2301594 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2021年01月18日
XML
カテゴリ:松尾芭蕉資料室

芭蕉終焉記(1)花屋日記(芭蕉翁反故) 

 

肥後八代 僧文暁著

浪速   花屋庵奇淵校

 

九月二十一日(元禄七年 1694) 

泥足が案内にて、清水布浮瀬の茶店に勝遊し給ふ。

茶店の主が求めに短尺杯書きて打興じたまう。

泥足こゝろに願うことあるによりて、

発句を請いければ

 

所思

  此道やゆく人なしに秋のくれ   翁

   峡の畠の木にかゝる蔦     泥足

    

〔歌仙一折有略〕

 

連衆十人なり。短日ゆえ歌仙一折にて止む。

今度はしのびて西国へと思ひたち給いしかど、

何となくものわびしく、

世のはかなき事思いつゞけ給いけるにや。

此句につきて、ひそかに惟然に物がたりしたまひけり。

   

旅 懐

  此秋は何でとしよる雲に鳥   翁

 

幽玄きはまりなし。奇にして神なるといはん。

人間世の作にあらず。

其夜より思念ふかく、自失せし人の如し。

実に鳥の五文字、古今未曾有なり。(惟然記)

 

九月廿六日 

園女亭也。山海の珍味をもて腸謳す。

婦人ながら礼をただし、敬屈の法を守る、

貞潔閃雅の婦人なや。

實は伊勢松坂の人とぞ。

風雁は何某に学びたりといふ事をしらず。

岡西惟中が備前より浪華にのぼりし時、惟中が妻となる。

その時より風雅の名益々高し。

惟中が死後、汀戸にくだりて、其角(宝井)が門人となる。

 

白菊の目にたてゝ見る塵もなし   翁

    紅葉に水を流す朝月       園女

 

連衆九人、歌仙あり。別記。(惟然記)

 

 九月廿九日 

芝拍亭に一集すべき約諾なりしが、

数日打続て重食し給いし故か、労りありて、出席なし。

発句おくらる。

    

秋ふかき隣はなにをする人ぞ   翁

 

この夜より、翁腹痛の気味にて、排瀉四・五行なり。

尋常の瀉ならんと思いて、

薬店の胃苓湯を服したまひけれど、

驗なく、晦日・朔日・二日と押移りしが、

次第に度敷重りて、終りにかゝる愁いとはなりにけり。

惟然・支考内議して、

いかなる良医なりとも招き候はんと申ければ、

師曰く、我元々虚弱なり。

心得ぬ医者にみせ侍りて、薬方いかゞあらん。

我性は木節ならでしるものなし。

願くは本節を急に呼びて見せ侍らん。

去来も一同に呼よせ、

談ずべきこともあんなれば、

早く消息をおくるべしと也。

それより両人消息をしたゝめ、

京・大津へぞ遣わしける。

しかるに之道の亭は狭くして、外に間所もなく、

多人数人こみて保養介抱もなるまじくとて、

その所この所とたちまはり、我知る人ありて、

御堂前南久太郎町花屋仁左衛門と云者の、

奥座敷を借り受けり。

間所も数ありて、亭主が物数奇に奇麗なり。

諸事勝手よろし。

その夜、すぐに御介抱申して、花屋に移り給いけり。

此時十月三日仇。(次郎兵衛記)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年01月18日 21時53分06秒
コメント(0) | コメントを書く
[松尾芭蕉資料室] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

山口素堂

山口素堂

カレンダー

楽天カード

お気に入りブログ

9/28(土)メンテナ… 楽天ブログスタッフさん

コメント新着

 三条実美氏の画像について@ Re:古写真 三条実美 中岡慎太郎(04/21) はじめまして。 突然の連絡失礼いたします…
 北巨摩郡に歴史に残されていない幕府拝領領地だった寺跡があるようです@ Re:山梨県郷土史年表 慶応三年(1867)(12/27) 最近旧熱美村の石碑に市誌に残さず石碑を…
 芳賀啓@ Re:芭蕉庵と江戸の町 鈴木理生氏著(12/11) 鈴木理生氏が書いたものは大方読んできま…
 ガーゴイル@ どこのドイツ あけぼの見たし青田原は黒水の青田原であ…
 多田裕計@ Re:柴又帝釈天(09/26) 多田裕計 貝本宣広

フリーページ

ニューストピックス


© Rakuten Group, Inc.
X