産科医療補償制度
現在妊娠中の方はご存知かもしれません。産科医療補償制度というものが始まりました。考え方としては「保険」でしょうか。平成21年1月1日以降の分娩に対して補償されます。なので、まだ実際にこの制度を利用した方はいません。産科医療補償制度ホームページより引用。産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児に対する補償の機能と脳性麻痺の原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ制度として創設されました。目的1分娩に関連して発症した脳性麻痺児およびその家族の経済的負担を速やかに補償します。目的2脳性麻痺発症の原因分析を行い、将来の脳性麻痺の予防に資する情報を提供します。目的3これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります。具体的には分娩に関連して発症した脳性麻痺と診断されたら、準備一時金として600万円、その後は20年間にわたって補償分割金として120万円/年の補償となります。今現在、病院・診療所は97.8%、助産所は89.7%、この制度の加入分娩機関です。補償対象分娩により次の基準を満たす状態で出生した児1.出生体重が2,000g以上かつ在胎週数33週以上2.身体障害者1・2級相当の重症児なお、出生体重・在胎週数の基準を下回る場合でも、在胎週数28週以上の児については、分娩に関連して発症した脳性麻痺に該当するか否かという観点から個別審査を行います。ただし、先天性要因等の除外基準に該当する者は除かれます。【具体的な除外基準】(1)先天性要因ア 両側性の広範な脳奇形(滑脳症、多少脳回、裂脳症、水無脳症など)イ 染色体異常(13トリソミー、18トリソミーなど)ウ 遺伝子異常エ 先天性代謝異常オ 先天異常(2)新生児期要因分娩後の感染症など 掛け金としては1分娩あたり30,500円掛け金は分娩費用に上乗せという形の自己負担ではありますが、今後出産育児一時金が3万上乗せになる予定なので実質的な負担はないということです。最近の年間出生数は110万人。双子ちゃん三つ子ちゃんも含まれるので、ちょっと減らして分娩数を約100万件と考えて、約3万円ずつの掛け金で、年間約300億円がこの制度のためのお金となるわけですね。この制度がうまく機能すれば、脳性麻痺のお子さんを持つ家族の経済的な負担は確かに軽減できそうです。病院に対する訴訟も減るかもしれません。でも「分娩に関連して発症した重度脳性麻痺」って診断が難しそうですね…。胎児心拍モニターとか臍帯動脈血のpH値などでも審査されるようですが…。医療機関の過失を証明しなくても補償金が支払われる仕組み(無過失補償)ではあるようですが…。ほんとに分娩に関連してるかの診断は難しいのではないかと思います…。先天異常が除外されるって、どの程度の先天異常が除外されるんでしょうか…。染色体異常(13トリソミー、18トリソミーなど)も除外対象ですが…、染色体異常で最も多い21トリソミーがなぜ挙げられてないんでしょうか…。補償対象に入ってるんでしょうか…。それとも「など」に入り、除外対象なんでしょうか…。登録は多くは安定期頃にします。その頃には特に異常がなく、その後の妊娠経過において例えば胎児の染色体異常が分かってる場合でも3万円は支払います。その赤ちゃんは補償されないと分かっているのに、掛け金は払う…。なんだか腑に落ちない…。それが保険というものなんでしょうか…。まだ約款を読み切れてないんですが、万が一死産となった場合は3万円はかえってくるんでしょうか…。厚労省の推計では「分娩に関連して発症した重度脳性麻痺」と診断されるお子さんは年間500~800人だそうです。多めの推計だそうです。準備一時金として600万円、その後は20年間にわたって補償分割金として120万円/年だと総額3000万ですね。ということは単純計算では1000人まで補償可能なんですね。余剰金はどうなるんでしょうか?まぁ脳性麻痺発症の原因分析などなどに使われるとして…、それでも余剰はありそうですが…。まったくもらえないよりはいいでしょうが、3000万円で本当に脳性麻痺のお子さんが成長して行く上で必要なお金をまかなえるとは思えません。多めの推計で500人であるなら、倍の6000万円の補償も不可能ではない気もします…。この3000万円を受け取るからといって、医療訴訟を起こしてはいけないという決まりもありません。むしろ3000万円では少なすぎるという訴訟が起こる可能性もあります。まぁ長いことうだうだ書いてみましたが、現時点ではこの制度に少々疑問を抱いています。いろいろ産科医療補償制度について調べてみましたが、反対の産科医も多いみたいですね。もちろん賛成の産科医もいます。実際に来年1月を過ぎて、どのような症例が補償され、補償されないかが分かれば疑問も解消されていくかもしれませんが。