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2020年08月05日
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カテゴリ:与謝蕪村資料室

 蕪村句集 巻の上 春の部(2)

 
  夢中吟

 

春雨やもの書かぬ身のあはれなる

春雨や暮れなむとして今日もあり

春雨やものがたりゆく蓑と傘

柴漬の沈みもやらで春の雨

 (柴漬=ふしづけ)

春雨やいざよふ月の海半

はるさめや網が袂に小でうちん

  

   ある隠士のもとにて

古庭に蕎麦花さく椿かな

あぢきなや椿落ちうづむにはたづみ

玉人の座右にひらくつばき哉

   (玉人=たますり)

初午やその家々の袖だたみ

はつうまや鳥羽四塚の鶏の聲

初午や物種うりに日のあたる

莟とはなれも知らずよ蕗のたう

   (莟=つぼみ 蕗の薹)

 

ある人のもとにて

命婦よりぼたばす彼岸裁

そこそこに京見過しぬ田にし売

  (田にし=田螺)

なつかしき津守の里や田螺あヘ

静さに堪へて水澄む螺かな

扇立て驚破にしの戸を閉る

    (驚破=そよや)

鴈行て門田も遠くおもはるゝ

帰る鴈田ごとの月の曇る夜に

きのふ去にけふいに鴈の鳴き夜裁

  (去=い)

 

郊 外

陽炎や名もしらぬ蟲の白き飛ぶ

かけろふや簣(キ あじか)に土をめづる人

 

芭蕉庵曾

 

畑うつやうごかぬ雪もなくなりぬ

はた打よこちの在所の鐘が鳴る

畑打や木の間の寺の鐘供養

 

 小原にて

春雨の中におぼろの清水哉

曰くるゝに雉子うつ春の山邊かな

柴苅に砦を出ふや雉の聲

龜山へ通ふ大工やきじの聲

兀山や何にかくれて雉のこゑ

  (兀=こち)

むくと起きて雉泣ふ犬や朧寺

木瓜の陰に顔類ひ住むきぎす裁

 

琴心挑美人

 

妹が垣根さみせん草の花吹きぬ

紅梅や比丘より劣る比丘尼寺

紅梅の落花燃ゆらむ馬の糞

垣越にものうちかたる接木裁

裏門の寺に逢着す蓬かな

畑うちや法三章の札のもと

きじ啼くや草の武蔵の八平氏

きじ嗚くや坂を下りの驛舎

 

西山遅口

 

山鳥の尾をふむ春の入日哉

遅き日や雉子の下りゐる橋の上

 

 懐 舊

 

遅き日のつもりて遠きむかしかな

春の海終日のたりのたり哉

畠うつや鳥さへ啼かぬ山かげに

耕や五石の栗のあるじ顔

飛びかはすやたけ心や親雀

大津繪に糞落しゆく燕かな

大和路の宮も藁屋もつばめ哉

つばくらや水田の風に吹れ顔

燕啼て夜蛇をうつ小家哉

 

無為庵會

 

曙のむらさきの幕や春の凰

野ばかまの法師が旅や春の風

片町にさらさ染るや春の風

のうれんに東風吹くいせの出店哉

河内路や東風吹送る巫女が袖

    (東風=こち)

 

几董が蛙合催しけるに

月に聞て蛙ながむる田圃かな

閤に生して遠き能をきく夜哉

苗代の色紙に遊ぶかはづかな

日は日くれよ夜は夜開けよと噂く蛙

連歌してもどる夜鳥羽の蛙哉

独鈷鎌首水かけ諭のかはづかな

うつゝなきつまみごころ胡蝶哉

暁の雨やすぐろの薄はら

よもすがら音な雨や種俵

古河の流を引きつ種おろし

しのゝめに小雨降出す焼野哉

    

かく夜長帯刀はさうな

数奇もの也けり

古曾部の人道

    はじめてのげざんに

引出物見すべきとて

錦の小袋を

さがしもとめける風流など

おもひ出でつすゞろ春色に

    たへず侍れば

山吹や井手を流るゝ鉋屑

  居りたる舟を上ればすみれ哉

    (居り=すわり)

骨拾ふ人にしたしき蕾かな

わらび野やいざ物焚かむ枯つゝじ

野とともに焼ける地蔵のしきみ哉

つゝじ野やあらぬ所に麥畠

つゝじ咲て石移したる嬉しさよ

近道へ出てうれし野の躑躅哉

    (躑躅=つつじ)

つゝじ咲て片山里の飯白し

岩に腰我頼光のつゝじ哉

 

上 巳

 

古雛やむかしの人の袖几帳

箱を出る顔わすれめや雛二対

たらちねのつまゝずありや皺の鼻

出代や亦さめざめと古葛籠

雛みせの灯を引くころや春の雨

雛祭る都はづれや桃の月

喰うて寝て牛にならばや桃の花

商人を吼る犬あり桃の花

桜より桃にしたしき小家哉

家中衆にさむしろ振ふ挑の宿

凧きのふの空のありどころ

やぶいりのまたゝいて過ぎぬ凧の糸

 

風入馬蹄軽

 

木の下が蹄のかぜや哉ら桜

手まくらの夢はかざしの桜哉

剛力は徒に見過ぎぬ山ざくら

    (徒=たゞ)

 

暁臺が伏水嵯峨に

遊べるに伴ひて

夜桃林を出てあかつき嵯峨の桜人

暮れむとす春を小盬の山ざくら

銭買て入るやよし野の山ざくら

 

糸桜讃

ゆき暮れて雨もる宿やいとざくら

歌屑の松に吹れて山ざくら

まだきとも散りしとも見ゆれ山桜

嵯峨ひと日閑院様のさくら哉

みよし野のちか道寒し山桜

旅人の鼻まだ寒し初ざくら

海手より日は照りつけて山ざくら

 

𠮷 野

 

花に遠く桜に近しよしの川

花に暮れて我家遠き野道かな

花ちるやおもたき笈のうしろより

花の御能過ぎて夜を泣く浪花人

阿古久曾のさしぬきふろふ落花哉

    (阿古久曾=紀貫之童名)

 

高野を下る日

 

かくれ住て花に眞田が謡かな

玉川に高野の花や流れ去る

なら道や當帰ばたけの花一木

  日暮るゝほど嵐山を出る

嵯峨へ帰る人はいづこの花に暮れし

花の香や嵯峨のともし火消ゆる時

 

雨日嵐山にあそぶ

 

筏士の蓑やあらしの花衣

傾城は後の世かけて花見かな

花に舞はで帰るさにくし白拍子

花に来て花にいねぶるいとま裁

 

    なには人の水尾町に

やどりゐしを訪ひて

花を踏みし草履も見えて朝寝哉

居風呂に後夜きく花のもどりかな

鶯のたまたま啼くや花の山

ねぶたさの春は御室の花よりぞ

 

 一片花飛減却春

 

さくら狩美人の腹や減却す

花の幕兼好を覗く女あり

 

やごとなき御かたのかざり

おろさせ給ひてかゝる

さびしき地にすみ給ひけるにや

小冠者出て花見る人を咎めけり

にほひある衣も疊ます春の暮

誰ためのひくき枕ぞ春のくれ

閉帳の錦たれたり春のタ

うたゝ寝のさむれば春の日くれたり

  春の夕たえなむとする香をつぐ

花ちりて木の間寺と成りにけり

苗代や鞍馬の桜ちりにけり

甲斐がねに雲こそかゝれ梨の花

梨の花月に書(ふみ)よむ女あり

人なき日藤に培ふ法師かな

山もとに米踏む昔や藤のはな

うつむけに春うちあけて藤の花

 

春 景

 

菜の花や月は東に日は西に

なのはなや笋見ゆる小風呂敷

    (笋=たけのこ)

菜の花や鯨もよらす海暮れぬ

 

春夜盧曾

 

塞て南阮の風呂に入る身哉

ふさぎや床は維摩に掛替る

 

暮 春

 

ゆく春や逘巡として遅ざくら

行春や辺労をうらむ歌の主

洗足の盥も漏りてゆく春や

けふのみの春を歩いて仕舞ひけり

    

召波の別業に遊びて

行春や白き花見ゆ垣のひま

春をしむ座主の聯句に召れけり

行春やむらさきさむる筑波山

また長うなる日に春の限りかな

ゆく春や横河へのぼるいもの神

    (横河=よがわ)

 

    ある人に句を乞われて

  返歌なき青女房よ暮れの春

  春惜しむ宿やあふみの置火燵






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最終更新日  2020年08月05日 07時17分57秒
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