カテゴリ:松尾芭蕉資料室
『笈日記』……三月四日、支考江戸に入る。(芭蕉庵について) (略) その比嵐雪亭に、句合の侍りけるが、 白つゝじまねくやう也角櫓 嵐雪 十二日は阿叟の忌日つとむるとて、桃隣をいざなひて、 深川の長慶寺にまうで侍る。是は阿叟の生前にたのみ 申されし寺也。堂の南の方に新に一基の塚をきづきて、 此塚を「発句塚」といへることは、 世の中はさらに宗祇のやどり哉 翁 此短冊を此塚に埋めけるゆへなり。此ほつ句はばせを が庵の一生の無ゐなるべしと、杉風のぬし、かたり申 されし。 かの塚の前に香華をそなへ、まさ木の枝を折、左右に かざしをきて、いふ事も思ふ事もなき跡はしらずなり ぬるよと、ふたりながら泣て去ぬ。 その後舊草を見に行けるが、たゞ見知らぬ人の住みて ぞ侍るなる。 むかし此叟の深川を出るとて、此草庵を俗なる人にゆ づりて、 草の戸も住みかはる世や雛の家 今はまことに、すまずなりてかなし。
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最終更新日
2020年06月13日 10時49分32秒
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