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2021年04月30日
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   児童文学作家 今日的評価 青木 茂(あおき・しげる

 

   国文学『解釈と観賞』11月臨時増刊号

   第27巻 第13号

   現代児童文学辞典 昭和37年 至文堂

   一部加筆 山梨県歴史文学館

 

明治三十年(1897)に東京に生まれた。

麻布中学に入学したが一年だけで中返し後は絵をかいたり童話をかいたりしていた。昭和元年(1926)世田谷の深沢に農園をひらき、花つくりを生業としたが、国内の状況が悪化して経営がむずかしくなったため、東京電気炉会社に入社し、電気工作上の研究で、昭和十九・二十年(1944・45)技術院宣を二度受賞しだ。

児童文学にもはやくから手を染め、大正八年(1917)に山討幕鳥のすすめで 「おとぎ世界」に「詩人の夢」をかいたのをはじめ、長編「知と力兄弟の話」「所謂社 大正九こニ)、短編「孝い心臓のミイラ」(「中学生」大正一〇」などを発表し、昭和六年(1931)には、酒井朝彦や千葉省三の同人跡昭和六年(1931)には、酒井朝彦藤田圭雄のすすめで、昭和二十六年(1946)八月号から「三太」を主人公とする短編を発表しはじめ、(三大武勇伝」(光文社・昭和26)、「小説三太物語」(光文社昭和26)「二大の日記」(鶴書房 昭和苫)(ポプラ社・新日本少年少女文学全集30)などいわゆる「三太」ものをつぎつぎに刊行した。

 青木茂の名を一躍有名にしたのは、昭和二十五年(1950)からはじまったNHK連続放送劇「三太物語」(筒井敬介脚色)であった。

道志の山村を背景とした三大少年の数々のゆかいな冒険は、戦後のすさんだ世の中に、さわやかな笑いを送りこみ、人びとをどんなに勇気づけたかわからない。たしかに「三人」の物語には、多くの人びとをひきつける要素がたくさんにある。舞台となる道志川周辺の自然と人々との生活、特に子どもの日常生活を、作者は適確につかんでいる。また、エネルギーにみちた三大の行動心は、たとえば、夫が戦地から帰ってこないため気がおかしくなった女の家からは、なりくだものをとらないような健全なモラルに支えられている。三大周辺の人びとも、程度の差こそあれ、みな善意に満ちた人びとである。

「三大物語」は、単なる悪童物語やユーモア物語ではなく、笑いにつつんだ作者の人生観、社会観の提示であり、その健康さが多くの人びとの心をとらえたのであろう。

 しかし、作者の理想は、あくまでも最終的な形が示されるだけで、現実の中で、いかに理想に近づくかは、かいてない。現実的諸問題はいつも追及されることなく、はぐらかされて話はおわり、三太も生活の中で心の成長をとげない。

それは「笛のおじさんこんにちわ」(売文社・昭和32)でも同様で、作者の理想とする世界国家は、夢という形でしか提示されていない。

 「三太物語」の作者を知るもうひとつの重要な作品は、戦後改作されて雑誌「少年少女」(中央公論社)にのった「知と力兄弟の物語」であろう。イントとパラのふたごの兄弟が、砂漠や夜光珠国や地獄を遍歴するこの物語は、東洋の神話伝説の荘大さと力強さと豪華さをあわせもち、作者の思想に裏打ちされていて、作者が真にすぐれたストーリー・テラーであることを実証している。以上のほか、少年少女小説「大海の口笛」(昭和三 地平社)がある。






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最終更新日  2021年04月30日 18時21分27秒
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