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2005.03.25
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テーマ:たわごと(26897)
日本と欧米の文化の違いは、いたる所で見られるが、僕が普段仕事をしていて一番感じる点は、契約に対する考え方の違い。

僕の会社は、外資系コンサルティングファームとの提携関係が長いせいか、グローバルの基準に合わせて契約書の雛型ができあがっている。

しかし、実際に契約を結ぶクライアント企業は、殆どが日本企業。
グローバルに展開している企業だけでなく、ローカルな企業もあるし、親方日の丸系企業もある。
こういう日本的企業との契約では、欧米との契約に対する考え方の違いがはっきり表れるので交渉に大変時間がかかる。

日本と欧米の主な違いは以下の2点のように思う。
(1)トラブル発生時の取り決めの詳細度
(2)売り手・買い手の平等さ加減

欧米型の場合、何かトラブルが発生した場合、誰にどのような責任があり、どの程度の賠償責任があるか、事細かに記述する。
一方、日本型は、曖昧で漠然としており、双方協議により解決するような記述が多い。

また、欧米型は、売り手と買い手は互いに平等な取引(GIVE&TAKE)をしていることが前提であるから、責任に対する考え方は平等であるし、売り手側に無茶な制約まで求めない。

一方、日本型は、買い手に都合良くできている。
例えば、何か相手に損害を与えた場合、欧米型は、甲(買い手)、乙(売り手)共に、契約金額を上限に損害賠償を限定する場合が多いが、日本型の場合、甲(買い手)にはまったく賠償責任がなく、一方、売り手の賠償責任を限定しない場合もある。(さすがに、こういうケースは少なくなっていると思うが)
また、プロジェクトの成果物(報告書や仕様書等のドキュメント)の著作権や当該プロジェクトにおいて生まれたアイディアの知的所有権を、すべて買い手に譲渡するよう書かれていたりする。
以前、同種のコンサルティングを他社に行ってはいけないということを要求する会社もあった。(これはさすがに断ったが)

双方の考え方に大きな違いがあると契約交渉は大変時間がかかる。
冷静に交渉できれば、まだ良いが、たまに、こちらが作成した契約書ドラフトの内容や修正案について、感情的になり、怒ってしまうクライアントがいるので困る。

欧米型の契約書は、問題が発生しても裁判にならないよう、起こりえる様々なリスクに対して取り決めを書く傾向がある。
例えば、瑕疵に対する責任も、ケース別に事細かに責任範囲を記述する。
日本の場合、今まで裁判は殆ど起こらなかったので、こういうことが馴染まないようだ。
そのせいか、こちらが作成した契約書ドラフトに対して、クライアントから「こんなこと起こり得るのか?」と怪しまれ、怖い顔で追求されることがある。
(欧米では滅多に起こらないトラブルについても、リスクヘッジのため、契約書に責任範囲を記述する場合が多い)
日本の企業社会の場合、何か問題があっても裁判までは発展せず、売り手が殆どの責任を負い、決着するケースが多いので、細かく書くことが不自然に写るようだ。

僕は、欧米流が一方的に良いとは思わない。
僕も日本人なので、欧米型の契約については、「何もここまで取り決めは必要ないのでは?」と思うこともあり、ときには自分の会社の法務部と議論し対立することもある。
僕の会社の法務部トップは、ある分野で独占的なシェアを持つ外資系ハイテク企業の出身者なので、殿様商売に慣れてきたせいか、無茶苦茶強気。(手ごわい)
法務部の案を見て、日本の企業社会の中で、ここまで売り手が主張しては、商売にならないと思うこともある。
しかし、法務部門の審査が通らなければ、契約は結べない。
クライアントと法務部との間で板ばさみになることも、しばしば。(これは結構辛い)
まぁ、これをうまく調整し、合意に持っていくのがプロのビジネスマンなのだが。

日本もグローバリゼーションの波が押し寄せて随分経ち、欧米流の制度が次々とできあがっているが、まだまだ多くの日本人は、経験が浅く、頭の方がついていってないように思う。
今後、ライブドアvsフジテレビ問題のような企業間の紛争はますます増えていくだろうから、明日はわが身と心の準備をしておかないと大変なことになるかもしれない。

僕もお陰様で今まで裁判には縁がないのだが、この先無いとも言えない。
心を引き締めてリスク管理をしなければと思う次第である。

いずれにしても契約とは最低限の約束。普段の仕事の中でクライアントと信頼関係を築くことが最高のリスクヘッジであろう。(やはり僕も日本的?)





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最終更新日  2005.03.25 19:37:36
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