楽四重奏曲「ハープ」のスケルツォ、 ８番にはシューベルトの「舞曲」作品９の２２「ワルツ」 ２１番にはベートーヴェンの交響曲第７番、 ３６番にはショパンの練習曲作品１０の１１ ４１番にはウェーベルンのパッサカリア ４３番にはモーツァルトの「魔笛」 ４４番にはマーラーの交響曲第５番のスケルツォ 　など、色々な曲がイメージされて行く。他もそうなのかも知れないが、後は分からない。 ５１番が原曲の主題で、要するに、曲の最後で主題が演奏される。 　ミルシテインから始まり、シュニトケ、間にエルンストの「夏の名残のバラ（庭の千草）変奏曲」をはさんで、この曲で終わるギドン・クレメールのＣＤが絶品。主題から始まり、主題で終わるのだ。ジャケットが映画「春の小交響曲」でパガニーニを演じた野性的な姿で、解説書の紳士的なクレメールとの対照が面白い。 　クレメールは、４２、３４、３５、１８、５、２１、７、８、２３、３６、２４、２５、４６、１６、４３，４５、１９、３８、３１、４４、４１、４９、５０、５１を演奏している。 　新井英治は、３６、１６、４３、２０、２９、３３、３８、１９、３５、５を演奏している。   ロッシーニ：パガニーニによせてひとこと（エレジー） 　絶大な人気を誇った作曲家で、ベートーヴェンまでがロッシーニとかぶると客が来なくなると恐れていた。パガニーニと大の仲良しだったのは本文を参照。音楽活動はわずか２０年、６３歳の時に有り余る財産を使ってレストランを経営した。 まあそれはともかく、引退後は軽いピアノ曲を作っていた。曲の終わりの和音だけを並べて１曲にするような変な曲もあるが、その中で唯一ヴァイオリンを使うのがこれ。 新井英治の演奏を所有。   若林千春：Campanella 　ピアノ独奏のための。鐘の音を描写する和音が続き、その中に「ラ・カンパネラ」が聞こえる。雑誌『カンパネラ』創刊号を記念して作ったもので、演奏されたかどうか……著作権もあるので、自分で録音したものを楽しんでいる。

  2017.03.08

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• パガニーニ伝：その47

  ４７：リーマの話   　パガニーニの晩年の話をお聞きになりたいのですか……もう皆さんご存知のことでもよろしいですか。 　晩年一番話題になったのはパガニーニ・カジノでっすね。パリに出来る高級カジノというのでパガニーニ本人も承諾したのですが、実際に建築が始まると安っぽい賭博場で、パガニーニが連日演奏をすると宣伝しているのです。パガニーニは二年前、一八三五年七月九日にトリノで演奏したのが最後でしたから、相当の話題になったそうです。 　ところがパガニーニはそんな契約はしていないし、安物の賭博場ということも分かって。それに品のないカジノだということも次第に明らかになったので手を引いた。 　相手が訴訟を起こしました。裁判官に裏から手を回し、金を回し、パガニーニを有罪に追い込んだのです。もしパリにいたら逮捕されていたでしょう。結局慰謝料などで莫大な出資があったといいます。 　最後は一八四〇年五月二七日、ニースのホテルで亡くなりました。　死因は色々言われていますが、憶測が憶測を呼んで、はっきりしたものはありません。噂はあまりいいものはありませんでした。 さて、教会では葬儀を行うことは許しましたが、彼が悪魔と契約していたという理由で埋葬を拒否しました。死体をそのままにしていたので、死体を見物するために教会に聴衆が集まりました。これではとても礼拝もしていられませんので、亡くなったホテルに頼んで死体を霊安室に置くようにしたのです。そのためホテルは死体を見たいと言う予約客で一杯になりました。予約の取れない人は周辺の宿を取る、遠くからでもわざわざ出掛けて死体を見るのに長蛇の列が出来ました。ええ、私はその整理を命じられました。すごかったですよ。屋台の店が出来たり、代理で並ぶアルバイトまでいたり、記念グッズのお店までできましたからねえ。 　夜に出入りされると迷惑ですから、朝十時から霊安室を開けるようにしたのですが、夜が明ける頃にはもう列が出来ていましたね。昼に来れば二時間も並べば見られるのですが、六時間も並んでいるんですから……それで死体がほほ笑んだ、知った顔には目を開いて挨拶をした……私は失神した女性の介抱までやらされましたわ。 　一月ほどそういう騒ぎが続いて、ようやく名前を伏せて地方の墓地に埋葬したのですが、正体がばれて掘り起こされました。防腐処理をされていたといいますが、その後もきれいなままの死体で、直接見た人はみんな祟られたそうでうわ。結局パルマの共同墓地に埋葬が許可されたのは三六年もたった一八七六年だったのです。それから更に二十年、一八九六年八月にようやく墓を作ることが許可されました。はい、埋葬して何事も起こらなかったというのが認可の理由です。　死体も大変でしたが、遺産がもっと大騒ぎになりました。お金は息子のアキレさんがほとんど受け取ったということですが、問題になるのは、そのヴァイオリン技術、それ以上にパガニーニが使っていたがルネリというヴァイオリンです。それについては私はよく知りません。   　　　※　　※　　※   ラフマニノフ：パガニーニの主題による狂詩曲 　奇想曲第２４番を、ピアノ協奏曲の形で変奏する。１９３４年の作品。この後、交響曲第３番と交響的舞曲が書かれただけで、彼の最後のピアノ曲となった。ストコフスキーと競演した、自作自演のモノラル録音が残っている。子供時代に聞いたが、モノラルのため、色彩感に乏しく思われた。美しい音色が駆使されているのに気付いたのは大分後になってからだった。序奏があって、合計２４の変奏があるが、１８番が映画「六つの恋の物語」「ある日どこかで」などに使われて有名。対旋律風にグレゴリオ聖歌の「怒りの日」が用いられている。これはベルリオーズが「幻想交響曲」に使って人気になるが、リストらも好んで用いた。ラフマニノフは最後の作品となった交響的舞曲でも使っている。変奏曲に二つの主題が交錯するというのは例がなく、画期的だった。パガニーニの主題に対し、「怒りの日」が悪魔の主題で、悪魔に身を売ったパガニーニの運命をドラマチックに描いたという解釈があるが、「怒りの日」は堕落した人類への神の怒りであり、悪魔ではない。 　ラフマニノフの自作自演判は協奏曲を含めてＣＤ２枚に収録されている。日本で１枚１０００円未満で売られているのに、ネットオークションで２枚セット２５００円からという詐欺のような値が付けられていた。私はアメリカで２枚セット６００円で購入。 　ステレオではヤロンスキーのピアノ、アシュケナージ指揮、ロイヤル・フィル版が、ルトスワフスキの「パガニーニ・ヴァリエーション」も入っていて楽しい。   リスト：パガニーニの主題による華麗な大幻想変奏曲　イ短調 　実は持っていないが、後の説明のために紹介。１８３４年出版。長い前奏の後「ラ・カンパネラ」が始まるが、二度目には右手が同じ音の連打と、最大２オクターブ上に装飾音が出る。この装飾音は、最初にも出るが、その時には左手で弾けばいい。しかし、二度目は演奏不能であるから、前打音で弾くことになる。三回目は三連符の連続。イ短調のため嬰トが弾きにくい。後の「大練習曲」で嬰ト短調にしたのは弾きやすくしたもの。 　ピアノの腕を見せるためのもので、５００小節もある大曲。第二主題に「ベニスの謝肉祭」が登場する。終わったかと思った後に、左右の手が互いの手を越えてピアノを叩くという派手な部分が始まり、全音域を使う半音階、鍵盤の真ん中で両手でトリルを弾きながら、上下に第二主題を弾く、十度の和音の連続……まあ好き勝手な技巧が次々に出る、１５０小節もあるコーダが付く。譜面を見たことはあるが、演奏を聞いたことはない。誰もＭＩＤＩなどにしてくれない、超絶の作品。   リスト：パガニーニの主題による超絶技巧練習曲 　１８３８年の出版で、５１年に出る「大練習曲」と同じ曲目。 １「アルペッジョ」：奇想曲の第６番がメインだが、前後に５番の導入部を付けた。前半は「大」と同じ。主題を上下で提示するのが難しいが、「大」では低音部だけを残し、左手で演奏するように書かれているが、右手で弾けば難しくない。後の部分では「大」は左手での単純なトレモロ、右手が旋律であるが、ここでは手を交錯させて、左手で旋律を弾かねばならない。再現部ではパガニーニお得意の分散和音が使われるが、ピアノでは弾きにくい。まあ、聞いていてもよく分からない。 ２「オクターブ」：奇想曲第１７番。ほとんど「大」と同じだが、下降音に三度の和音の連続があって、テンポ通りに弾くのは困難。その後も両手交互の三重和音で半音階を駆け下りる。「大」では右手の四度の連続で演奏している。これも易しいものではない。その後は「大」では右手に和音、左手で波音会を弾くが、ここでは右手がメロディと三度が連続する半音階、左手は広い和音にトリルが付く。細かい所は相当違うが、「大」の方が弾きやすいのにダイナミックで効果的。 ３「ラ・カンパネラ」：変イ短調で始まるが、「大」のオクターブの跳躍はなく、単純な旋律。この効果は「大」の圧勝。後はそれほどの違いはなく、主題がカノン風に戻って「大」と同じ形で終止する。この程度かと思ったら、何と長調になって協奏曲第１番のフィナーレが登場する。これを主題として技巧を追うが、さほどの難曲でもなく、主題が変わるのでまとまりも欠けている。 ４「アルペッジョ」：奇想曲第１番。「大」はただピアノに移したというだけの、創意も工夫もないつまらない編曲。こちらはとんでもない難しさ。アルペッジョを両手で別々に和音で弾く。ホ短調になると「大」では三度の和音の三連符だが、ここでは左手が同じようでいて低音部に対旋律があり、右手は三重の和音でのアルペッジョになる。ここまでピアノを叩きまくる曲はない。フィナーレにも、両手で十度の和音の連続など、無茶苦茶な技巧が駆使される。池尾拓『クラシックＢ級グルメ』には、 『通常版（編者注：「大」）では急速な単音で演奏される第４番は、初版では両手とも重音！ しかもだんだん分厚くなっていき、しまいには鍵盤の下から上まで腕が駆け巡って分厚い和音を叩きまくる大暴れ。（中略）通常版はあくまでも「ヴァイオリンでやってる事をピアノでもやった」レベルなんですが、初版には「ピアノが本気を出したら、おまえらどうなるか見てろよぉ」的な気合を感じます。』 　と書かれている。これは第二版の内容。「かなり難しい第１版と、無責任なほど難しい第２版」だという。 ５「狩り」：奇想曲第９番。この「超絶」を簡略化して「大」にしたのだろうという経過が見えるような作品。前半は難しいが効果は今一。中間部は「大」が片手で演奏するのを、ここでは両手で飛び回るようになっている。まあそれでも効果的には「大」の方がずっといい。最初の主題の再現は、「大」はあっさりしているが、ここでは「ラ・カンパネラ」を思わせる高音オクターブの連続、半音階、とスケールが大きくなっている。 ６「主題と変奏」：奇想曲第２４番の編曲だが、原曲をそのまま生かしている。対旋律風に主題が聞こえるのも効果的。「大」も面白いが、この「超絶」の技巧とは雲泥の差がある。 第１変奏：「大」は原曲通りの分散和音。こちらは全部三重和音。 第２変奏：「大」は旋律を両手でトスするが、こちらは両手で同時に演奏。原曲通りの装飾音もあるのでとんでもなく難しい。 第３変奏：特記するほどの差はない。 第４変奏：左手が三連符で、右手とはリズムが違う。 第５変奏：特記するほどの差はない。 第６変奏：左手が急速な十度の和音の進行。 第７変奏：低音にリズムが加わって厚い和音になっている。 第８変奏：これはびっくり。右手が幅の広い分散和音、左手はとてつもない跳躍の連続。後半は左右の役割が入れ替わる。 第９変奏：「大」は単純極まりない分散和音だが、ここでは同じ分散和音を三オクターブに分けて鍵盤の上中下を飛び回る。 　とまあ、飛んでもない難曲。 　大井和郎の演奏を所有。   リスト：パガニーニ大練習曲 一般に演奏されているもの。これまでのパガニーニ作品を改定して、「誰でも弾けるような曲」として１８５１年に完成させたもの。曲そのものは上記の「超絶技巧」と同じなので省略。第３番の「ラ・カンパネラ」が人気の作品。原作の華やかさを抑えた、ピアニシモで演奏する。「鐘」の描写は原曲以上だという。これと第２番の雄大な編曲は、原曲のヴァイオリンを離れて、いかにもピアノらしい効果を駆使している。 　大井和郎持っているが、グラフマンが定番。学校での資料としても推薦されている。   ルトスワフスキ：パガニーニの主題による変奏曲（２台のピアノ版） ルトスワフスキ：パガニーニの主題による変奏曲（ピアノと管弦楽版） 　奇想曲第２４番による変奏。メロディは元のままだが、和音や装飾音の扱いが現代的。１９４１年にアルバイトをしていて友人と二人で演奏したのがプロの耳に止まった。１９７７年に女性ピアニストのブルメンタールの依頼によって管弦楽版に編曲したもの。打楽器が駆使され、和音も現代的だが、主題から変奏まで主旋律は原曲の通りに進行する。 　２台のピアノはデュオ・グレースの演奏を、管弦楽伴奏はヤロンスキーとアシュケナージ指揮のロイヤル・フィルを所有。

  2017.03.07

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• パガニーニ伝：その46

  ４６：ベルタンの話 　パガニーニの依頼で曲を作り始めたベルリオーズは、ソロのヴィオラはあるものの、あらゆる楽器が平等に活躍する、『幻想交響曲』に続く新しいドラマを考えたのです。途中でパガニーニが不満を述べました。「私は休んでいるのなどとんでもない。最初から最後まで演奏したいのだ。」　結局意見の違いはけんか別れとなりました。　収入が無くなってがっかりしたと思うでしょう。ベルリオーズは自分の考える通りの作品にしようと考えたんだ。これが彼のすごいところですよ。　それでどんどん自分の思う通りに作り替えたのです。最初に書いた部分もどんどん作り替えて、ヴィオラの活躍も随分減らした。フィナーレを聞いてごらん。ソロのヴィオラはどこで鳴っているかね。もう協奏曲ではありません。ベルリオーズは『幻想交響曲』に続く作品として、『イタリアのハロルド』を作り上げたのです。　さて、一方のパガニーニだが、病気で声が出なくなり、体調もおかしくなりました。性病だとも、歯医者の治療がひどかったともいわれるが、本当のところは分からないね。一八三七年七月九日のトリノでの演奏会が最後の演奏でした。それでも翌年『春』と題したソナタを作曲中だと手紙で伝えています。　ベルリオーズと再会したのはその年、一八三八年のことだ。一二月一六日、偶然『イタリアのハロルド』を聞いたのです。当然これは自分が依頼した曲だと気付きますよ。　パガニーニはすぐにベルリオーズを訪ねました。声が出ないので、息子のアキレが通訳をしたそうです。パガニーニは、「あなたはベートーヴェン以上のことをなし遂げたのです。」　と言って二万フランを贈りました。ベルリオーズは歌劇『ベンベヌート・チェルリーニ』で大失敗し、それをネタに音楽大家の嫌がらせで演奏会も出来なくなり、生活に困窮していました。ベルリオーズはこの支援によって翌年九月八日に劇的交響曲『ロミオとジュリエット』を完成させ、パガニーニに献呈しました。一一月二四日の初演ではバルザックという作家が、「パリの全知識人があなたの演奏を聞いていた。」と褒めたたえました。久し振りの活躍にベルリオーズは一週間も寝込みますが、その後パガニーニを訪ねました。パガニーニは、「あなたは私に今まで知らなかった感動を与えて下さったのです。私が音楽をよく理解し、下等な音楽が私に感銘を与えないことは、全ての人々がよく知っています。」　と激励したそうです。　守銭奴といわれたパガニーニが二万フランも出すなんて考えれないと言う人が多かったですね。ベルリオーズのパトロンであった私がパガニーニの名を借りて贈ったと噂しました。ベルリオーズの友人のヒリーが書いた伝記『ある芸術家の生涯』にもそう書いています。まあそうなると上院議員である私が贈ったことになる訳ですよ。私は自分の経営している新聞でも「ロミオとジュリエット」の成功を大々的に取り上げたからね。パガニーニの名前を使うことは宣伝にはなるだろうが、二万フランは取り戻せるかねえ。パガニーニが激励に訪れたことは間違いないことだよ。 　　　※　　※　　※ フリードマン：パガニーニの主題によるスタディ　作品４７ｂ　奇想曲第２４番によるピアノのための変奏曲。次々雰囲気を変えるが、ピアノらしいテクニックが次々現れる。　トロイヤーンの演奏を所有。 ブレーメ：パガニーニアーナ　奇想曲第２４番によるアコーディオンのための変奏曲。たまたま日本人が演奏したのだが、まだあまり知られていなかった。それなのにレハールの喜歌劇の解説に紹介されている。並んだ作品を見れば、私のＨＰを参照したのだと分かる。イタリア風、フランス風など、各国のイメージが繰り広げられるが、いかにもアコーディオンに似合っている。　御喜美江の演奏を所有。 ブロト：パガニーニの主題によるダブルベースと管弦楽のための９つの変奏曲　奇想曲第２４番による。既に変奏と言ってもいい序奏があって、主題、変奏が続く。打楽器も変奏も現代的、というのは、変奏の調整が自由。　へランのソロとシンガポール・コンセントﾘｰ管弦楽団の演奏を所有。 ベルコヴィッチ：パガニーニ・ヴァリエーション　奇想曲第２４番によるピアノのための変奏曲。　サーシャ、チリスの演奏を所有。 ボッタームント：パガニーニの主題による変奏曲　奇想曲第２４番による２台のチェロのための変奏曲。学生時代古本屋で見た昭和３０年代の雑誌にタイトルを見付けていたが、どう探しても見つからなかった。ついに発見するまで３０年以上探したということになる。　録音を手にしたものの、演奏者の記録が行方不明。

  2017.03.06

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• パガニーニ伝：その45

  ４５：アブネックの話   　私はベートーヴェンの『合唱』を研究していました。一八二七年に亡くなったベートーヴェンが亡くなる三年前に発表しましたが、全く世に受け入れられません。私はこれが素晴らしい作品だと考えて、何度も演奏を繰り返したのです。一八三一年にやっと喝采を得たのです。もっとも第一楽章から第三楽章まで、それも間に軽い曲をはさんでの演奏でした。肝心のフィナーレはカットしていたんです。 　この前、一八二九年にメンデルスゾーンがバッハの『マタイ受難曲』を演奏しましたが、そこで彼は自分で曲を解釈し、演奏家たちに演奏の仕方を指示したのです。今では当たり前ですが、これが世界で初めてだったのですよ。これは指揮者について見直させました。指揮者という立場が恥ずかしくない時代が訪れたのです。 　これはバッハという作曲家も見直されることになるきっかけでした。後にビューローがこの二人に、売り出し中のブラームスを加えてドイツ３Ｂと呼んだのはご存知の通りです。ビューローがブラームスと敵対するワーグナーの親友だというのが面白いですね。 　最初に述べた『合唱』の演奏はそのワーグナーに影響を与えました。ワーグナーは『合唱』が理解されないのは、各楽器の演奏に無理があるのだとして編曲して演奏するよう改定しました。通し演奏で成功したのは私が先ですよ、一八三七年のことです。念のため。 　もう一人、ベルリオーズも、この演奏会で影響を受けたといわれているようですが、彼はその前年にあの『幻想交響曲』を発表しています。はい、私が指揮をしました。そのままではあの荒々しい、構成の分かりにくい音楽は聴衆に受け入れられない。それで『合唱』と同じ運命になると思いました。だからテキストを付けるよう助言したのです。これは大成功でしたね。次々に変化してまとまりのない音楽の展開は、テキストによって主人公の心の動きとして理解されたのです。ベートーヴェンが死んでわずか三年目ですよ。これでロマン派が動き出したのです。ロマン派を動き出させた功労者は、管弦楽ではベルリオーズ、器楽ではパガニーニ、間違いないでしょう。 　そのパガニーニは一八三三年一月二二日の演奏会で『幻想交響曲』を聞きました。こういうドラマチックな作品こそ、パガニーニの求めるものでした。 「長い髪と、鋭い眼光と、怪しい、そして粗暴な顔つきをしたこの男。それは天才といおうか、巨人中の巨人といおうか。私がかつて見たことのない男であった。私は一目見て非常に感動した。男はただ一人ホールに突っ立っていた。私が前をよこぎろうとすると、呼び止めて手を握った。そして身も心も焼きつくすような激しい賛辞をおしつけた。この男はパガニーニであった。」 　ベルリオーズはそう書き残しています。パガニーニは手に入れたばかりのストラディバリウスのヴィオラのための作品を依頼しました。ベルリオーズはまだ若く、新進気鋭の作曲家でしたからねえ。この依頼でパガニーニがどんどん演奏してくれれば、一躍世界的作曲家になったはずでした。「でした」というのは、そうならなかったのです。   　　　※　　※　　※   ブラームス：パガニーニの主題による変奏曲 　奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。「ヘンデルの主題による変奏曲」と並ぶ傑作だが、門馬直美は、 「『ヘンデル』は音楽と効果の完全な調和だったが、新しい『パガニーニ』は、技巧と効果だけを重んじているのである。」 としている。その理由として、ピアニストであるタウジヒの技巧に感激したブラームスが、技巧だけでも十分効果があると考えたこと、主題にこのメロディを選んだ理由として、シューマンの例とリストへの挑戦を上げている。門馬氏はピアノだけに言及しているが、当然パガニーニの超絶技巧への思いもあったはずである。 　あらゆる技巧を使う必要があり、ブラームス夫人は「魔術師の変奏曲」と呼んでいる。１４曲ずつの前半、後半から成り、それぞれ最後がフィナーレとして少々長めになっている。出版の関係で二部に分けたもので、通して演奏するものだと考えていたらしい。出版社ではあまりの難しさから、元々ついていた「練習曲」というタイトルを目に付かぬ小さな文字で印刷したという。テクニックに困り果てた友人、ローゼンタールがテクニックに困り果て、「半分でやめてもいいのか」と尋ねると、「前半が終わって、客がもっと聞きたい様子だったら後半を演奏しろ」と答えたという逸話が残る。 　技術的にも内容でも面白い作品。ブラームスは管弦楽や室内楽に傑作が多く、親しみ易さで劣るのか、人気は今一のように感じる。 　１８６３年の作品で、ピアノ独奏による変奏曲の最後の作品となった。変奏曲の技術の全てを尽くした作品。 　ビレットの演奏を所有。   ブラッハー：パガニーニの主題によるオーケストラ変奏曲 　奇想曲第２４番による変奏曲。１９４７年の作で、旋律よりリズムが面白い。主題がヴァイオリンで示されると、下降音から世界が変わり、１６の変奏が続く。譜面では３拍子なのに、楽器によってアクセントが違っている、５拍子と７拍子、４拍子と５拍子が入り混じる、主題が４分音符、８分音符、１６分音符で重なる、原曲通りの２拍子なのに、中は７連符……なんて、不思議なリズムの交錯。 　インバル指揮のラジオシンフォニアで所有。

  2017.03.05

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• パガニーニ伝：その44

  ４４：ベクターの話 　パガニーニの作品はレベルが低いといわれるが、あくまでヴァイオリンのための作品だということだね。パガニーニは歌劇を一人で演じているんだと思うよ。管弦楽が序奏を演奏するのは歌劇の序曲。ね、中で歌われる主題が聞こえて華やかに鳴り響くだけで、どんなドラマが展開するのか期待させるじゃないか。そしてソロの登場、まさに名歌手の詠唱や重唱を一人でやってしまうんだ。そのための管弦楽として聞くと実に効果的で見事だね。序奏が長いというので省略するのは、その期待をそいでいるのだから、音楽の分からない人だね。そう思って聞いてごらん。ショパンもピアノ曲ばかり作ったが、管弦楽なんか本当に下手だよね。協奏曲の出来の悪さはパガニーニの足元にも及ばないんじゃないか。　とにかく生きている間は……というよりも死んだ後も、批判にさらされた作品群だが、ヴァイオリンのために作ったんだから……もし歌劇を作っていたらイタリアを代表する作曲家になるってロッシーニが言っていたね。　影響を受けた作曲家、やはりそのロッシーニだろうね。当時の音楽は何といってもイタリアオペラ、ベートーヴェンのおかげでウィーンが音楽の都なんて言われたが、やはりまずイタリアなんだ。それ以外で認められたのが「音楽の都」ということなんだよ。イタリアの都市をそんな名前で呼んだら笑われるよ。ロッシーニの華やかで明るい調子はパガニーニの作品にも表れているね。ヴァイオリン協奏曲第二番なんか、ロッシーニの『セビリアの理髪師』によく似ているじゃないか。　一八二八年、パガニーニがウィーンに出た時にはベートーヴェンの作品も演奏され、素晴らしい作曲家だと認識し、尊敬の対象となった。ベートーヴェンは前年に亡くなっていて、第九交響曲『合唱』はまだ世に認められていない。後に第五番、日本では『運命』と呼ばれているが、この主題の展開に感銘している。パガニーニが最後に作ったのが『春』というソナタ。これもベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを意識したのかも知れないな。　さて、パガニーニが演奏会でどのくらい設けていたか、一つだけメモが残っている。私が裏方で協力した演奏会さ。一八三一年のパリで、たった一回だけの演奏会で一九〇九六フランを手にしている。この頃のパリの市長に当たる役職が年俸四〇〇フランという記録があるそうだ。四〇〇万円で換算すれば、パガニーニは一回の演奏会で一億九千万円を手にした計算になるね。　そうそう、この演奏会にはあのピアノのリストも来ている。前年にパガニーニを聞いて感動しているが、それからショパンやベルリオーズと出会っている。ヴァイオリン協奏曲第四番を聞いて「私はピアノの魔術師になりたい」と言ったのがこの演奏会だと伝えられる。こうして、パガニーニはヨーロッパを回っているので、優れた作曲家や作品とも出会っただろう。もう一人パガニーニが認めたのが、今名前の出たベルリオーズだ。詳しい人を紹介するから、話を聞いてごらん。 　　　※　　※　　※ バーンズ：パガニーニの主題による幻想変奏曲　学校で吹奏楽やった人なら知っている作曲家で、奇想曲第２４番による２０の変奏曲だが、技巧はそれほど難しくない。ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」の吹奏楽版を作るのが目的だったといい、変奏ごとにソロの楽器が変わる。学生の演奏では一部をカットしていることも多い。１９８８年初演。　自作自演の演奏を所有。 バイワー：パガニーニの主題による１２の変奏曲　もちろん奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。　自作自演の演奏を所有。 バスティン：パガニーニの主題による変奏曲　もちろん奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。　自作自演の演奏を所有。 ハッピー・バースディ・パガニーニ　「ハッピー・バースディ・トゥ・ユー」をパガニーニが編曲したというパロディ音楽。演奏者不明。素人のものだろう。大した作品ではない。 ハメリン：パガニーニの主題による変奏曲　もちろん奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。　自作自演の演奏を所有。 ピアニスターＨＩＲＯＳＨＩ：ゲゲゲのカンパネラ　リストの「ラ・カンパネラ」だが、主題は「ゲゲゲの鬼太郎」という楽しいパロディ。 ピルスル：パガニーニの主題による練習曲　ハーモニカのための作品。奇想曲第９番の「狩り」から始まり、いくつかの曲をハシゴするが、その主題が何だかおかしい。実は第２４番の変奏になっているのだ。奇想曲のいろいろなフレーズを使って「狩り」に戻るが、２４番の主題そのものは聞こえない。　崎元譲の演奏を所有。 フィヴェロード：Ｍｒ． Ｐａｇａｎｉｎｉ　ジャズの歌謡曲。名歌手がみんな歌っているね。特に主題を使っているのではない。　いくつか聞いてこれがいいなってんで、フィヴェロードって人の歌声をコレクション。 プーランク：３つの歌曲「メタモルフォーズ」　第３曲が「パガニーニ」。特に主題を使っているのではない。　ソプラノ歌手の名前紛失。

  2017.03.04

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• パガニーニ伝：その43

  ４３：ナルザメールの話   　ライプツィヒでもパガニーニ人気はすごいものだった。ここでは楽団が反発した。 　例えば演奏会の収入は会場と主催者とパガニーニで分ける。オーケストラの分が会場に付いているか、主催者が依頼するかなどで配分は変わるが、パガニーニは大体三分の一を持って行く訳だ。それがパガニーニの場合は入場券を五倍くらいで販売する。それを全部自分が取る。普通百万くらいの入場料が入るとすれば、パガニーニの場合は四百万は自分のものという訳さ。 　ところが、ライプツィヒはオーケストラの出演料を入場料から配分するという慣習があったのっだ。この時は普通の三倍の入場料だったので、オーケストラもいつもの三倍受け取ることになる。しかし、パガニーニは、これは自分が出るから客もそれだけ払うので、オーケストラにはいつもの出演料しか出さないと宣言した。オーケストラがこれを断ったため、演奏会は中止になった。がっかりした新聞雑誌は、パガニーニのルール違反を並べ立てて守銭奴として書き立てた。 　金遣いについては確かにケチだと思うよ。わしらスポンサーが陰で出していることも多いね。だが、使うべきところではちゃんと使う。この時の入場料についてはパガニーニの方が筋が通っていると思わないかね。 続いてベルリンでも……作品に中身がないというのはどこでも書き立てるが、ライプツィヒの事件を挙げて守銭奴としてやり玉に挙げた。チケットの不買運動が起こったので、パガニーニは値段を上げた。それで完売し、観客は熱狂した。 　この頃プロセインで洪水が起こった。パガニーニはその後行われた二度の宮廷歌劇場での演奏会の収入を全額寄付した。これも私がパガニーニの名前で寄付をしたということになっているが、誰がそんなところで身代わりをするものか。 　ベルリンでは八回の演奏会が超満員、続いてワルシャワへ行った。二度目になるが大変な熱狂は相変わらずさ。 　ここではショパンの先生として有名なエルスナーが現れ、フランスの金貨を黄金の箱に入れて贈った。そう、『ワルシャワ・ソナタ』の主題を書いた作曲家さ。そのお礼という名目だろうが、箱には「ワルシャワの崇拝者より、偉大な天才パガニーニに贈る」と彫られていたので、これがかなり話題になったよ。 　もう一つ話題になったのが詩人でお馴染みのハイネだ。彼はパガニーニの音楽をメロディも展開も独創性がなく、テクニックも奇異を狙ったもので、こんなものは音楽ではないとこき下ろした。なぜか、パガニーニを非難している新聞雑誌までがこれを取り上げて、「ハイネは音楽を何も知らない。彼はパガニーニに幻影を見ることだけで満足し、その批評は言葉の響き、文学には素晴らしいが、内容は事実に即さないものである。」と書き立てた。これによってハイネの音楽批評は二度と新聞雑誌が取り上げなかったのだ。 　その他同じような事件はヨーロッパ全土で起こったと言っていいね。   　　　※　　※　　※   長生恂：パガニーニ・ロスト 　２本のアルトサックスとピアノのための作品。 　上野耕平と松平洋のサックスと黒岩航紀のピアノで演奏された録音あり。;   ＮＥＷＳ：四銃士 　ラフマニノフの狂詩曲をもとにしたアイドル歌謡。やはりかの有名な第１８変奏がサビだが、イントロからラフマニノフを利用して面白い。クラシックのプロが携わったので、編曲はまあまあ。   ネチェポレンコ：パガニーニの主題による変奏曲 　奇想曲第２４番による、バラライカのための変奏曲。聞いた印象でバラライカの技巧を駆使しているのだろうと書いたら、練習曲程度のもので難しくないというお便りをいただいた。何度聞いてもこれだけのものを弾くのは超絶技巧だと思うのだが、バラライカってそんなに易しいのだろうか。 　アンドレイ・ゴルバチョフの演奏を所有。

  2017.03.03

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• パガニーニ伝：その42

  ４２：マグハムの話　人気をやっかんでの酷評、離婚したことへの中傷、とにかくどこへ行ってもひどいことを書かれるのがパガニーニのスタイルになってしまった。それが一番ひどかったのがプラハだった。わしはその演奏会を裏方として手伝ったが、演奏会が決まってから毎日新聞雑誌に悪口が掛かれるので、客が来なくなるのではないかと心配したよ。例えば「ハンブルグベルゼンハレ」という新聞にはこう書かれている。「演奏技術の素晴らしさは機械的なもので練習すれば出来る。才能、知性という精神的なものは一かけらも感じられない。運弓法は批評する価値もない。ウィーンでは彼と競演した者がいるということだが、ここプラハではそういう愚かな演奏家はいない。しかし、彼のあのような演奏を美しいと思う愚かな人はこの地にもいて、泣き出す婦人もいるということだ。何と馬鹿馬鹿しいことか。」　この時の記事で最もちゃんと書かれているのがこれ。「運休法」のどこがいけないのかくらい書いておけばいいものを、「機械的なもの」だとか「精神的なもの」だとか、何一つ具体的に書かれていないのだ。　え、日本でも同じようなことがあった。吉田秀和が、当時の新聞批評で、「演奏技術は素晴らしいが、心が伴っておらず、精神的高揚は伝わらない」とか、そういう批評に不満を持って、どこがどのように素晴らしいか、どういう点が足りないのかを具体的に書くよう心掛けたという文章があるのかい。なるほどねえ。　それでは二百年も前に書かれた評価が大手をふるってまかり通るのも仕方がないね。ヨーロッパでも、ヴァイオリンのパガニーニ、ピアノのラフマニノフといえば、技術ばかりで中身のない代表とされているからねえ。ラフマニノフは日本では人気なんだってねえ。じゃあパガニーニも理解できるんだろう。え、こちらは昔の酷評が残っているのかい。　まあ、とにかく、当時の批評は何一つ具体的に指摘せずに、技術だけを磨いているということばかりだったよ。書く方はそれが楽だからね。酷評ばかり書いているのは力がないからで、本当に優れた批評家は必ずいいところを見付けて具体的に示してくれるね。　そもそもパガニーニも秘密主義でね、あの様々なテクニックを自分だけの独占にして、演奏方法も、譜面すらも外に出さなかった。ヴァイオリンをちょっとかじった程度では何が起こっているのか分からない。だから素人の批評家には、音楽そのものが理解できなかったのだろう。解説のしようがないのだ。この時代のパガニーニ評は、褒めるのもけなすのも、その演奏に唖然として、訳も分からずに書いている。だから、どこがどうという説明は一つも出て来ないのだ。　プラハでも入場料を五倍取った。それで新聞雑誌では聞く価値はないというのを大々的に宣伝したんだ。だから客が来なくなるのを心配したんだよ。全くの杞憂だったね。夜の演奏会なのに、昼には会場前に大行列が出来、同じ値段を払うので立ち見でもいいから入れてくれという大混雑で、けが人まで出るほどの入りになったんだ。　　　※　　※　　※テデスコ：悪魔のカプリッチョ　ギターの作曲家としてお馴染み。奇想曲による作品で、「パガニーニ讃」とされている。　「ベニスの謝肉祭」も作っている。　山下和仁の演奏を所有。デルボード：ギター協奏曲　ギターのソナタなどの旋律を使った協奏曲。パガニーニが管弦楽にも力があることをお考えると、全く伴奏になってしまっていて物足りない。　作曲者自身の演奏を所有。ドブソン：パガニーニ・ヒップドブソン：パガニーニ・ウイスキー　ギター作品。「お尻」の方の主題は何だかはっきりしない。「ウイスキー」は「馬車道のバーナード修道院」MS67の穏やかな主題を軽やかに演奏しているのが心地いい。　作曲者自身の演奏を所有。トレディチ：タトゥ　管弦楽のための現代音楽作品。第２楽章が「パガニーニへのオマージュ」と題されて、奇想曲第２４番による幻想曲。　バーンスタイン指揮のニュヨーク・フィルの演奏を所有。

  2017.03.02

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• パガニーニ伝：その41

  ４１：ブルナーティの話　パガニーニとアントニアとの離婚について聞きたいって……ゴシップ記事にするのかい……そうじゃない……まあ、それなら話をしてもいいが……　アントニアの浪費がすごいと言われているが、実際には寂しかったのさ。パガニーニはほとんど海外での演奏だろう。家に帰って来ることはほとんどない。息子のアキレは何をしても怒らないほど溺愛していたがねえ。　アントニアもあれだけの美人だ。それに歌もうまい。それがパガニーニと一緒でないと舞台に立てないという契約にしていたので、不満もあったのだろうね。実際パガニーニの陰になって全く人気は出なかった。歌はうまくてね、息子のアキレに教えるが、アキレは二歳でもう耳にした歌を完璧に再現する能力を身に付けていたよ。たまに舞台に立つと、息子の方が大喝采なんてこともあったよ。　まあ、それで離縁する意思を固めたということになるが、一八二八年の八月四日、公証人を立てて正式に離婚が決定した。夫の方は愛が冷めた訳ではないというので、パガニーニは地元で離婚記念の演奏会を開き、その収入全部を彼女に送った。パガニーニがアキレを引き取るのにやっぱりお金で解決になったから、彼女もパガニーニに負けぬ守銭奴にされてしまったねえ。　演奏会収入は三七三一グルデン、二十世紀の後半、二グルデンで一ドルだから一三四万円なんて日本で紹介されたようだが、当時のお金で計算したらその二十倍以上の価値と見るのが正解だと思うよ。それにアキレを引き取る慰謝料に更に三〇〇〇グルデンを受け取ったのだから、合計五千万円くらいにはなっただろう。慰謝料にしては安いと思うかね。当時の物価は安いから、その十倍もらったと思えばいい。　パガニーニは遺言でも彼女に毎年一二〇〇フランを贈るよう指示しているね。どのくらいになるかな。パリの市長が年俸四〇〇フランだから、四〇〇万円としようか、え、今の政治家は桁が違う……まあ、面倒だから……適当に計算し直しておくれ。ともかく君の時代なら毎年一二〇〇万円を贈られたということにしようじゃないか。まあその二倍でも三倍でも好きなように計算してくれ。　息子のアキレは幼くてね、パガニーニはこの子と遊んで演奏会に遅刻することが多くなったそうだ。時間に気付いて慌てて服を身に付けようとするが、アキレが隠れんぼならぬ「隠しんぼ」を憶えてしまった。トランクの中にチョッキ、箪笥の後ろにズボン、上着は台所と全部ばらばらで見つかるんだ。　それからヨーロッパ中を連れて回って、七歳でイタリア語の他にフランス語とドイツ語がぺらぺらになった。パガニーニはナポレオン家に仕えていたのでフランス語が多少使えた程度だから、頼もしい通訳になったんだ。　その後のアントニアについてかい。ミラノへ帰って、再婚したが、平凡な妻となってしまったよ。ははは、今はわしの妻だ。　　　※　　※　　※スクバイワー：パガニーニの主題による１２の変奏曲　奇想曲第２４番による、ピアノのための作品。パガニーニの時代のショパンやシューマンの雰囲気を彷彿とさせる。　シュミットの演奏を所有。スクロワクゼフスキー：コンチェルト・ニコロ　左手のためのピアノ協奏曲。四楽章から成る。現代音楽の怪しい音の層があり、ピアノに奇想曲２４番の和音進行が聞こえる。　ミネソタ交響楽団の演奏を所有。ソリストの名がないのは、作曲者のスクロワクゼフスキーがピアノを弾いているということだろうか。ゾエ：Ｐａｇａｎｉｎｉ　ＴＲＡＸＸ　ロック。何重にも重なるリズムの連続。どこがパガニーニやねん……という作品。ダラピカロ：ソナチーナ・カノニカ　「パガニーニのカプリッチョによる」と書かれている。奇想曲の主題が次々出て来るが、タイトル通りカノン風に追い掛けっこする。　プラベリスの演奏を所有。

  2017.03.01

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• パガニーニ伝：その40

  ４０：ラウブッフェの話　一八二八年のウィーンの大フィーバーの話をお聞きになったそうですね。その後もヨーロッパ各地で演奏会を開きました。翌年にはワルシャワでの演奏会もあって、「ワルシャワ・ソナタ」を初演しています。五月二十四日だと思います。この土地では有名なエルスナーの歌劇『ヴィストゥラの娘たち』の主題による華麗な変奏曲です。『ソナタ・ヴァルサヴィア』とも呼ばれています。まあ、同じことなんですが……ええ、そうです、エルスナーというのはショパンの先生ですよ。　ここでイタリア民謡の「私のお母さん」を主題とした無伴奏の変奏曲も演奏したようですね。そうです、はるか昔にベニスでの演奏会で、挨拶の意味から「ベニスの謝肉祭」というタイトルを付けた曲です。「ブルレス久変奏曲」とも呼ばれました。ここで演奏されたらしいというのは、演奏会を聞きに来たショパンが即興のようにピアノ曲を書いているからです。はい、それが「パガニーニの思い出」という小品ですよ。　後にシューマン夫人となったクララが来たのもこの演奏会です。　リストと出会ったのは更に翌年ですね。その頃にヴァイオリン協奏曲ニ短調、後に四番とされている作品を完成させたという手紙を書いています。この記録をまとめている作者が、リストはこの四番を聞いて感動したというのは、ストーリー性からそう作ったので、本当かどうか分かりません。何しろ適当男で有名でしょう……あ、脱線してしまったね……ただ、完全に嘘だとも言えないのは、リストが「ピアノの魔術師になりたい」というのを書いたのがその翌年のことですからねえ。　ついでに説明しておくと、発見が遅かったのに第三番になったホ長調の作品については、ウィーンで大騒ぎになっていた一八二八年の六月二十四日付の手紙で演奏したというのがそれだという説があります。ホ長調といえば第一番がオケはホ長調、ソロはニ長調で書かれているから、そっちだろうともいわれる。まあ、わざわざ手紙に書いたのは新しい曲の方だというのが定説になるのでしょうね。　まあ話があちこち行ってしまいましたが、それほどヨーロッパ中にセンセーションを巻き起こしたということを言いたいのですよ。　一方、最初に戻るが、ウィーンでの演奏会が終わった一八二八年の八月四日付で妻のアントニアと離婚している。　例の父親、パガニーニが若い頃に全収入を巻き上げていた父親は既に亡くなっていました……ああ、息子のアキレが生まれた一八二五年でしたっけ……母親はまだ健在でしたが、病気でほとんど動けない生活になりましたし、その世話をするためにパガニーニの妹の一人も引き取っていました。収入はすごいが、生活は苦しいんです。その原因が妻の浪費でした。収入をほとんど宝石や洋服に使ってしまうのです。　そんな状態で、パガニーニはヨーロッパでの演奏活動をやっているんです。要するに単身赴任のようになっているんです。すっかり二人の仲は冷めてしまっていたのです。　　　※　　※　　※ヨハン・シュトラウス一世：パガニーニ風ワルツ　作品１１　１８２８年の作品。メイン主題は「ラ・カンパネラ」。協奏曲第１番などパガニーニの作品やヴァイオリンのテクニックが次々と登場する。実に楽しい作品。　尚、演奏から遠ざかっていた晩年のパガニーニが、息子であるヨハン二世の演奏会に突然現れて指揮をしたという記録があるが、父の演奏に登場したのかどうかは未詳。　１９９９年のウィーン・フィルがニュー・イヤー・コンサートで演奏したものを入手。その前のも持っていたが、東日本大震災で消えてしまった。シュニトケ：ア・パガニーニ　奇想曲第２４番による、無伴奏ヴァイオリンのための変奏曲。シュトックハウゼン、ノーノ、ケージ、リゲティなどの現代作曲家に影響され、１２音体系の洗礼を受けた作曲家。アンダンテで書かれ、半音階どころか、その間の微細音程まで使って自由に書かれている。哲学的味わいで、何とも言えぬ深みがある。　クレメールの録音を所有。ミルシテインの「パガニーニアーナ」、この曲、エルンストの「夏の名残のバラ」で小休止して、ロックバーグの「カプリース変奏曲」と続くアルバムが実にドラマチック。ショパン：変奏曲　イ長調「パガニーニの思い出」　１８２９年、パガニーニの演奏会に行った日に即興的に作ったといわれる。出版は８１年。ショパンの作としてもいい出来とも思えず、人気も無かったのだろう。「ベニスの謝肉祭」による作品であるが、ピアノの技巧を使いこなしたとも思えず、パガニーニの演奏の雰囲気を伝えただけのもので、重要な作品とはされていない。　ハラシェビッチの演奏を所有。ショパン：４手のための変奏曲　ニ長調　同じく「ベニスの謝肉祭」による作品だが、ショパンらしさを感じさせる作品になっている。ショパンの変奏曲はいくつかあるが、「独奏曲といてのショパンの変奏曲には、特別に革新的な手法は見られないが、主題が提示される前に序奏をおいた点や、華麗なフィナーレを配するなど、ショパンの演奏家としての野心が表れている。（下田幸二）」、要するにパガニーニそのままのスタイルを使っているということである。「２４の練習曲」を作ったのも、パガニーニの「奇想曲」に影響されたというのはご存知の通り。　デュオ・グレースの演奏を所有。演奏会でサインもいただいている。

  2017.02.28

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• パガニーニ伝：その39

  ３９：カール・グルーの話　一八二八年、ウィーンでのパガニーニ・フィーバーは伝説的で、八月にプラハへ向かうまでパガニーニが話題にならない日はなかった。新聞などでは今日はパガニーニが何をした、何をする予定、などと毎日報道されていたというからねえ。お茶を飲んだ店にも行列が出来た。それからパガニーニはハンブルグで十回の演奏会を行った後で、このフランクフルトへ来たのだ。ああ、わしはフランクフルト・アム・マインの学長をしておったのじゃ。　グリルルツァーという詩人はウィーンでのパガニーニを詩に書いている。　カステリという作家は「パガニーニアーナ」という作品を書いた。これは「パガニーニあれこれ」とでも訳すかね。その後カッセラ、ブレーメ、ミルシテインなど、多くの作曲家がパガニーニの主題の作品のタイトルとして使っているね。　そうそう、もう話は聞いただろう、「アラパガニーニ」とか「ア・パガニーニ」というのもタイトルとしてよく使われているようだね。　カンネという作曲家兼批評家は、自分の雑誌に「ジェノヴァの魔術師」という十二節から成る詩を発表している。肖像を描いた人も多いな。ドラクロワのが後々に残るだろうねえ。　シューマンは「パガニーニの作品は、ピアノに移しても大きな効果をあげうるような純粋な貴重な特質を数多く含んでいる」と言っているね。　リストは「パガニーニが『ヴァイオリンの魔術師』なら、私は『ピアノの魔術師』と呼ばれるようになりたい。」と言っていたが、パガニーニが死んだときには、「パガニーニというような男はもう最後の芸術家だ、ということにしたい。あんな利己心と虚栄心の強い芸術家を、招待の芸術家は断固として拒否すべきである。パガニーニの目的は内になく外にあった。彼には技巧が手段ではなく目的であった。」と言っている。そのくせまだパガニーニの主題による作品を書いているんだから、どういう気持ちだったのかねえ。　ベルリンの演奏家、ルードヴィヒ・レルシュターブは「パガニーニは信じられないことを現実にした。」と言って、「いままで知られなかった非常に困難な技術を披露したけれども、それらをすべて生き生きと優雅にひきこなしている。彼はここでいままでいかなる名手も果たし得なかったほどの成果を上げたといえよう。」と語っている。　わしの批評も呼んだかね。じゃあ読んであげよう。「聞き手はすべての困難を克服している彼のすぐれたテクニックに魅了される。パガニーニは際限もなく広いところに彼のファンタジーを繰り広げ、ヴァイオリンの崇高な音で、人々の魂を揺り動かす。（中略）彼がアダージョをひくとき、その深さと力強さは言語に絶するものがあった。彼のアダージョの演奏はまるで傷ついた心の深いため息をうたっているようであった。」　どうだね……ウィーンでの批評の多くは、彼の音楽はテクニックばかりで中身はない……演奏技術はすごいが曲そのものは聞くところがない……そんなのばかりが広がっている。批判するのは簡単だからね。パガニーニはどこがどうして素晴らしいのか、説明のしようがないんだ。そんなのを間に受けて、批判だけが後世に受け継がれていくのだねえ。　　　※　　※　　※シューマン：奇想曲（編曲）　シューマンの逸話は本文にいくつも出しているので省略。「奇想曲」にピアノ伴奏をつけたもの。２４曲全てを編曲し、第２４番には間奏も書いている。　ギャレットの演奏では、なぜか２４番だけ無伴奏で収録している。２４番だけを演奏した録音があったが、震災でデータが消えてしまった。シューマン：パガニーニのカプリースによる練習曲　作品３　１８３２年の作品。奇想曲の５、９（狩り）、１１、１３（悪魔の微笑）、１９、１６番をピアノ演奏用に編曲したもの。シューマン：パガニーニのカプリースによる演奏会用練習　作品１０１８３３年の作品。作品３よりも華やかになっている。奇想曲の１２、６、１０、４、２、３番を編曲したもの。２４曲全部を編曲する予定だったのだろうが、この２セット１２曲で終わり、後は作られなかった。作品３と共に伊藤恵の演奏を所有。シューマン：謝肉祭（イメージ）　自由な小さな曲を集めた「謝肉祭」はパガニーニがすでに作品化しているが、シューマンも仲間らを集めて作品にしている。１８３５年の作。全体を統一する主題という訳ではないが、４音のメロディが随所に現れる。第３０曲が「パガニーニ」。前後に「ドイツ風ワルツ」があって、ワルツの主題でパガニーニの超絶技巧が変奏される。ワルツは妻であったクララの作品を引用している。　いくつか持っているが、我が家ではアシュケナージのが定番になっている。

  2017.02.27

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• パガニーニ伝：その38

  ３８：ツィマーの話　一八二七年の暮れ、ウィーンではエジプトの王から贈られたキリンが大流行した。髪を大きく編み上げてキリンの頭をデザインした「アラジラフ」が流行して、それに合う帽子まで売れたよ。ああ、うちの店にもまだあるよ。一つどうだい。　年が明けるとパガニーニが来るというので、何とかパガニーニにあやかろうと準備が始まった。三月になって、実際にパガニーニが来ると、もうキリンはどっか行っちまって、パガニーニ一色になったよ。「アラパガニーニ」の大流行さ。　「ア・ラ」は知ってるね、「アラカルト」くらいしか知らないって……「あれこれ」とか「何でも」という意味が一般だが、何々「風」という意味でも使っているのさ。　そうそう、シューマンというピアニストがパガニーニの追っ掛けになってハンブルグからフランクフルトまで行ったという話は聞いたかい。一八三四年、彼の書いた記事でショパンという作曲家の作品一を紹介しているが、どこをとっても他の作曲家とは違う、「アラショパン」だと書いているね。もちろんその時でも読んだ人はパガニーニから取ったんだと分かったんだよ。　第一号は向こうのパン屋だったと思うね。ヴァイオリンの形をしたパンが大流行で、店が開く前から行列が出来て、開店前に売り切れさ。それでも次を焼くだろうと行列は消えなかった。これはまだヴァイオリンの形だから許せるが、普通のシチュー、カツレツ、ステーキ、ビスケットまで全部「アラパガニーニ」と名付けただけで飛ぶように売れた。ああ、この時代は自由だったからね。パガニーニだって文句は言えないんだよ。そうそう、あの辻馬車だけはパガニーニ直筆の書類を額に入れて飾っていた。だから本物だってんでとてつもない人気になっていたんだ。　ビリヤードの玉やキューにもヴァイオリンが印刷されたし、わしの店でもハンカチ、ネクタイ、バンバン売れたよ。「アラジラフ」はパガニーニで消えたが、「アラパガニーニ」は八月にウィーンから離れても人気が続き、年内はそれだけで商売になったよ。　パガニーニ本人も、たまたま店に来て手袋が欲しいと言ったんだ。そこで「アラジラフ」を勧めたら気に入らない。結局片手にヴァイオリン、もう一方に弓をデザインした「アラパガニーニ」を買って行ったよ。　新聞のマンガも、毎日のようにパガニーニを描いていたね。本人が一番気に入っていたのは、乞食のパガニーニが公園前の歩道で演奏しているという絵だった。知ってるかね、カーニバルで乞食になってヴァイオリンを弾いたという話はこちらでも知らぬ者がない。ウィーンの中央公園には著名人の肖像画があるが、パガニーニは乞食の肖像なんだ。　え、どうしてパガニーニはそんな程度の絵を気に入ったのだろうって……分からないかい。パガニーニは弦一本だけで演奏する。もちろん一番低い音のＧ線なのさ、Ｇ線（Ｇ Ｓａｉｔｅ＝ゲー・ザイテ）だけで、歩道（Ｇｅｈ－Ｓｅｉｔｅ＝ゲー・ザイテ）で演奏しているんだよ。　　　※　　※　　※ザルベンボード：パガニーニの主題によるペダルのための変奏曲　奇想曲第２４番による変奏曲。オルガンのペダルだけを使う。つまり足だけで演奏するのだ。　ビッシュの演奏で所有。ジプシー・デビッス・オーケストラ：パガニーニ讃　ジプシー音楽のグループによる作品。撥弦楽器が大活躍する。奇想曲第２４番による自由気ままな変奏曲。シマノフスキ：３つのパガニーニの奇想曲　奇想曲の２０、２１、２４番をピアノ伴奏に編曲したものだが、現代音楽的な音作りで、ヴァイオリンも原曲のままではない。アッカルドがパガニーニのヴァイオリンを使用した演奏を所有。ジャコビック：パガニーニ・ツイスト（歌謡曲）　ツイスト大流行時代の作品。奇想曲第２４番に歌詞を付けた歌謡曲。　ジャコビックというのは歌っている人。ジャノスカ：奇想曲第２４番（編曲）　ジャズで、あ、原曲のままを生かそうとしているのかなと思うと新しい変奏も出る。自由な楽しい変奏曲。　ジャノスカ・トリオの演奏を２種類所有。ヴァイオリンとピアノだが、片方の録音にはベースがあり、片方にはドラムスがある。ジャズの方はよく知らないので、なぜと言われても分からない。

  2017.02.26

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• パガニーニ伝：その37

  ３７：ゴーダの話　パガニーニの話を聞きたいのはあんたかい。そう、ウィーンに来た時の大フィーバーは歴史に残るね。わしの友達だったギャリックの話をしようかね。こいつはわしと同じ、ウィーンで馬車を走らせていたんだ。ホテル前で客を乗せたら、演奏会場まで行けって言うので、普通なら日本円で二千円もあれば行くのを十万円だって吹っ掛けたんだ。客がそんな無茶な値段があるかと言ったら、野郎すまして、「旦那、パガニーニを聞きに行くんでしょう。あっしだって機会があれば一度聞いてみたいと思うんですよ。場所の代金がその入場料と同じなら、旦那を会場まで送って、あっしもそのまま客席に入れるってもんだ。」　高い入場料なのに、ホテルから会場まで馬車を利用する、相当金持ちの客と踏んだんだね。客だって黙っていない。「しかしね、パガニーニは弦一本だけで演奏するそうだよ。君の馬車は片方の車輪だけで走ってくれるのかい。」「その噂が本当かどうか見たいんでさ。そんな妙技を見たら、あっしだって帰りには片方の車輪に挑戦しまっさ。」　この客面白がって、言い値で乗ると言ったからびっくりするじゃないか。金を持って会場に行ったところでもう切符は売り切れだ。この客、会場に着くと、ついでだからと切符を一枚恵んだから、ギャリックは大喜びさ。　ところが入ってから大騒ぎを起こした。貴族ばかりが陣取った一等席に汚い御者が入り込んでいるじゃないか。切符は持っているが盗んだ物に違いないというので警備の者が取り押さえた。ところが、切符を譲ったという申し出があってこの御者は許されたんだ。　さあ、演奏が始まる。ギャリックはパガニーニが登場して演奏が始まった途端に奇声を上げた。演奏が進むと気も狂わんばかりに喚き立てて回りから顰蹙を買ったがお構いなしだ。　なぜそんなに興奮したと思う。さっき馬車に乗せた客がパガニーニ本人だったのさ。　翌日、ギャリックはパガニーニに挨拶に行き、「パガニーニ御用達の辻馬車」という看板を付けさせてくれと願い出た。お礼は昨日の馬車代全額……ギャリックも奮発したね。パガニーニは面白がって許してしまった。直筆の許可書をもらったんだ。　これから数ヶ月、この馬車はウィーン中の話題になり、予約なしでは乗れなくなった。日に十人も載せれば上々だったのに、一時間に数組、それも飛び切りの高値で商売になる。半年後にはその儲けでパガニーニが泊まったホテルを買い取って「パガニーニ御用達ホテル」と改名した。これも普通の数倍の値段で、数ヶ月先まで予約が一杯ということになった。　ところがね、パガニーニの演奏会をやると宣伝して、実際には他の奴がパガニーニの曲を演奏する……って、誰も弾けるわけがないんだ。そんな訳であっという間に人気は消えて行った。三ヶ月目にはキャンセルが出始めて、半年を待たずに潰れてしまったよ。　馬鹿のギャリックは元の御者に逆戻りという、馬鹿馬鹿しい一席で失礼するよ。　　　※　　※　　※クーラウ：ラ・カンパネラ　ピアノ独奏のための編曲。リストが技巧を駆使したのに対して、こちらはピアノに移しただけの印象だが、ピアノの練習曲を多く書いている人らしい雰囲気を持っている。　演奏者不明。昔録音したもの。グロリュー：ラ・カンパネラ　「珠玉の名曲集」に収録されている。リストの作品をバロック期のスカルラッティが編曲したもの。グロリューといえば、ビートルズをクラシックの大作曲家がピアノにアレンジした作品集で一躍人気になった。来日した折には日本のメロディを演奏しレコードも出た。アンコールでは都はるみの「北の宿」をショパンがアレンジしたもの、「待ちぼうけ」をモーツァルトからバルトークまでのメドレーで聞かせた。この録音も震災で吹っ飛んだ。残念。ゴーテ：Ｐａｇａｎｉｎｉ　カレル・ゴーテの歌うバラード。ヴァイオリンのオブリガードがつく。サイ：パガニーニの主題によるジャズ・ヴァリエーション　奇想曲第２４番によるピアノ独奏曲。タイトル通り。イントロがあって主題からジャズって行く。最近人気の曲でジャズ・ピアニストがよく取り上げている。　作曲者の自作自演で所有。ザブソン：Ｐａｇａｎｉｎｉ　ラップ？　何これという音楽で、パガニーニのヴァイオリンがちょろちょろと登場するのが何ともおかしい。

  2017.02.25

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• パガニーニ伝：その36

  ３６：根尾喜久の話　パガニーニの演奏ですか……演奏不能という秘密は、死後次第に明らかにされて行きました。　彼は伴奏をしてくれる管弦楽やピアノ伴奏者にもソロ・ヴァイオリンの譜面は見せませんでした。それで人々は耳で音を拾って譜面にするのですが、絶対に指の届かない部分があるのです。パガニーニは色々な仕掛けを使って演奏不能を可能にしたのです。　協奏曲第一番はホ長調として書かれています。管弦楽はホ長調で演奏しますが、ソロのヴァイオリンだけは弦の調整を代えてニ長調で演奏するのです。ニ長調はヴァイオリンの最も美しく聞こえる調整です。つまり、管弦楽がホ長調なのに、ソロがニ長調で際立ってよく聞こえるようになるです。管弦楽とソロが違う調整で弾いているなんて、誰も考え付きません。これがパガニーニの発明した、「スコルダトゥーラ」という方法なのです。　今は管弦楽もニ長調にしていますが、演奏しにくい部分も出ます。ウィルヘルミやクライスラーが演奏しやすく編曲しています。編曲というのが多いはそのためなのです。　もう一つ、彼の特色を描いたエピソードがあります。ハイドンのソナタを演奏してくれるよう頼まれた時、忙しいため大急ぎで会場入りし、音合わせもせずに演奏に入った。ハイドンの作品は単純なので装飾音を付けた……これが批判の的だが、それでないとこの時代は詰まらないと思われたのでしょう。現代でも古典的作品は自由に装飾を付けるものですが、全く付けずに演奏する人から装飾音だらけにする人まで、色々いますね。　さて、演奏は何事もなく終わって、パガニーニは帰りました。客席にいた音楽家のピキオンティが何だかおかしいと言い出します。ピアノを弾いてみると、何とすべての鍵盤が半音ずつ狂って調律されているではありませんか。調教師がパガニーニをやっかんでわざと狂った音にしておいたのです。パガニーニは会場へ来ていきなり演奏したのですが、ピアノの音を聞いた瞬間に狂っているのを見抜き、いや聞き抜き、半音ずらして演奏したのです。　彼の秘密はその素晴らしい耳にあったのです。音が違っていれば合わせて行く力量を持っているのです。演奏中でも調弦を代えることがありました。伴奏だけが鳴っている数秒の間に、弦の一本、あるいは二本を調整してしまうのです。すると、今までの調弦では演奏不能の和音や音程でも、簡単に演奏出来てしまうのです。腕や指の柔らかさが病気の一種だったという指摘もありますが、それ以上にこういうテクニックも持っていたのです。だから、最初の弦のままで演奏しようとするととても指が届かない部分が出来てしまうのです。　今は編曲されているというのも、ここに原因があるのです。パガニーニの演奏は、とても真似できないことであり、管弦楽と違う調整というのも不合理ですからね。今は編曲しているのです。そういう秘密もあって、ウィーンの大フィーバーを起こしたのです。　ああ、三重フラジオレットですか。演奏をするのに、基本音と軽く抑えるのとで六本の指が必要だと思うんでしょう。簡単です。開放弦を利用するのですよ。指が一本増えている訳ではありません。人の思いつかないことをやるのがすごいんです。　　　※　　※　　※カタンガ：パガニーニ・メドレー（編曲）カタンガ：ラ・カンパネラ（編曲）カタンガ：２４のカプリース（編曲）　「ジプシー音楽」に収録。最初の曲はまさにメドレーだが、モーツァルト風の旋律が交錯する。あとはお馴染みのものを、ジプシーの雰囲気で。カッセラ：パガニーニアーナ　作品６６（主題）　「管弦楽のためのディベルティメント」と題されている４楽章の作品。パガニーニの様々な主題を盛り込んでいる。奇想曲の部分的な旋律が用いられているが、第３楽章でソナタ「春」のメロディがほとんどそのまま出て来るのが印象的。　スイス・イタリア管弦楽団という、どこの国か分からない楽団の演奏を所有。金野貴明：スーパー・カンパネラ　元はピアノ連弾の作品だという。テンポがゆっくりで華やかさを隠している不思議な雰囲気の作品。　高知尾純がシンセサイザーをバックに演奏したＣＤに、演奏会でサインしてもらう。川島素晴：プレスト・カプリチオーソ　ヴァイオリンとピアノの作品。元はピアノ連弾だという。現代的な荒々しいピアノが印象的。ヴァイオリンの重音や分散和音にパガニーニを感じる部分がある。パガニーニ記念の演奏会で演奏されたというので探したものが、本当にパガニーニによるものなのだろうか……カプリチオーソだからカプリースと関連付けてパガニーニの演奏会で演奏されたのだろうか。このあたりがちょっとよく分からない。　甲斐芙美子のヴァイオリン、御寿賀香織のピアノ演奏を所有。

  2017.02.24

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• パガニーニ伝：その35

  ３５：シュナイダーの話　パガニーニですか、とにかくウィーンにセンセーションをもたらしましたね。六月十八日にはオーストリア国王の前でも演奏しています。国歌を主題とした変奏曲を書いていますが、序奏部には昔書いた『ナポレオン・ソナタ』のフィナーレを転用したようですね。ええ、弦一本で二重奏を弾くというあのとんでもない部分ですよ。今回の変奏曲も弦一本で弾くのを見せる作品でしたね。やはり序奏部がすごい人気になったので、曲名も『マエストーサ・ソナタ・センチメンターレ』になりました。　翌一八三〇年のワルシャワでは『ワルシャワ・ソナタ』を初演したはずです。この演奏会をショパンやクララ・シューマンが聞いたはずですね。どこへ行ってもそこでヒットした、誰もが知っているメロディを使った曲を演奏するのが人気の秘訣かもしれませんよ。　ああ、今回は私の友、シューベルトの話でしたね。　彼が交響曲『ザ・グレート』を完成したのが一八二八年でした。はい、後に『未完成』が発見されて人気になりますね。へえ、映画になって……この曲の終わらざるがごとく、わが恋の終わることなし……そんな臭い台詞を言う男じゃないですよ。『未完成』も第二楽章までが完成していますがね、第三楽章のピアノ版は出来ているし、フィナーレの主題も書いていますよ。まあ、商売にならないので完成させなかったというのが本当でね。『ザ・グレート』なんか、シューマンが「長すぎる」ってルナールの『博物誌』にある「蛇」みたいなことを言ってますね。それでグレートって呼ばれるんでしょう。　あ、すみません、つい余計な話をしたくなって……パガニーニでしたね。ちょうどその年、一八二八年の三月から八月まで、ウィーンで十回の演奏会を開いたのです。シューベルトだって音楽家ですから聞かないわけにいかないでしょう。でもお金が無いんですよ。家財道具売り払って、全財産をはたいてチケットを手に入れ、聞きに行ったのです。　ショパンは演奏を聞いた日の内に『パガニーニの思い出』というのを作り、後に二台のピアノのための変奏曲に発展させました。他の作曲家は省略しますが何かしら残しています。シューベルトは「パガニーニのアダージョに天使の歌を聞いた」と書き残していますが、その衝撃で何も手に付かなくなりました。具合が悪くなって、我々が気付いて医者の所へ担ぎ込んだ時にはもう手遅れで、十一月十九日に永眠しました。はい、医者にかかるお金が無かったのです。パガニーニを聞かなければもっと長生きできたでしょうね。ええ、シューマンさんもパガニーニを知らなければ穏やかに年を取ったでしょうね。　パガニーニの演奏は大変でしたよ。とにかく指が届かない。パガニーニは悪魔と契約して指がニ十センチまで伸びたという話ですね。それにハーモニックって、音程の部分を指で押さえ、その先の絃に軽く触れることで笛のような高い音を出すんでしょう。一つの音に二本の指を使うんですよ。曲ではそれに左手のピチカートを使っている。親指を使うんです。ここまではまだ分かるでしょう。『魔女たちの踊り』では三重音のハーモニックまで使うんですよ。つまり指六本で抑えているんです。どういうことでしょうなあ。　　　※　　※　　※エルスナー：インプロピゼーション　リチャード・エルスナーによるオルガンの即興演奏……なのだろう。和音進行から奇想曲第２４番が感じられるが、メロディは出ない。『パガニーニ作品集』に収められているので、そう思って聞かないと何だか分からない。エルマン：奇想曲　奇想曲全曲をフルートに編曲したもので、１９７４年の出版。フルートで技巧的にしようとして手を加えているが、原曲のまま吹いた方がすっきりしていいという印象。元のイメージを壊す改悪と感じる部分も相当にある。はっきり言えるのは、２４番をなぜ音程を変えているのだろう。どうもテクニックに走りすぎるのがパガニーニだと誤解して作ったものという印象。　加藤元章の演奏を所有。オイゲン・キケロ・トリオ：カプリース第２４番　ジャズで演奏したもの。「春の歌」と題したＣＤに収録されている。

  2017.02.23

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• パガニーニ伝：その34

  ３４：クララの話　クララです。はい、ロベルト・シューマンは私の夫です。今日は夫ではなく、パガニーニのお話をすればいいのですね。でも夫の話になるのはお許し下さい。　パガニーニがウィーンに旋風を巻き起こしたのは一八二八年のことですが、私が聞いたのはその翌年でした。ええ、私は当時はクララ・ウィーク、十歳でした。はい、「アダージョに心を動かされた。」というのはその時の言葉ですわ。当時もパガニーニの音楽といえばテクニックばかりで中身がないという批評が多かったのです。決してそうではないと子供心にも思ったのが現れたのですわ。ロベルトはその前年、ウィーンで行われたパガニーニの演奏会で感激し、この後ハンブルグの演奏会では十回に皆勤しましたし、更にフランクフルトまで追っ掛けて行きました。日記には、「パガニーニを聞く。驚いた。まったく驚かずにはいられないではないか！ 遠いところから聞く音楽のようでもあり、まるでベッドの上での永遠の安らぎのようでもある。」と記しています。ピアニストとして売り出していましたが、曖昧だった気持ちを整理し、音楽に生きる決心をしたのです。　主人はパガニーニの二十四の奇想曲にピアノ伴奏を付けました。更にそのままピアノに編曲しようとして一八三二年には六、九、十一、十三、十九、十六番による『パガニーニのカプリースによる練習曲』作品三を、翌年にはより華やかに、十二、六、十、四、二、三番を編曲して『演奏会用練習曲』作品十を編曲しています。残りも編曲するつもりだったのでしょうが、そこでやめてしまっています。　パガニーニは自由に小さい曲を集めた『謝肉祭』という作品を生み出していますが、夫も同じタイトルでピアノ曲を残しました。一八三五年の曲です。ここには「ドイツ風ワルツ」という曲があり、二度繰り返されますが、間に「パガニーニ」という曲があり、そこでパガニーニの超絶技巧が現れます。はい、ワルツは私の作品です。ぜひ聞いて下さい。　音楽に生きることを決意した主人は、後に『音楽新報』という評論誌を出版し、音楽について伝えました。荒々しさで批判されたベルリオーズの『幻想交響曲』を評価したり、ショパンやブラームスを世に出します……あ、みんなパガニーニに深い関係を持っていますね。これは偶然ではなく、当時の音楽家なら影響を受けない人はいなかったのです。　パガニーニはそういう恩人でもあり、主人を駄目にした元凶でもあります。御存じの通り、パガニーニのヴァイオリンのテクニックは桁外れで、誰も後を追おうとはしませんでした。それでみんなピアノで一流を目指そうとしたのです。リストやショパンもそうですが、主人も同じでした。ピアノで一番上の主旋律を弾くのは右手の小指でしょう。ところが小指を動かそうとすると、薬指も動くでしょう。それを独立して動かそうとして指を縛って練習したのです。結果は……ご存知でしょう……他の指まで動かなくなってピアニストをあきらめるしかなくなったのです。それから管弦楽の作品に力を入れる様になりましたが、精神的にも病んで、だんだんおかしくなってしまうのです。　もう一人悲劇的な人もいたそうでわ。お聞きになりました……　　　※　　※　　※ウィルビー：パガニーニ・ヴァリエーション（パガニーニの主題による）　奇想曲第２４番による、吹奏楽のための変奏曲。管楽器の使い方が面白い。　ＪＪＢスポーツ・バンドの演奏を所有。ウェッバー：ヴァリエーション　『キャッツ』、『ジーザス・クライスト・スーパースター』等でお馴染み、ミュージカルの王者が、チェロ奏者である妹のために書いたもので、チェロとバンドのための作品。タイトルは単純だが、私のＨＰで『パガニーニの主題によるスーパー・ヴァリエーション』と紹介したら、レハールの歌劇を収録したＤＶＤの解説に、そのまま引用されていた。他の曲も当時は知られていないものや間違いがそのまま書かれており、解説者が私のＨＰから引用したものに違いない。因みに当時私が遊んでいた『パガニーニの主題によるウルトラ・ヴァリエーション』と対にしたいたずらである。　奇想曲第２４番によるもので、イントロから始まって主題が演奏され、ジャズ、ロック、ブルースなど、曲ごとにリズムを変えて行く。終わり方まで、ラフマニノフの『パガニーニ・ラプソディ』を意識したものに間違いない。　当然、ジュリアン・ロイド・ウェッバーの演奏を所有。ウルスナー：ラ・カンパネラ（編曲）　３台のアコーディオンのための編曲。リストの編曲からアレンジしたもので、ちょっとジプシー音楽っぽい。主題がゆっくり演奏されたり、３台のアコーディオンが絡み合ったり、変化に富んでいて面白い。　ホフナー・アコーディオン・シンフォニーオーケストラの演奏を所有。

  2017.02.22

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• パガニーニ伝：その33

  ３３：アルハルトの話　パガニーニがウィーンに来たときは大変だった。どこへ行っても人気沸騰というパガニーニだけに、やっかみもあって大変な非難を受けることになったんだ。　まずウィーンの批評家や演奏家はそごってパガニーニは駄目だと書き立てた。これまでも様々な嫌がらせを受けた経験のあるパガニーニだが、これほど大々的なものはなかっただろうね。君の時代で「テクニックに走って、中身のない作品ばかり書いた。」とか、「同じような曲ばかりなので他は聞くまでもない。」というようなことを書いている評論家がいたら、本当にきちんと聞いて書いているのかどうか、この時代の批評の受け売りじゃないかと疑ってみる必要があるね。とにかく技巧だけで内容はない、その肝心の技巧もごまかしのテクニックにすぎないと書かれている批評ばかりが横行したんだ。　新聞でも雑誌でも酷評ばかりが並んでいるのに、評判はどんどん上がって、入場料もうなぎ上り。当時新しい高額コインが出た。紙幣がない時代だからね。君の時代の日本なら十万円くらいになるのかな……それがパガニーニの演奏会の入場料と同じくらいなので、「パガニーニ・コイン」と呼ばれたほどだ。　一八二八年三月二十九日、最初の演奏会のオーケストラは、ウィーンにあるプロの楽団からオーディションで選ばれたオールスターで編成された。私もその一人というのが自慢さ。練習の時、パガニーニは楽器を持って来ないんだ。それで曲のテンポやソロが鳴っている時の伴奏について指示を与える。ソロが入るところ、オーケストラが入るところ、念入りに打ち合わせをした。特にカデンツァの最後は何度も何度もやり直しをさせてタイミングを合わせたものだ。タイミングといってもソロが弾かないんだからねえ。　当日はベートーヴェンの「レオノーレ序曲」で幕を上げた。次がパガニーニの協奏曲だ。軽快に序奏が終わったが、舞台袖からパガニーニが現れない。オーケストラが慌てたよ。そこで序奏をもう一度、とてつもなく早いテンポでやり直すと、黒ずくめの怪しいモノが出て来る。服は全て黒で、死人のような青ざめた顔に鋭い目が光る。リハの時は優しい雰囲気の男が、舞台ではまるで悪魔のように見えた。両足を大きく開いてヴァイオリンを構える。その長い足から、「真っ黒なトライアングル」というあだ名が付いたんだ。　いきなりとんでもないテクニックを見せつける。我々オーケストラだった初めて聞くのだ。びっくりするじゃないか。それからうっとりとする美しい旋律。もう、最初から最後まで、我々バックの楽団員までが感動の連続さ。　こちらもプロだから全部耳に入っている。後で思い出して演奏するが、指使いに無理がある。客席で音を拾って楽譜を書いた奴がいるが、それでも演奏出来ない。どうしても指が届かない部分が出て来るのだ。つまり、演奏不能……悪魔に魂を売ったヴァオリニストだから指が伸びて届くのだと確証を得たね。　八月まで、飛び飛びだが十回の演奏会が開かれた。全部満席。その後シューマンという若い作曲家志望のピアニストが話題になったなあ。家族がいるから話を聞いてごらん。　　　※　　※　　※一柳慧：パガニーニ・パーソナル（パガニーニの主題による）　奇想曲２４番による、マリンバとピアノのための変奏曲。打楽器学部出身で指揮者として活躍された岩城宏之先生に、マリンバを演奏させようという趣旨で作られた。内にこもって行く印象の多い（と私が勝手に思っている）作曲家だが、明快な作品となっている。一九八二年の作品。岩城先生と奥様の木村かをり先生の演奏を所有。ウィルソン：パガニーニの主題による変奏曲　奇想曲２４番による、４本のクラリネットのための変奏曲。楽器から楽器への旋律のやり取りなどが面白い。最後の変奏で８分の６拍子になり、ピアニシモですっと終わる終止部がおしゃれ。　クワトゥール・シャルモーによる演奏を所有。

  2017.02.21

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• パガニーニ伝：その32

  ３２：スレッタの話　パガニーニの話だね。とにかく金儲けがすごかった。出すのはケチケチで、どんな席でもほとんど客のおごり。全部懐にしまう人だったよ。　ああ、カジノ通いがすごかったという話だね。結婚、いや、同棲したのは知っているかね。アントニア・ビアンキという女性だったが、その頃のことだ。例によって莫大な儲けをカジノにつぎ込んで負け、遂にはあのガルネリまで抑えられたのだ。パガニーニは借金をして資金を作り、最後の勝負を挑んだ。これで勝ったからまだいいが、そのために全財産を無くしたといってもいい。ヴァイオリンが手元に残ったのがせめてもの救いさ。もちろんヴァイオリン一本でいくらでも稼げるからねえ。　この事件でようやく、きっぱりと博打から足を洗うことが出来たのだよ。同時に女性関係も全部清算した。恋は金がかかりすぎるからねえ。いや、もちろんビアンキと同棲したこともあったと思うよ。まあ、これでパガニーニは本物の守銭奴に生まれ変わることが出来たんだよ。めでたしめでたし。　あ、その先の話を聞きに来たのかい。その頃あの痩せた風貌で悪魔のヴァイオリニストという評判が立ち、それが更に人気を博すことになった。ビアンキとの間にアキレという子供が生まれた一八二五年頃には既にヨーロッパ全土に名前は広がっていたが、一八二八年にいよいよウィーンへ進出することになった。　ウィーンについては知っているかね。そう、音楽の都と呼ばれているが、昔からヨーロッパの音楽の中心はイタリアだった。フランスのナポレオンが音楽賞を作ったが、その名も「ローマ大賞」でローマへの留学が付いていた。ウィーンも同じで、モーツァルトなんか死んだ後奥さんが出した伝記で急に有名になったが、生前は大した作曲家ではない。宮廷の楽長だったサリエリが才能をねたんで毒殺したなんて噂もあって、あの失礼なロッシーニなんか、サリエリ本人に「本当ですか」と尋ねている。サリエリが殺すことなんてあり得ない。サリエリはイタリア人で、そうではないモーツァルトが楽長になったり、彼を越えることなんかできる訳がないのだ。モーツァルトは「アマデウス・ヴルフガング」なんて、イタリア人のような名前でサインするようにしたが、無駄な努力だったんだ。　そのウィーンを音楽の町と言わせるようにしたのがベートーヴェンだよ。彼はイタリアの音楽ではない、全く世界観の違うウィーンの音楽を生み出して市民の絶賛を浴びた。それからイタリア以外であってもウィーンは別格だぞという評価を得るようになったんだ。　惜しかったのは、ベートーヴェンが死んだのが一八二七年の三月、ちょうどパガニーニがウィーンに来る一年前のことだった。生きていたらベートーヴェンも影響を受けたのかねえ。パガニーニの方はここで初めてベートーヴェンを聞いてその素晴らしさに目を見張ったと言っている。パガニーニの作品が、単に自分のテクニックを見せるだけでなく、内容的にも深い物を求めるようになったのはその影響なのだろうね。　ウィーンの大騒ぎは歴史に残るから、ぜひ話を聞いておくんだね。　　　※　　※　　※今回からはパガニーニによる作品を紹介。。パガニーニの主題による作品、パガニーニのイメージから作られた作品、あまり関係が感じられないがパガニーニの名を借りたものなど、私が集めたもの。一部紹介しているものの聞いたことはないという曲も含まれるが、実際に普段聞いているものを基本としている。本に載っているという程度のものはカットした。クラシックは作曲者、ジャズ、歌謡曲などは演奏している人やグループの五十音順に並べてある。アウアー：奇想曲第２４番（編曲）　ピアノ伴奏を付けたもので、アウアー自身の演奏によるＳＰレコードがある。Ａ面に第７変奏まで、Ｂ面に残りが収録してある。両面の最初にイントロを付けているのだが、実際にはＢ面の序奏はカットして通しで演奏したのだろう。アラカーン：ＰＡＧＡＮＩＮＩ　ロックの作品。歌詞にも「パガニーニ」がちゃんと聞こえるが、曲はパガニーニとのつながりを感じない。

  2017.02.20

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• パガニーニ伝：その31

  ３１：古城の一夜（第二幕：演奏会）　パガニーニが演奏会を開くというので、著名人たちが席を埋めた。　その中でも人目をひいたのは、若き貴公子の姿であった。美しい女性を連れているが、その女性は暗い顔をしている。貴公子は人目も気にせずに彼女の手を引いて席へ向かうなど、献身的に世話をしている。「まあ、あんなにいちゃいちゃして……いったいどなたなの。」「ご存じないの。あれがカリゾ伯爵よ。お気の毒に。」「気の毒。」「そうよ。結婚してまだ三ヶ月なのに、奥様が病気になっているのよ。」「ああ、それであんなに甲斐甲斐しく世話をしているのね。でも、どうして。」「結婚して四日目に奥様が悪魔を見たというの。それからうつ病になって、ああしてほとんど口もきかなくなり、食事も喉を通らないんですって。それで気晴らしにって演奏会に連れ出しているそうよ。それでも効果はないらしいわ」「まあ、心配ね」「ね、奥様の様子、心ここにあらずって感じでしょ」「美しい人なのに……あんなに痩せこけて……見るも哀れって、こういうのかしら」　アレクサンドも妻を見た。妻の目はうつろに前を見ている。あんなに好きだった音楽会にも期待する様子が見えない。この様子を見ていると、本当に悪魔に取りつかれたとしか思えなかった。あの夜、嵐の夜に泊まった男は、本当に悪魔だったのだろうか……　今日の演奏会、パガニーニというヴァイオリニストはヨーロッパ中の話題になった演奏家だ。入場料も普通の演奏会の五倍という大変な金額を払った。妻はこれまでどんな名手の演奏にも興味を示さなかった。このパガニーニという演奏家も話題にはなっているが、妻の興味をひくだけの力を持っているのだろうか……半ば絶望的になっている自分を叱り付けて舞台に目をやった。　ソリストはいない。楽団と、今日は珍しく指揮者が付いている。　堂々たる序奏が鳴り響き、舞台に真っ黒な服の、痩せこけた男が現れた。激しい情熱的な演奏で、一気に高音まで上り詰めると、フラジオレット。続いて信じられないような重音の連続。観客の誰もが、あまりのテクニックに唖然としている。　アンニーナは演奏家が登場した瞬間にはっとした。この三ヶ月、忘れようとしても忘れられない……あの姿が目の前に現れたのだ。そして、この音……ヴァイオリンの常識を打ち破った、この音……思わず隣の夫を見て声に出していた。「あ、ほら、あの方ですわ。あの嵐の夜に家にお泊りになったのは。」　夫ははっとして妻を見た。何かに吹っ切れたように、昔と変わらぬ笑顔でこちらを見ている。思わず肩を抱き寄せて演奏の方へ目をやった。　パガニーニのヴァイオリンは、夢見るような旋律へと移って行った。　　　※　　※　　※MS122　二重奏　未詳MS123　未詳MS124～129　ヴァイオリンとギターのための６つのソナタ　パガニーニおなじみの２楽章のソナタ。　ドンの演奏で所有MS130　ヴァイオリンとバスーンのための３つの二重奏曲　軽快で楽しい曲が多く、二つの楽器をよく使っている。隠れた名曲。　アッカルドとゴネラの演奏で所有。MS131　未詳MS132　変奏つきソナタ　ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとギターというお馴染みの室内楽編成。　所有。MS133　６つのルッカ・ソナタMS134　６つのルッカ・ソナタ　未詳。ギターのための作品。番号なし　４つのスタディ　習作。ドンの演奏で所有。何なのだろうか。未詳。他に、　ヴァイオリンと管弦楽のためのソナタ　イ長調　「遺作」とされていて、第１楽章のみ。緩急の緩に速いコーダがついていた。ピアノ伴奏に編曲した録音を持っていたのだが、震災でデータが消えてしまった。MS番号でどこに入るのか分からない。　以上、パガニーニの全作品（分かっている限り）。次回からはパガニーニから生まれた作品を作曲家、演奏家の五十音順に紹介します。

  2017.02.19

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• パガニーニ伝：その30

  ３０：古城の一夜（第一幕：古城）　一台の馬車が嵐の中を駆け抜けて行く。　客席には荷物持ちらしい年寄りがトランクを一つ携えている。主人らしいのは顔色の悪い男で、御者は病人だと思ったが、乗っている間しっかりしていて、どこも具合が悪そうには見えない。気味の悪い客で、二人とも行き先を告げた後は一言も発しない。　御者の方では薄気味の悪い客を乗せたうえ、この雨風に難渋していた。嫌な気分で馬車を走らせていると、不安が現実となるものである。雨で車輪が滑るようになり、馬を止めても馬車は止まらない。車輪を止めるブレーキが利かなくなってしまったのだ。この先は崖が多くなり、このまま走り続けるのは危険だ。　御者の頭に浮かんだのが丘の上にある古城だった。何とかいう若き伯爵の持ち物で、普段は使っていないのだが、その伯爵が結婚したばかりで、新婚旅行代わりにここに宿泊しているはずだ。そこまでなら上り坂であり、ブレーキの心配もあるまい。御者は客に承諾を取ってそこへ向かった。　扉を叩くと、執事らしい男が現れ、すぐに若きアレクサンドラ・カリソ伯爵その人が応対に出た。御者が訳を話して二人の旅人を泊めてほしいと依頼すると、心優しい伯爵は喜んで引き受けた。　食事を提供し、御者を加えた三人を二階に案内して、伯爵と新妻アンニーナも部屋へ引き取った。「いったいあの方どういう人かしら。」「さあね。」「あの痩せたご主人らしい方、もう四十過ぎだと思うけれど、青白い顔で、それでいて美しい顔立ちなんですもの……それよりもあの目、奥でギラギラと光っているようで、何だか気味が悪いわ。」「何も心配することはないよ。僕がそばにいるじゃないか。」　夜になってもなかなか寝付かれないアンニーナ。ふと気付くと二階にまだ灯りがついている。客を泊めた部屋だ。　彼女は肩掛けをして部屋を出、灯りのついている部屋の前まで行った。ドアが半開きになっている。そっと覗くと、あの気味の悪い男が窓の外の嵐を見ているらしい。振り返った時、男の背中に稲妻が光った。目だけが光ったように感じたのは、錯覚だったのだろうか。シルエットの男はヴァイオリンを取り出して弾き始めた。その異様な音色……ぞっとするような高音、信じられないような二重音……彼女もヴァイオリンは知っている。しかし、こんな音を聞いた経験はなかった。　これはヴァイオリンではない、それでは何なのだ。　彼女は震える足を踏ん張って自分の部屋へ戻った。そのまま気を失って自分のベッドに倒れ込んだのであった。　　　※　　※　　※MS113　３つのリトルネィロ　未詳MS114　協奏的三重奏曲　ニ長調　２つのヴァイオリンとギターのための作品か。未詳。MS115　セレナータ　ヘ長調MS116　三重奏曲　イ短調　２台のヴァイオリンとギターのための作品。　パガニーニ弦楽四重奏団の演奏を所有。MS117　「ネル・コル・ピウ」の主題による変奏曲　イ長調　１８３０年頃の作か。グールガ演奏の様子を伝えるために記録した速記譜によって残された曲で、テクニックだけで芸術性はないとされていたため、ほとんど取り上げられることがなかった。１９８０年頃からようやく芸術性を認めて演奏する人が出始めた。無伴奏ヴァイオリンの曲集によく入っているんで５、６枚あると思う。MS118　２台のヴァイオリンのためのソナタ　未詳MS119　流れの果てに　未詳。ここから歌曲かも。MS120　未詳MS121　カンツォネッタ　ハ長調　ギター伴奏による声楽曲ということだが未詳。

  2017.02.18

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• パガニーニ伝：その28

  ２８：シャンドレの話　私ですか、ナポリの楽団でチェロを弾いています。ソロ活動もするんですよ。　パガニーニの話ですか。アントニアという女性との間にアキレという男の子をもうけたのですが、この頃色々な噂が飛び交いました。　演奏するパガニーニの後ろに悪魔が見えた、影が悪魔の形をしていた、宙に浮いて演奏していた……ここらまでは演奏会で大騒ぎになり、女性の失神客が相次いだのはご存知と思います。　下手なヴァイオリニストや歌手を、わずか数ヶ月で名人に育てるのも、悪魔の力を借りていると噂されました。　そこでアントニアという女性の関係も問題になります。彼女はかなり年上で、もう五十才になろうという年齢の高齢出産でした。年の差を考慮したのでしょうか、パガニーニとは正式に結婚していないのです。ローマ教会では、こういう「内縁の妻」というものを認めておりません。既に噂になっていた悪魔の力というものと合わせ勘案した時、パガニーニを教会に出入りさせることは好もしくないという結論に至りました。すべての教会への出入りを禁止したのです。それどころか、亡くなった後、墓地に埋葬することまで拒絶するのですから……教会のやることではありません。相手が悪魔なら、それを打ち破るのが教会の使命……そうじゃありませんか。　まあ、これは時間が経てば世間もそのうちに騒がなくなったことでしょう。それがどんどんエスカレートするようになっていくのです。　一八三〇年にヴェーバーが描いた石版画、翌年のジョルジョ・パッテンの肖像画、アングルのポートレートなど、実に顔立ちの良い男を描いています。その容貌が一変してしまうような事件が起こったのです。　ナポリでのこと、雨の中を到着し、休む間もなく演奏会が行われ、無理がたたってパガニーニが倒れてしまったのです。結核でした。宿の主人は、伝染病を恐れてこの病人をベッドごと外へ放り出したのです。たまたま私が通り掛かって町の人と一緒に助けました。この話がすぐに町に広がって、町の人たちで宿の主人を袋叩きにしたのです。パガニーニの命はとりとめたものの、元々痩せていたパガニーニはげっそりとやせ細り、病気の後青ざめた顔色は、悪魔に身を売ったという、まさにそういう顔つきになっていたのです。　私はその後も舞台裏で見ていますからね……実際にはそれほどでもないんです。噂を利用したというか、悪魔に身を売ったのならそう思わせた方が人気になる……そう考えたのでしょうか。それを利用して、まさに悪魔のヴァイオリニストとして人気を博したのです。体調を取り戻したパガニーニは、妻子を残してヨーロッパへの演奏活動を再開しました。知らない人の中には、その痩せこけた姿を見ただけでぞっとするっていう人もいたようですよ。　　　※　　※　　※MS111　デュエット・アモローゾ　（愛の二重奏）　ナポレオンの妹エリーゼに仕えていた時、昼はヴァイオリン、夜はエリーゼを演奏するのに大変だし、給料は安いし……というので、G線とE線の弦二本だけで二人の愛を奏でますとか何とか言って演奏したらしい。「導入」「願い」「調和」「内気」「歓び」「いさかい」「平和」「愛のしるし」「別れの知らせ」「別離」という男女の世界を、二本の弦それぞれが男と女になって演じる。エリーゼは自分に別れを告げるものだと悟って、腹が立って失神する。女を捜しても見付からず、次のナポレオンの誕生日を祝う演奏会で、弦１本で愛を語れ……つまり、二重奏を演奏しろと命じた。これを実現したのが「ナポレオン･ソナタ」という訳である。エリーゼはこの曲を聴いて失神、失神が癖になって、医者の勧めでとうとうパガニーニを諦める。　あまりに伝説的なので、本当かどうか……ということで、こんな後ろの番号をふられたのだろうか。本当なら1807年の作品ということになる。　無伴奏のヴァイオリンのメロディに左手のピチカートが伴奏をつけたりするのはいかにもパガニーニだが、伴奏をつけて演奏することが多くなっている。　パガニーニ弦楽四重奏団の演奏を所有。MS112　チェントーネ･ディ･ソナタ　「ソナタ集」くらいの意味で、ほぼ緩急の２楽章の曲、１８曲から成る。１から６までがよく演奏され、ＣＤでも売られているが、後はほとんど取り上げられない。ロッシーニのメロディによる作品もある。　作品２と３と同じようであるが、繰り返しをきちんとやるとやや長めの曲で、後の時代の作品という説もあるが、同じ頃のものという説もある。作品２や３とのカップリングで１から６までを取り上げることが多いので、７、８組の演奏を所有。テレシベのレコードは作品２、３、それに協奏的ソナタと大ソナタという３枚が発売され、その余白にチェントーネ・ディ・ソナタが入っているという感じ。２枚組のＣＤになった時に曲順をちゃんと並べての発売となった。レコードは日本でも発売しているが、ＣＤは日本で売っているかどうかを確認していない。尚、全曲録音をしているのはカナダのクラフト。他にあるかどうかも確認していない。

  2017.02.17

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• パガニーニ伝：その28

  ２８：シャンドレの話　私ですか、ナポリの楽団でチェロを弾いています。ソロ活動もするんですよ。　パガニーニの話ですか。アントニアという女性との間にアキレという男の子をもうけたのですが、この頃色々な噂が飛び交いました。　演奏するパガニーニの後ろに悪魔が見えた、影が悪魔の形をしていた、宙に浮いて演奏していた……ここらまでは演奏会で大騒ぎになり、女性の失神客が相次いだのはご存知と思います。　下手なヴァイオリニストや歌手を、わずか数ヶ月で名人に育てるのも、悪魔の力を借りていると噂されました。　そこでアントニアという女性の関係も問題になります。彼女はかなり年上で、もう五十才になろうという年齢の高齢出産でした。年の差を考慮したのでしょうか、パガニーニとは正式に結婚していないのです。ローマ教会では、こういう「内縁の妻」というものを認めておりません。既に噂になっていた悪魔の力というものと合わせ勘案した時、パガニーニを教会に出入りさせることは好もしくないという結論に至りました。すべての教会への出入りを禁止したのです。それどころか、亡くなった後、墓地に埋葬することまで拒絶するのですから……教会のやることではありません。相手が悪魔なら、それを打ち破るのが教会の使命……そうじゃありませんか。　まあ、これは時間が経てば世間もそのうちに騒がなくなったことでしょう。それがどんどんエスカレートするようになっていくのです。　一八三〇年にヴェーバーが描いた石版画、翌年のジョルジョ・パッテンの肖像画、アングルのポートレートなど、実に顔立ちの良い男を描いています。その容貌が一変してしまうような事件が起こったのです。　ナポリでのこと、雨の中を到着し、休む間もなく演奏会が行われ、無理がたたってパガニーニが倒れてしまったのです。結核でした。宿の主人は、伝染病を恐れてこの病人をベッドごと外へ放り出したのです。たまたま私が通り掛かって町の人と一緒に助けました。この話がすぐに町に広がって、町の人たちで宿の主人を袋叩きにしたのです。パガニーニの命はとりとめたものの、元々痩せていたパガニーニはげっそりとやせ細り、病気の後青ざめた顔色は、悪魔に身を売ったという、まさにそういう顔つきになっていたのです。　私はその後も舞台裏で見ていますからね……実際にはそれほどでもないんです。噂を利用したというか、悪魔に身を売ったのならそう思わせた方が人気になる……そう考えたのでしょうか。それを利用して、まさに悪魔のヴァイオリニストとして人気を博したのです。体調を取り戻したパガニーニは、妻子を残してヨーロッパへの演奏活動を再開しました。知らない人の中には、その痩せこけた姿を見ただけでぞっとするっていう人もいたようですよ。　　　※　　※　　※MS111　デュエット・アモローゾ　（愛の二重奏）　ナポレオンの妹エリーゼに仕えていた時、昼はヴァイオリン、夜はエリーゼを演奏するのに大変だし、給料は安いし……というので、G線とE線の弦二本だけで二人の愛を奏でますとか何とか言って演奏したらしい。「導入」「願い」「調和」「内気」「歓び」「いさかい」「平和」「愛のしるし」「別れの知らせ」「別離」という男女の世界を、二本の弦それぞれが男と女になって演じる。エリーゼは自分に別れを告げるものだと悟って、腹が立って失神する。女を捜しても見付からず、次のナポレオンの誕生日を祝う演奏会で、弦1本で愛を語れ……つまり、二重奏を演奏しろと命じた。これを実現したのが「ナポレオン･ソナタ」という訳である。エリーゼはこの曲を聴いて失神、失神が癖になって、医者の勧めでとうとうパガニーニを諦める。　あまりに伝説的なので、本当かどうか……ということで、こんな番号をふられたのだろうか。本当なら1807年の作品ということになる。　無伴奏のヴァイオリンのメロディに左手のピチカートが伴奏をつけたりするのはいかにもパガニーニだが、伴奏をつけて演奏することが多くなっている。　パガニーニ弦楽四重奏団の演奏を所有。MS112　チェントーネ･ディ･ソナタ　「ソナタ集」くらいの意味で、ほぼ緩急の２楽章の曲、１８曲から成る。１から６までがよく演奏され、ＣＤでも売られているが、後はほとんど取り上げられない。ロッシーニのメロディによる作品もある。　作品２と３と同じようであるが、繰り返しをきちんとやるとやや長めの曲で、後の時代の作品という説もあるが、同じ頃のものという説もある。作品２や３とのカップリングで１から６までを取り上げることが多いので、７，８組の演奏を所有。テレベシの演奏は、レコードでは作品２と３にこの最初の６曲、それに大ソナタと協奏的ソナタを３枚に収録して順次発売したが、順番を適当に入れ替えていた。ＣＤ２枚組にまとめたものでは曲順通りに並べてある。カナダのクラフトは１８曲全てを録音している。

  2017.02.16

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• パガニーニ伝：その28

  ２８：デルザの話　一八二〇年といえば、パガニーニがローマでロッシーニを支援した年だね。知っていると思うが、彼は以前にもロッシーニを助けたことがあり、二度目になる。今回は『マチルデ・ディ・シャプラン』という歌劇を初演することになったが、指揮者が倒れたのだ。そこに現れたパガニーニが全体の指揮をして初演にたどり着いた。そればかりじゃない。主演のリパリーニの独唱には、アドリブのヴァイオリンの伴奏を付けて二重唱のように歌い上げたのだ。このシーズンは大変な評判になったものだ。しかし、もともと台本がよくなかったから二度と取り上げられることはなかったねえ。　カーニバルで乞食になったのはこの時のことだ。ロッシーニは後にパリでパガニーニについて語っている。「パガニーニがヴァイオリン演奏に忙殺されて、全力で劇音楽の作曲に打ち込めなかったのは残念である。もし、彼がその非凡な才能を作曲に向けていたら、歌劇作曲家としてもイタリアの誇りとなっていただろう。　この後、体調を崩すことが多くなり、パレルモという所にこもって養生することになった。退屈でしょうがないので、暇つぶしに弟子を取った。基礎の出来たまあまあの腕前の者は相手にせず、練習をしても全く芽の出ない下手くそばかりを弟子にして……いったいどうしたのだろう。二ヶ月もすると相当の腕前の演奏家に仕上げるんだ。特別なテクニックを身に付けさせたのだろうねえ。　この練習曲に用いたのが『無窮動』とか『常動曲』とかいう、三十二分音符を休みなく弾き続ける作品らしい。パガニーニ自身は一秒間に十二音を弾いたそうだよ。それも、オクターブの重音でね。　歌手も育てた。あまり上手とは言えない歌手が、しばらくすると名歌手になってしまうんだ。　どちらも、実は悪魔の力を借りていると言われていたなあ。パガニーニが悪魔と契約していたというのは周知の事実だろう。　ヴァイオリンの演奏でも、客席で音を拾って譜面にするプロがいる。ところが実際に江そうしようとすると指が届く訳がない所を抑えているんだ。重音でも、指の長さが足りない。悪魔の力だから演奏が出来たんだよ。　そうして彼が四十歳の一八二二年、ベネチアでアントニア・ビアンキという女性歌手を世話している。彼女も下手で有名だったのに、半年ほど姿をくらまし、パガニーニと一緒に現れると名ソプラノと呼ばれるほどうまくなった。ところが、彼女はすぐに舞台に立たなくなった。パガニーニと一緒の時しか歌わないという契約をしたようだ。　二人の間に男の子が生まれたのが三年後のことだ。アキレと名付けられたこの子は、髪の美しさと目元までは父親譲り、口元は母親に似ていて、パガニーニ以上の美男子になることは約束されていた。　　　※　　※　　※MS103　マーチ　未詳MS104　ソナタ　イ長調MS105　マズルカ　ホ長調　以上２曲、無伴奏ギターのための小曲。　ツィガンテの演奏を所有。MS106　マンドリンのためのメヌエット　未詳MS107　３つの協奏的二重奏曲　未詳MS108　ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ　未詳MS109　カンタービレ　ニ長調　作品１７として出版された。ヴァイオリンのメロディが美しい作品で、ギターとの二重奏で人気が高い。ピアノ伴奏をギターに編曲したものらしい。　色々な演奏を所有。カラオケもある。MS110　６つの二重奏曲　未詳

  2017.02.15

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• パガニーニ伝：その27

  ２７：アモロ夫人の話　はい、パガニーニがドイツへ行った時の話ですか。私は人から聞いただけですが、大変だったそうですね。　入場料を倍にすると言い出して興行主や会場経営者が止めたということですね。それでも押し切ったんですよ。　みんなの言う通りでした。券売所で大騒ぎになってしまったんです。パガニーニはこれを聞いて、今夜の演奏会は中止すると宣告したのです。翌日、今度は安くなっているのだろうと思ったら、何と三倍の値段につり上げると言い出したのです。前日の騒ぎでみんな分かっていますから、二倍で騒ぎになったのに、三倍で切符が売れるものか……みんな呆れたそうです。　ところが、券売所は長蛇の列が出来ました。窓口で高いと文句を言う人がいると、後ろから「何やってるんだ」「早くしろ」「買わないなら出て行け」と声が上がるのです。　結局切符は完売、超満員の客は一人残らず満足して帰ったのです。　すべての演奏会は満員になりましたが、三回目くらいからですか。余りに素晴らしいテクニックで女性客が失神してしまったのです。それが噂になると、次の演奏会では十人の女性が、その次には三十人の女性が意識を失ってしまったのです。同時に男性客の方からは、影が悪魔に見えたという話が出てきました。演奏中にパガニーニの後ろに悪魔を見た。陰が悪魔に見えた途端に隠そうとしたのか、蝋燭がパッと消えた……というのを見て思わず声を上げる男性、それに気づいて女性たちが悲鳴を上げ、バタバタと失神するようになったのです。十数回の演奏会が予定されていたのに、五回目で中止となりました。　ええ、私が聞いたのはパガニーニがイタリアへ戻ってからです。失神と悪魔の噂はイタリアでもあっという間に広まりました。　ドイツへ行く前にも大変な人気だったのですが、帰ってからはそれに輪をかけた評判で、切符はダフ屋によって十倍二十倍になりました。それでイタリアでも最初からチケットを三倍で売るようになったのです。それでも売れて、とうとう普通の五倍の値段で売って、転売禁止を約束させたのです。転売されたものの場合は入場禁止、人に譲る時には会場に許可を得て、無償での譲り渡しの誓約書を書かせたのです。　そんな状態でも常に満員になりました。立ち見でもいいから十倍の入場料で入れてくれなんていう人もいたようですよ。　どこの演奏会でも、男性は影や背後に悪魔が現れるのを確かめようとしたり、パガニーニの足が舞台に付いているかどうかを確かめようというので、足を見ている人が多くなりました。女性は美しい旋律にうっとりとしたところへ悪魔のようなテクニックが来るんですから、失神が相次ぐのは当然じゃありませんか。　私ですか、もちろんです。パガニーニを聞いて失神しないなんて、女性の恥じゃありませんこと。　　　※　　※　　※MS88　アンダンティーノ　ト長調　未詳MS89　アンダンティーノ　ハ長調MS90　アレグレット　イ長調MS91　アレグレット　イ長調MS92　ワルツ　ハ長調　以上４作、無伴奏ギターのための小曲。　ツィガンテの演奏を所有。MS93　ロンド　未詳MS94　ロンド　ホ長調　（ロンドンチーノ）　無伴奏ギターのための小曲。　ツィガンテの演奏を所有。MS95　アレグレット　未詳MS96　マルチアとワルツ　イ長調MS97　アンダンティーノ　ハ長調MS98　シンフォニア　ニ長調　（ロドヴィシアのためのシンフォニア）MS99　アンダンティーノ　ト長調MS100　ワルツ　ハ長調MS101　トリオ　ハ長調MS102　アンダンティーノ　ヘ長調　以上7作、無伴奏ギターのための小曲。　ツィガンテの演奏を所有。ここではMS101をそのままMS100のトリオとして演奏している。

  2017.02.14

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• パガニーニ伝：その26

  ２６：ルチアーラの話　エルカルタの紹介されたのはあんたかい。ああ、俺も音楽企画をやっている。　パガニーニの話を聞きたいんだってね。とにかくパガニーニが出れば満員、立ち見も出るくらいだから絶対に儲かるしねえ。　そうそう、演奏会で一度だけ失敗があったな。　フェラーラという町で演奏をしたのだが、客の中にひどいのがいてね、口笛を吹くんだ。演奏会での口笛は非難の意味で下品とされているだろう。それで客席がざわついていたが、パガニーニは客が集中しないのでヴァイオリンで色々な音を出して見せた。　コンビニ、新幹線やサーキット……あ、これはマグナム何とかという日本の芸人だね。パガニーニがやったのは鳥の声、鶏の時の声、豚の鳴き声などね。　最後にロバをやった。これは口笛への返礼だ。相手を侮辱するときにロバを真似ると言う奴だな。ところがこれが大変な騒ぎを引き起こした。その頃、フェラーラでは周辺の町とのトラブルがあったんだ。それで他の町の連中が、フェラーラの人が通るとロバの真似をして罵倒した。そういう事情があったので、客が騒ぎ出して舞台に襲い掛かって来た。パガニーニは楽屋へ逃げ、床下に隠れて一晩過ごし、翌日やっと逃げ出し、僧侶に化けて町から脱出に成功した。彼は二度とフェラーラへは行かないよう注意していたよ。　俺が仕掛けたのはドイツだ。ミラノを中心とする活動で、フランスとイタリアでは知らぬ者のない演奏家となっていたが、ドイツでも、ミラノを訪れた旅人からの噂が広まった。それで、ミラノへ行ってパガニーニを聞こうというツアーを企画したんだよ。　いや、これは失敗だった。旅費にパガニーニの演奏会の代金、高すぎてとても払えないというので、結局中止になったんだ。　わしは諦めないよ。逆の発想をすればいいんだ。パガニーニを聞きに行くのが大変なら、パガニーニにドイツへ行ってもらえばいいじゃないか。イタリアの演奏家が来て、客が入らず、出演料で損をしたなんてこともあるが、パガニーニならそんなことはない。四五回やれば元は取れるが、あの人気なら二三回で儲けが出るよ。先のツアーよりはずっとお得じゃないか。　ところが、パガニーニがとんでもないことを言い出した。入場料は普通の倍にしろというのだ。君らの国では歌劇でも二万円くらいだろう。それを四万にするって言うんだ。千人の大ホールで四千万として、半分が会場費、管弦楽メンバー、裏方などのお金、もちろん俺の儲けもあって、出演料は奮発しても一千万だろう。それをパガニーニは一回の演奏で五千万だせと言ってるんだ。ドイツの関係者が驚くのは当然だ。「ドイツでは音楽はみんなのもの。こんな値段では暴動が起きても不思議ではありませんよ。」　って忠告した。そしたら……パガニーニはとんでもないことを言い出した。　　　※　　※　　※MS81　愛国的賛歌MS82　主題と変奏MS83　ヴァイオリン独奏のためのソナタ　イ長調　以上３作、無伴奏ヴァイオリンのための変奏曲。　ミレンコヴィチの演奏を所有。MS84　ギターのための３７のソナタMS85　ギターのための５つのソナチネMS86　アレグレット　イ長調MS87　ソナタ　ホ長調　以上４作、無伴奏ギターのための小曲。　ツィガンテの演奏を所有。

  2017.02.13

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• パガニーニ伝：その25

  ２５：エルカルタの話　音楽プロデュースをやっております。音楽界の企画が主な仕事です。　パガニーニの話ですね。彼は個人の演奏会はやっていますが、他の演奏家と一緒に舞台に立つのを毛嫌いしているように見えました。私も何度か誘ったんですがいい返事はなかなかもらえませんでしたよ。競演というのは二人の演奏家が技術を競い合って、勝敗を決めるのです。これが大流行していました。パガニーニはあれだけの人気で、その技術の高さが話題なんですから、万一負けたら大変ですよ。それで競演をさけているんだと噂されましたね。重音やフラジオレット、左手のピチカートなど、彼が作った技術はすごいが、古典的な音楽をやるとそういう技術が出せないから、下手なのが分かってしまうと言う批評家もいましたよ。　もう一説は、ケチで有名ですから、集まった収益を相手と折半するのが嫌だと言われていました。　私は、他の演奏家と競うことで自分の腕前を不動のものに出来るのだと説得しました。場合によってはこっそりボーナスを出してもいいと思ったんですが、そうならずにすみましたよ。一八一六年には何度も他の演奏家との競演を行いました。　一番話題になったのは、三月の相手、ラフォンヌでした。とにかく競演では一番人気で、九割以上の勝率を得ているんですから。あなたもお聞きになったでしょう、牢獄に入ったドラノフスキーがラフォンヌを破ったというのが話題になりましたね。監獄の中でヴァイオリンを許され、他にすることもないので練習を重ねていたといいます。ラフォンヌは油断があったと気を引き締めて、その後は数年間全勝を続けていました。勝負は、課題曲である既成の協奏曲、続いて二人で二重奏、最後は得意な曲を弾くのです。ラフォンヌが終わってパガニーニが登場すると、観客から声が上がりました。何とリクエストなのです。パガニーニはそれに答えて『魔女たちの踊り』を演奏しました。審査員は、こう評価しました。「音の艶、美しさは甲乙つけがたい。しかし、炎のような情熱と演奏技術の完全さにおいてはパガニーニの方が数段上である。」　シューポアとは競演という対戦ではなく、共演でした。パガニーニは何も感想は述べていない。シューポアは、「パガニーニの演奏法は、運弓法、ヴィヴラートの付け方等、間違いだらけだ。」と書き残しているね。後の評論家にもこれをそのまま引用する人が出るだろうが、我々には何の意味もない。だって、シューポアは自分以外の全ての演奏家に難癖をつけ、悪く書かない者がいなかったのだからね。　それから、ポーランドのリピンスキーとも競演したが、結局パガニーニは一つも負けなかった。その後のインタビューでパガニーニは、今一番偉大なヴァイオリニストはとき帰れると、必ずこう答えた。「一番上手なのは私だと思います。二番目はリピンスキー以外にはいないでしょう。」　　　※　　※　　※MS76　タランテラ　イ短調　管弦楽伴奏の曲が原曲だが、パガニーニ自身によりギターによる伴奏に編曲されている。ソナタの一部かという推察もあるが、管弦楽伴奏が原曲であり、リズムを中心にしているのでパガニーニのソナタと並べると異色に感じる。　原曲はアッカルド、ギター伴奏はテレベシ＆プランバウアーの演奏を所有。MS77　ロッシーニの「こんなに胸騒ぎが」による序奏と変奏曲　１８１９年の作品。作品１３として出版されたロッシーニ主題３曲の中の１つ。１８１５年に初演された歌劇「タンクレディ」のアリアが主題。序奏と変奏というパガニーニのスタイル。MS.番号でなぜここに入るのかよく分からない。　アッカルドの演奏を所有。MS78　ヴァイオリン協奏曲第５番　イ短調　パガニーニの最後の協奏曲で、ソロの楽譜だけが残っており、管弦楽の略譜と楽器や和音の書き込みが残る。未完成に終わったもので、息子のアキレが、この譜面をフランツォーニの所へ持ち込み、ピアノ伴奏の作曲を依頼している。１９５８年にモンペオリがオーケストレーションし、翌年グッリの独奏で初演されたが、そのまま埋もれていた。　第１楽章　アレグロ・マエストーソ　「ワルシャワ・ソナタ」の導入部を転用した序奏部が大変に印象的。ソロが登場してからはいつものパガニーニ形式。　第２楽章　アンダンテ・ウン・ポコ・ソステヌート　ホ短調　哀愁を帯びたパガニーニお馴染みのロマン的歌謡。　第３楽章　ロンド（アンダンティーノ・クワジ・アレグレット）　「ラ・カンパネラ」などと同じ、８分の６拍子の舞曲風主題によるロンド。　アッカルドの演奏を所有。MS79　マリア・ルイーザ・ソナタ　ホ長調　１８１０年、ナポレオンの二度目の結婚を祝った作品と伝えられ、題名はお相手の女性の名。３年前のナポレオン・ソナタと同じ、Ｇ線１本だけで演奏する、序奏と変奏曲という形式まで同じ。この結婚式で、ナポレオン本人は顔を見せず、周辺からの人気を失って行くきっかけとなった。　アッカルドの演奏を所有。

  2017.02.12

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