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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2019年05月10日
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カテゴリ:山本勘助
山梨歴史講座   山本勘助100話

   山本道鬼入道(勘助)百目録聞書 引用史料『甲斐志料集成』

 《筆註》 本分は一貴賤老若……のようになっているが、引用など便宜的に
  連番をつけた。また句読点や難字を口語にした。
 1、
 貴賎老若倶に朝目の覚何程おそしともむつくと起る事大にあしく、先仰向に
寝直り両足を踏揃左右の指をかがめ両の手にて胸より臍の下迄寛々と度々撫お
ろし、丹田を(臍より三寸下也)しかと押へて後に起あがるベし。如是すれば
其日いか様の異変にあふても胸突狼狽の事なし。毎朝の癖とすべし。

 2、
 枕を離れて寝床の上に安座して其日の用事を心にふくし、前後次第を分別し
て床を出づべし。

 3、
 寝床より出て妻子下人我心にそむきし事有とて怒り高聲に呵責すべからず。
夜中休め置きたる陽気を早朝に折きなば、終日陽気全からず心中迷惑ゆへ病を
生じ身にとつて損多し捨てがたき事たり。其先は喰後迄も堪忍上下食事終つて
後心を和らけ僉議すべし。萬事こらへ情なきは気随の其敷也。

 4、
 朝飯前口中へたまる唾(さんずいに垂)をみだりに吐出すべからず。夜中溜
またる津液なれば日是一身の潤いにて大切のもの也。幾度も呑入れてよし。但
し痰なれば吐出すべし

 5、
 朝起出て手水より前に千歳光と云目薬を用ひ養ふべし。塩をわづか口中へ含
みてぬるき湯か水かを含みて眼中を能潤すべし。老ても瞳の精血かわらずたと
へ流行の病眼邪気を排ひ、瞳の精たしかにて徳多し。鎮西府にて百四十才の唐
人口傳せし也。(勘助西国修業の折から受し傳と云)

 6、
 朝嗽手水して宗廟の御神々産神を祈念し天恩地恩父母の恩夫天恩は昼夜日月
の運行明暗を知る。随時風雨に萬物生長し又地のは我住たき地に住居して五行
を自由にし、五穀を以て身命を相続す。地恩広大也父母の恩を思ふに毎朝前へ
出て安否を何ひ食事の好嫌を聞合せ夫々孝養を尽すべし。父母の死後には霊前
へ向て生前に物云如く幼少より長ずる迄、海山深高の恩を報ぜすして別れたる
残念を申訳し香花燈明茶其を霊前へ手づから備へ手向べし。人多く仕ふ共他の
手にかけさすべからず。如是死後わすれす厚恩を運ぶ時は我身を終ふる迄冥加
に叶高運也。冥加の二字闇より加ふると書也。爰を以て辯知すべし。

 7、
 髪月代は朝飯前に手早くすべし。公私の急用に付て他出其外共差支へず。喰
事は立ながらもしたゝめ安し是人の嗜と云也

 8、
 毎朝我指料の腰の物を改め見るべし。祓うに口しぶらば其日は用心すべし。
 又中身に汁をかく気色あらば、終日禁足して他所より人来るとも対談すべか
らず。中身に汗をかくは我身に災の有を告ると知るべし。白刃を刃と云を以て
考へ合すべし。

 9、
 朝夕とも食事に向て心得あり。何程富貴なり共料理の精麁□(土偏に上に鹵
に下に皿)梅の淡濃心に応ぜず共慎で喰ふべし。前にも云天地の恵み心を信に
いただき認むべし。凡人と生るより一人前毎に食事を宛行ふ、是を天禄と云
也。此心なく奢に任せて美味味を好む人は初何ほど福徳有るの身たり共、終に
貧窮す則天道の照覧に背く故也。

10、
 貴賤ともに家居心に叶ずとて無益の普請造作に金銀を脅すべからず。此古語を思出して口ずさむべし。
   人雖食不過一升米 座三尺寐以六尺足

11、
 他出するに何程急用たり共周章べからず。先支度して心を落つけ座につき茶
にても飲胸より下腹へ撫下ろし呼吸を得と定、用事の差別を分別し静に座を立
左りの足より踏出すべし。左右二足四足もゆるゆると歩行夫より欠走りてもよ
し。かくの如く常に心懸れば途中行先にて不慮の変事有りとも心気動転せず、
都て益多し。

12、
 往還途中群集興ある事を見物する共立寄足を留めまじ。込合ひ鞘當の論まゝ
有こと多し。口論募り刃傷に及ぶ時は人留の糾明に遇ひなば、其日の用事も欠
け主人には是より見限られ、一生立身出世のさわりと成也。都て往来し気を配
るべし。

13、
 途中にて召れたる下人、返り違ひに他所の人と口論に及ぶ時、主人も下人と
一同して先の相手を云すくめんと言葉戦ひ以の外あしく、終には登り詰め是非
を捨置打果すより外なし。論じ合むづかしと見ば、先我が下人を呵り遠のけ面
を和らげ耐忍し給へ奴は、急度呵り申就べしと宥め和らぐ時は先の相手も是を
しほとして立別れ無事に事済也。見聞人有とも強弱といはす堪忍の上手人と云
べし。

14、
 途中にて知らざる人口論するに、一方は柔和一方はいかつに見へはたにて笑
止に思とも卒爾に扱ひ扱ひに不可入。若見知りたる人にて見遁し成たたくは、
最初より近きに徘徊せし人に口論の発端互ひの問答委細様子を聞合て扱ひに入
べし。尤主人持たる人、親ある人は立寄らず。見遁しにするも是則忠孝の道を
守るにして非強とは云べからず。

15、
 途中にて牛朽の間を往べからず。殊に荷つけ馬糞を付けたる馬とは前後拾間
も隔たり往べし。分け馬はものに驚くこと早し。其時糞荷を振散し我身にあび
ても畜類の事なれば詮方なし。一つには不慮の怪我しても是非無也都而往来に
可心得也。

16、
 往来は猶更在宿たり共科人行過ぎを時目見合すべからず。罪人は死刑に迷ひ
正気転変する故あれこそ知る人にて罪科の次第を知れりなどと忘語ことあり。
其時は役人不捨置糾明する也。勿論云抜けする共見聞人の口は塞ぎがたし。主
人あるものは、是より疑を蒙る也。是妻子下人にも能申ふくめ置可申也。凡て
災難に逢ふ時節到来とは甚僻事なり豫め慎心得有る人は不慮の災難を受ること
なし。

17、
 狭き小路又入ごみの場にて鞘当あること常也。後を振返り咎めべからず。互
ひに云募る時は刃傷に及也。たとへ切勝たり共堪忍の無き偏僻の士也。心有る
人は笑止に思ふ也。程克く挨拶し足早に往べし。

18、
 行列勇々敷押行とも老人と小兒は馬を傍へ寄せ列を押行べし。
 (此下解しかたし)

19、
 暦の中断にきこと有日は本字鬼劫とて隠形の鬼神人を却す日也、他出なさば
前に暦を見て此日は山林谷間の幽地人通り小き所を通るべからず。必鬼神邪気
犯さるゝ事あり叉病を受て治し難し。

20、
 中春の節は二月中也。此頃川端を通るに魚水を離れてはね廻るを見て何心な
く取て喰べからず。中春の節は獺天を祭りて魚を備ふる也。其心なく喰する時
は天の罰を受て煩ひ付也。快気せすと云

21、
 往来の人途中にて人をゲ討て欠込み圍ひ給はれと頼とき、武士役と心ひ穿鑿
なくうかと圍ふべからす。得と子細を尋べし。君父の敵を討しや、又は私の遺
恨有ゆへか口論よりのことかを糺すべし。君父の仇を報じて討たりとあらばか
くまふべし。私づくのことならば圍ふべからず。自他ともに大切の命人を害し
迯退は己が命を全ふせんとの心は武士道の本意にそむけて甚尾籠也。其次弟に
より場所を去らず腹切て果べきを立退来るは非強至極也。圍ふべからず。

22、
 買調ふ品有て市店へ行主人か男共不居して女の居る家へ立寄りいか様愛相会
釈する共上へ揚り座すべからす。調ひものゝ用事辨ぜば立去るべし。尤畿内洛
中等は猶更慎むべし。繁花の場所は悪者の多く集り難題を工み云懸れば也。

23、
 夜道に知られざる女の同道を頼とも伴ふべからず。又知る人たりとも心得あ
るべき事也。夜道に及ぶべき用向何故の事にや。荒かたせんさく有たし。男壮
年には柔弱の心より戯れの言葉より横変の災有もの也。
   
24、
 他所は勿論我家にても酒食にむかひ改もせず、其儘飲食いたすまじ先品々の
色合匂ひを心付べし。常に変わる色嗅気等有ば必食べからず豫毒を防。
規云、水にても茶にても酒にても呑む時我か顔の写らざるには必ず毒有と云。
自然水気ににごれる白気ある故顔うつらず。因に云船に乗るまぎはに小便をし
て色合を見るべし。濁れる色あらば乗まじ、小便清けれは子細なしと聞く。

25、
 他所はより帰りたる時すみやかに家内へ入るべからす先づ我が構ひの屋敷四
方八方へ心を配り巡見すべし。破損の場所あらば早く修復すべし。主人斯心付
は家内の上下油断なし萬事益多有る事也。

26、
 在宿の安座無益の雑談酒興遊興に夜を深すべからず。寸暇春夏は五時、秋冬
は四時を限り家内の男女残らす寝させ、主人は跡に残り第一火の元よりよりを
巡見し寝所に入るべし。男女召仕多しとも自分の役とすべし。

27、
 寝所に入る前厠へ行、両便の間其日の用向忘れたる事無し哉より心に繰出し
若忘却の事有は直様書留枕元に覚置明日最初に埒明べし。

28、
 寝所に入前に庭へ出風は何方より吹くぞと心得て寝るべし。夜中近火の節足
弱の老少財宝等の始未風の模様によりて指図有べし。
 規云闇夜大火の時女子供を逃がすに闇き方々へ逃る様に教ゆべし。道に迷ひ明るき方を當に往ときは火に近づく也。烈風の時は猶更道路に迷ふもの也。楽
鑵なり土瓶なり水を入て持行べしと古老の語りき。

29、
 表裏の口々へ用心鈴を忘るべからず。糸にて戸へ懸下べし。又寝所の入口は
我枕の通りへひきく釣べし。尤鈴の懸はづし成丈ケ自分すべし。

30、
 寝所へ入て日記を留べし。無益の様に見ゆれど自他ともに萬事失念有て、争
ふ折柄日記を見出し記有る時は其疑を晴したしか成證文落着するなり。尤其日
々の晴雨を記すべし。

31、
 夜寝るときにも、前に云朝の如く胸より臍下丹田へ寛く撫下し、陽気を納て
寝べし。夜中変動有りても迷惑せざる益有り。

32、
 枕は木枕をすべし。臥す具は袖のつきたる夜着を用いず布団々着るべし。袖
夜着を着ては不意に上より押へられたる時身をぬけがたし。蒲団ならば上下左
右へぬけ安し。

33、
 毎夜夜半に屋敷内を見廻るべし。下人の臥所燈火等を伺ふべし。若他所の者
入交じり居らば追ふべし。手前下人は翌日異見すべし。深くにくみ非を出す時
は却て夜盗の手引等する也。主命背き異見を用いずば手打にすべし。
 規云此手打戦国の折柄なれば左もあるベし。治平の御代の時ならば身の害な
るべし

34、
 夜分枕元に腰の物を置に心得有下ケ緒々寝床の下へ引込置べし。指添も下緒
を枕の下へ敷入りべし。自分の指物にて害せらるゝ時は末代迄の恥辱、子孫迄
悪評消がたし。

35、
 手鎗は穂首石突を細き糸にて結び下ケベし。異変有時起ながら糸を引切提出
るに手廻しよし。

36、
 夜毎枕尤に置ベき品々乾飯一袋、烏目員数心任せ、梅十ケ袋に入べし。樫ノ
六尺棒、突へし、草鞋二足程、右之品々常には無盆の様なれ共、公私の急用戦
国治世なるとも遠方へ過急の用向出来しても周章することなし。俄に支度する
に及ばす。

37、
 常に香仁を細末にして懐中すべし。自他共に病犬にかまれし時早く疵口にぬ
るべし。犬にかまれ捨置は災の元也。
   
38、
 又貝母を細末にして持べし。鼠に呀れ又は爪にて疵を付られし時早くぬるべ
し。又鼠尾草をかげ干にして煎じて呑べし。犬鼠の毒は一命にかゝる也。

39、
 他の者と手前の下人と若口論の上互に言葉つのり白刃を交て刃傷に及ぶとも
主人抜身にて切分るは悪し捧を持て打分べし。

40、
 旅行するに撰可同道人
  朝寝好人 近道を好人 大酒を好人 美食好人 女色好人 
 威晴成生れの人
  短気成人 我慢強き人 言葉咎する人 夜道好人
 付而云、猶此餘有べし。規及間一眼黙みに菊座の姉く赤き筋有る人自然工み
に見へる悪相の人旅の同道はすまじと。
 右は楠正成早瀬右衛門を鎌倉へ間者に下す時、手前何程慎でも必意を背き事
遂ず夫が為に難義すること有と教訓せし也。

41、
 海川に臨て渡賃をかれこれ惜み時剋をうつすは悪し。一寸の間に風雨の大変
有は不得止事逗留して用向後れ迷惑するもの也。

42、
 駅馬に荷物を付下す時、下人計りに任せず自分能く見分すべし。馬借は正直
にても道中は灰賊之廻り心切に見せて手傳掠取同類江手早く渡し隠るゝ也。

43、
 道中泊宿を取るに心得あり。心安きを取得として宿外れの小家に泊るべから
ず。極めて悪當の落今集る處と知べし。駅の真中の宿を泊とすべし。

44、
 泊りの宿につかば其旅装束のまゝにて立廻り見所は束西南北より庭口雪隠裏
庭等抜道座敷間取萬事胸に心得べし。是火事地震盗賊の為也。

45、
 何れ泊宿にて床の間の懸物あらば立寄掛物をまくり楊後ろを能く改め見るべ
し。又押入等も襖を明て見るべし。板壁に切抜の穴ひよわき板壁等いぶかしと
見ば少も驚かず扨急用を思い出したりとて食事を急ぎしたゝめ駅馬に荷物を付
させ夜に入ても立出二宿も行過て泊るべし。
 此あやしき一事は手前家来にも語るべからず。宿にて推量する時は却て災の
発る事有也。往還の横道又山家の旅宿には如是場所有事也。

46、
 旅行の前に用心鈴(四つ・五つ)又竹(釘十本程)用意すべし。泊布我寝所
入口々へ右の竹釘を打鈴を糸もて釣し置べし。目さとき人にても旅の労に神心
たよわく成也。

47、
 泊宿大家にて座敷穂広くとも壁際戸障子襖際江は寝べからず。外より殺害の
災有もの也。宿のもの寝床を敷取とも跡にて自分取直すべし。座歎の広くとも
先は眞中へ寝べし。働き自由也。

48、
 宿より燈を消へざる様にさし置とも自他の輩寝しづまりて後燈火を吹消すべ
し。是は利有て害なし

49、
 何程急用の旅行なりとも上下三人迄は余り未明に立べからず。灰賊強盗共朝
立小人数の旅人を待伏する事あり。たとへ切抜るにもせよ。此方に手負之者出
来る時は引合に相成又関所番所に而引留られ用辮のさまたげに成也。とかく旅
宿屋にてはいか程早くとも旅人を立せさへすれば、用向済事故不実の宿屋多
し。横道は猶東也。東の白むを待べき也。





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最終更新日  2021年04月21日 17時46分03秒
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