カテゴリ:松尾芭蕉資料室
芭蕉文集 銀河序
北陸道に行脚して越後国出雲崎といふ處に泊まる。 かの佐波が島は海の面十八里亘滄波を隔て、東西三十五里に横をりふしたり。 峰の嶮難谷のくまぐままで.さすがに手にとるばかりあざやかに見わたさる。 さすがに手にとるばかりあざやかに見わたさる。 むべ此の島は黄金おほく出て、あまねく世のたからとなれば、限りなき目出度島にて侍るを、大罪朝敵のたぐひ遠流せらるゝによりて只おそろしき名の聞こえあるも本意なき事に思ひて、窓おしひらきて、暫時の旅愁をいたわらんとするほど、日すでに海に沈みて月ほの暗く、銀河半天にかゝりて、星きらきらと冴えわたるに、沖の方より波の音しばしば運びて、たましひけづるが如く、腸ちぎれてそぞろに悲しひ来れば、草の枕も定まらず。墨の袂何故とはなくてしぼるばかりになん侍る。
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最終更新日
2021年05月27日 06時09分51秒
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