カテゴリ:俳諧人物事績資料
○連 歌 太田南畝『一話一言』
◇ 一部加筆 山梨県歴史文学館 老のすさび*文明一年の作 * 中にておもしろき連歌のつけ合を抄出し侍る。 なき跡に行末たのむふみを見て あせたる池に雨おつるみゆ 心 敬 汀なる鷺の蓑毛にかぜ立て 軒のしづくや松がねの露 宗 砌 蔦の葉にむら雨かゝる庵ふりて なれにし人もゆめの世の中 智 薀 山ざくらけふは青葉をひとり見て こふる山田のさみだれの頃 能 阿 一村のさかいのあふち花ちりて 風やかれ野の色にふく覧 賢 盛 冬されは置の花ちる遠ひかた よるふねちかきははるの山もと 智 薀 青柳の朝けのけふり江にはれて かすかにのこる春の山みち 行 好 花やしる去年も我こそ尋くれ 専 順 ほゝ螢とゝとぶ火野の野守哉 均 明 ● 一拾芥抄食禁物の部に、三月五辛を喰はず、九月生薑(はじかみ)をくらはずと有り。 あさつき鱠は雛の膳供にさだまり、芝神明の生姜(しょうが)祭食品にあてずして何ぞや。 ● 伊勢島宮内は江戸虎屋源太夫が弟子にて宇治嘉太夫が師也、 一流語出したる者也。 いせ島を似せぬぞ誠鉢たゝき 其 角 ● 其頃専伊勢島が流はやりしと見へたり。 ● 西山宗因江戸旅宿の折から、 ある人此頃俳諧し侍りと添削を宗因へ頼れける。 うへを下へえいとう山の花見哉 ● 西山宗因いはく、おもしろけれども連歌めきたり、 箇様にて宜かるべしとて、 花見衆やえいとぅく東叡山 即時に引直してさて脇をし侍らんと、 霞ひけひけ押す車坂 と、つけられたり。 えいとう山の句連歌めきたりとや、厚きはいかい也。 螢火は百がものありなめり川 宗因 驚けや念仏衆生節季候 宗因 ● 芭蕉の近江にてしたゝめられし文に 花曇鐘は上野か浅草か とあり雲とは後の事にや 〔頭註〕 按、三体詩、山城南鐘を翳(おぼらす)す心か、 蕉翁の唐詩を翻案せしなるべし。 雛のかほ卵の殼に目鼻かな 米 徳 鉢盥(そそぐ)一斗は漏りぬ秋の雨 山 林 子をうしなふて、 鶯やまだこもりこもりの初芝居 信 鳥 大津絵誉瞽之賀 春の夜の犬はあやなし目くら打 米 仲 むざんやな鳥の口に蝉の声 由 雅 牛の子に新場の海鼠蹈るゝな 米 仲 豆見月栗喰娘芋僧都 女 さなみ ころがせば我としむるや雪の音 青 藍(佐原) 左葛西の舟待寒き若菜歌 菜 陽 一声は裏町遠し初鰹 米 車 涼しさや鰹のつらへ大柄杓 万 年 同勢へ初郭公行たらす 義 莛 大汐を嘗ぬばかりの柳哉 水 路 いたいけに年ふたつとる若な哉 栖 鶴 道問へば苦い顔なり野老堀 軽 羅 澄むかたへ植てゆく田の濁り歌 亀 成 恐しくすべりし跡や苔の花 時 鶏 水仙と腰元とのみ別座敷 米 丈 ● 寛永年中、将軍義政公春日御社参の時、御能十三番被行、 観世・宝性・金剛・竹田是をつとむ。 出雲十柄、二見ノ浦、浦島、鶴次郎、星ノ宮など今きけばめづらしき番組なり。 年礼に男のわせる彼岸哉 永 機 雲のみね五百羅漢のあたま哉 青 徳 ながらへて浮世を牛の茄子哉 祇 徳 けふは人の留守をして居鉢(はち)扣(たたき) 木魚にも寒のかはりや耳の底 遊 翁 馬の背に蝉の寵て行師走哉 青 徳 禅も男むすびの暑哉 道 院 庇(ひさし)から落る物あり秋の風 湖 仲 秋の夜や二ツ三ツ夢のむすび玉 西 月 うら枯や酒星一軒こけら葺 超 月 蛙飛ぶきのふの雨のおかち町 魚 河(西山氏) 以上、ウツボ随筆抄書畢ぬ。 七部抄の内たれやらが附合に、 郭公御小人町の雨上り 蛙飛ぶの句と同日の談なるべし。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年01月08日 19時22分02秒
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