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2021年06月15日
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カテゴリ:松尾芭蕉資料室

奥の細道 素龍跋文 去来奥書 蝶夢奥書

 

  からびたるも艶なるも、たくましきもはかなけなるも、

おくの細みちみもて行に、おぼえずたちて手たゝき、

伏て村肝を刻む。

一般は簑をきるきるかゝる旅せまほしと思立、

一たびは坐してまのあたり奇景をあまんず。

かくて百般の情に、鮫人が玉を翰にしめしたり。

旅なる哉、器なるかな。

只なげかしきは、かうやうの人のいとかよはげにて、

眉の霜のおきそふぞ。

 

元禄七年初夏   素龍書 

 

 

*伝去来筆『奥の細道』下郷本の去来奥書

 

 此巻は、古師芭蕉翁の紀行にて、素龍清書す。

書の長さ五寸五分、幅四寸七分、紙の重ね五十三、

初終に白紙あり。行成の表紙、紫の糸をもてとぢ、

外題は、金の真砂散らしたる白地に、

みづから、おくの細道と書。

年月頭陀のうちに隠して、行先くに随身したまふ。

元禄七年水無月、予が方に偶居ましまして、

かつかつほのめかしたまふを、

書写の事深乞奉りけるに、おなじ年の神無月、

難波のあしのかりねにこゝ地なやみ給ひぬと聞えぬれば、

急ぎとぶらひまかりけるに、枕ちかう呼給ひて、

けふ我やまひ頻なり、汝日頃此集のもとめ深し、

今将に足下に譲りなむ、

不思議にもながらふるためしもあらば、

写しとどめて本の書を返すべし、

書け兄の慰にとて、ふるさとに残し置ぬれば、

つとつとに倡送るなるべし、と聞えたまふ。

かたじけなくも悲しくもかしこまり、

頓て写しとでめてめでたき此巻は捧奉りなん、

と涙を落しぬ。

かくて遷化のゝち、兄の許へ文して乞奉りけるに、

今はかうやうのものをこそ、

しばしとどまるべき老の記念ともなぐさみ侍れば、

卿手を放ち侍むも浅ましう覚られぬれど、

遺言なれば送りやりぬ、

且は奥羽のたびねのあともなつかしく、

且は門葉の人々の手跡もめづらしと見まほしければ、

予に書写して送り侍るべし、と也。

然ば、ふたゝび能書をゑらぶによしなく、

やヽその製をたがへずといへども、

なを誤字落字の多からむ事を恐れ侍るのみ。

  ぬれつ干つ旅やつもりで柚の露

 

元禄八乙亥歳九月十二日

 於嵯峨落柿舎書写焉   門人去来拝

 

蝶夢奥書

 

井筒屋が家に伝りし奥の細道、

板行のすゑに、素龍が肢あり今畧之、とあり。

としごろ、その文章のゆかしかりけるに、

去年の冬、伊賀の上野に掛錫の折ふし、

古き反古の中に、此細道の原本を得たり。

見るに素龍の跋、去来の伝来の因縁を書たるものなり。

見るにむかし忍ばしく、あらたに写して此書の奥にくはふ。

 

明和七寅年十月翁忌の日湘南義仲寺の

              廟前にて

               蝶夢書之






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最終更新日  2021年06月15日 21時08分50秒
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