Once in a Blue Moon

『退院して3週間目には、再入院して抗癌剤治療を再開しましょう』

私は医師から告げられていた。

2週間の内に『告知』しなければならない。

そして、『抗癌剤治療』を再開することを告げなければならない。

まだ、告知の方法も告げる内容も決っていない。

と言うより、いくら考えてもわからない。

がん患者に関する資料や体験記を調べながら迷っていた。

お袋は本当に真実を知りたかったのだろうか・・・？

真実を知ることで、周囲に対する疑いの気持ちは晴れるかもしれない。

しかし・・・

真実を知ったとき、その苦しみに耐える力はあったのだろうか・・・？

寿命と言うタイマーが切れることを知ることで、何が生まれるのだろうか？

俺との関わり方は、もっと別のものになっていたのだろうか？

うっすらと記憶にある言葉・・『お母さんは、もうすぐ死ぬよ』

『お袋の死』想像できなかった・・・

でも、自然に涙がこぼれた・・

『お袋の死』を考えたくない・・・

『嘘』であった欲しい・・・

いつまでも『生きていて欲しい』・・・そして話がしたい。

このとき、俺とお袋の間にも壁ができてしまったのだろうか・・・？

俺は何も変えなかった・・・・

見舞いに行く回数も・・・そして、会話も・・・・

『精一杯、生き抜いて欲しい』・・・

俺にとってお袋がどこで暮らそうと関係なかった。

お袋に合えて、話ができれば、それで良い。たぶん・・そう思っていた。

来週、親父の家に言って

真実を伝えよう・・・

何も隠さず、そして、作らず・・・

『治らない病気』とは上手く付き合って行けば良い・・・

こいつは、俺たち家族に嫉妬しているのかもしれない・・・

こいつが、いなければ『気付かない』ことが、たくさんあった・・・

こいつも、俺たち家族に『絆』を与えてくれた・・・

こいつを、家族として受け入れてやれば良い・・・

＞＞＞＞＞　つづく

親父と息子のがんとの戦い～実の母親のメッセージ～（５）