カテゴリ:山梨県俳句資料室
『峡中俳家列伝』 田中由章 甲斐志料集成 一部加筆 山梨歴史文学館
東山梨郡の勝沼町には、田中氏を名乗る者が沢山あるが、其の總本家と云いのは、維新の際まで荷問屋を営んで居た田中新と云う人である、此の人、業務の傍ら俳諧を好み、同町の桑原石恣、及び田野の釋竹島の両先に句評を乞い、亦同町の智徳堂竹良・梅庵白隣の両氏を俳友として、句吟も沢山あった。けれども、名利名聞を好まなかったから、其の名も余り顕われなかった。 其の性質は温良恭謙にして、寧ろ因循に流れはしなかったかと思われた位ある。惟ふに、詩は志なり、亦思なりだ、故に此の人の作に係る 春寒し寒しと過る月日哉 手配りや翌日植る田の水くはり 待たるゝ待も安し花の友 末枯れた根に朝貌の咲きにけり 二つ出て噪しうなる胡蝶かな 水仙や葉のぢねくれに花は似す 不断着に終なりやすき袷裁 大年や箒にかゝる海老の髭
等の吟詠を玩味して見ると、其の性格が歴々として眼前に髣髴たるかの如き感がする、明治二十八年四月十二日逝去せられた 行年七十歳、同町の禅刹東漸院へ葬った。
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最終更新日
2020年09月29日 10時34分53秒
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