カテゴリ:松尾芭蕉資料室
芭蕉文集 笠張説
草扉にひとりわびて秋風さびしき折々、竹取のたくみにならひ、妙観が刀をかりて、みづから竹をわり竹を削りて、笠つくりの翁となのる。心しづかならざれは日を経るに物うく、工みつたなければ夜をつくしてならす.あしたに紙をかさね、タにほして又かさねかさね、渋といふものをちて色をさはし、ますますかたからんことを思ふ。廿日過るほどにこそやゝいできにけれ。其かたち、うらのかたにまき入、外ざまに吹かへりなど、荷葉のなかばひらくるに似て、なかなかおかしきすがたなり。さらばすみがねのいみじからんより、ゆがみながらに愛しつべし。西行法師のふじみ笠か、東披居士が雲見笠か、宮城野の露に供つれねば災天の雪に杖をやひかん。あられにさそひ時雨にかたぶけ、そぞろにめでて殊に興ず、興のうちにして俄に感ることあり。ふたゝひ宗祗の時雨ならでも、かりのやどりに袂をうろほして、みづから笠のうちに書つけ侍る。 世にふるはさらに宗祗のやどり哉 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月25日 15時21分37秒
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