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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2020年06月09日
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カテゴリ:松尾芭蕉資料室

芭蕉連句集 『芝肴集 その一』 山梨歴史文学館

  

昭和三年『日本俳書大系』 神田豊穂

一部加筆 山梨歴史文学館      

 

芭蕉連句集 解題 

 

明治以後非文學的の見地から連句の進展を阻止されて、芭蕉の中心芸術である連句の研究も閑却されて來たが、其の研究を促進する第一階梯として芭蕉建句集の定本を提供する為、特に努力して一巻毎に小解題を設け、所載俳書名及び作の年代を挙げて、興行の場所・異本の有無に就いて説明して置いた。

 百韻は表八句、初裏・二表・二裏・三表・三裏・名残表各十四句づゝ名残の裏八句で成立する発句の一形式で芭蕉は延宝時代に多く試みてゐる。

古式百韻一巻は表十句・名残の裏六句である。

 歌仙は芭蕉連句の本位で蕉風開発の後は全く歌仙式に準據してゐるといって好い。表句、裏・名残表若くは二の裏六句づゝ、名残の裏若くは二の裏六句を以て一巻となるのである。

 百韻未満は百韻と同一形式でその句数の百韻に達せざるもの、及び世吉と称して四十四句を以て成立するものを収めてある。芭蕉の試みた連句の形式としては其の例に乏しい。

歌仙未満は歌仙の三十六句に満たざる巻で、その半数十八句のものは半歌仙又は十八公として一形式をなしている。

芭蕉は晩年頃の形式の簡単ならを喜んで、比佼的多くの作例を残している。

 表・第三・附句の表は百韻又は歌仙の表のみにて完了するもので、これを表合せと称しているが、その数に満たざるものをも収めてある。

第三は発句・脇・第三の三句の場合をさしたので歳旦の三ツ物に準じてよい。

附句は長短二句のものを稀し、前句附をもこの中に含めてある。

 

この三吟・二百韻に『芭蕉翁俳諧集』には各一折を採り、延宝天和年中の作とあるが、『一葉集』には延宝六年秋と推定して居る。

作者の一人、似春に小西氏、その著『芝肴集』に収めて出板した。

枯魚の校本『芭強翁俳諧大仝』ぱ『芝肴集』より再録し、『一葉集』に其の引用書か挙げて居ない。

本文は大体枯魚の校本によりて『一葉集』『補珍炒』を以て校合した。

  

芭蕉連句集 『芝肴集 その一』 山梨歴史文学館

  

昭和三年『日本俳書大系』 神田豊穂

一部加筆 山梨歴史文学館      

 

連衆 桃青 似春 四友

 

於四友亭興行(芭蕉=桃青)

 

須磨ぞ秋志賀奈良伏見でも是は   似春

    ほのぼのの浦さし添へてつき  四友

沖の石玉屋が杣の霧晴て      桃青

    足きられてや鴈の啼らん     ゝ

山颪小柴の蔭にさつと吹      似春

    白雲軽き手水手拭ひ       ゝ

紺浅黄鹿子交りに桜咲       桃青

    ふもとは藤のつゞら明行     ゝ

盗人と三笠の春や呼ふらん     似春

    火付の野守とらへられたり   桃青

草薙の風公儀より烈しくて     似春

御宿老には白髯の神      桃青

置頭巾額に疊む漣や        似春

    洲崎の松のひとり狂言     桃青

てうち手討ち真砂の鶴の子を思ふ  似春

    綖の絲に撥通ふらむ      桃青

叉や来る酒屋門前の物もらひ    似春

    南朝四百八十目米       桃青

芳野山乱れて武士の世也けり    似春

    波こす岩を切つてのはつての  桃青

  花の庭月の夜嵐ねめ付て      似春

    青柳弱き女坊あなづる     桃青

  血の道気うらみ幾日の春の雨    似春

    胸の煙に捜す荼袋       桃青

朝飯の待間ほどふる我戀は     似春

    時雨の松の鍼立を呼ぶ     桃青

お夜詰めに這まつはりし蔦蔓    似春 

寝まきの月はいたう暗きに   桃青

焼亡や褌さはぐ秋の風       似春

芦の丸家にうつけ有けり    桃青

うら千鳥踏れて帰る浪の音     似春

さし出の磯に住む天邪鬼    桃青 

(註 山梨 差し出も磯)

甲斐が根や須彌の麓に分入は    似春 

(註 山梨 甲斐が根)

 日上人の影てらす也      桃青

    (註 日蓮)

瓦燈の灯洩らぬ窟に小夜更て    似春

    神代の鼠まくら驚く      桃青

  明ぬれば萩原どのゝ鶉なく     似春

    かぜに芒のぬるい若當     桃青

お使に行とも秋の果所なき     似春

    二問ほどかく文箱の露     桃青

宿の月やりてや鞘をはづすらん   似春

既によし原の合戦破れし    桃青

流行唄さすが名を得し其身迚    似春

    丁椎小坊主男業平       桃青

ひや飯を鬼一口に喰てけり     似春

    是生滅法生姜梅潰       桃青

煩悩の夢を覚して棚捜し      似春

    冥(くら)きに迷ふ道は紙燭で 桃青

くちをしの花の契りやぬく太郎   似春

    ふられてけさはあたら山吹    ゝ

  ひょんな戀笑止がりてや啼蛙    桃青   

あたまくだしに通路の雨    似春

     (通路=かよひじ) 

御情にあづかるほどの木也とて   桃青

    根なしかつらのかゝる浪人   似春

長髪の霜より霜に朽んとは     桃青

    薬違ひに風塞きまで      似春

幾月の小松が原や隠すらん     桃青

    問へど岩根の下女は答へず   似春

磯清水汝ながれを立ぬかと     桃青

    いかつに情を杓で汲よる    似春

懸衣紺の袂にはし折て       桃青

    雲引かづく星の通ひ路     似春

ほとほとと天の戸ぼその暮の月   桃青

    帝近所へ夜噺の秋       似春

  錦かと田楽そむる龍田川      桃青

山は時雨て摺木の音      似春

うき雲のそなたに近き隠れ里    桃青

    日影をぬすみ仙境に入     似春

幻を提灯持や尋ぬらん       桃青

    夢はやぶれて杖と草履と    似春

しにはづれ此頃の鐙御門まで    桃青

    衣を眉にかゝる仕あはせ    似春

酒手乞白雲帯を解せたり      桃春

秋風起て出るより捧      似春

気違を月の誘へば忽に       桃青

    尾を引摺て森の下草      似春

  御神體則花は散給ふ        桃青

    筑紫はるかに春ぞ飛行     似春

  さゝげたる二ツの玉子かいわりて  桃青

    うち股廣き國の守へと     似春

  雪隠に伊豫の湯桁も打渡し     桃青

    ふみ石九ツ中は十六      似春

山作り硯にむかひ筆とりて     桃青

夢窓国師もいでや此世に    似春

物相を都の西に参りつゝ      桃青

茶の湯の古道跡は有けり    似春

太閤の下駄一足や残るらん     桃青

    高麗迄も隣歩行(ありき)に  似春

秋の寝覚火入を提て行ものは    桃青

    悋気の袖に月を打わる     似春

忍び路の霧の妻戸を突倒し     桃青

喧嘩眼に口説く夕ぐれ     似春

薄情かゝりがましき若いもの    桃青

    黒子に刎て殺すは殺すは     ゝ

追剥の跡は裳ぬけと成にけり    似春

    蝦蟆鐵拐や吐息つくらん     ゝ

千年の膏薬すでに和らぎて     桃青

折ふし松に藤の丸さく      ゝ

より金の花ほとゝぎす春の暮れ   似春

山もかすみの唐で我を折    執筆






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最終更新日  2020年06月09日 07時23分21秒
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