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2021年09月04日
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カテゴリ:俳諧人物事績資料

 甲斐ゆかりの俳人 辻嵐外 『辻嵐外発句集』(乾)(一) 

 

嵐外三回忌追善集 序文 嘉永元年(1848)

  山梨県立図書館蔵 甲州文庫。安楽林社編。

 

 

六庵嵐外居士は越前角鹿の人なり。

壮年に古園をさり京に在て、俳諧を学ぶに頗英才あり。

中ごろかひがねに人て徒弟を導き、遊戯三昧に生涯をおくり、

七十五の春歌尽す花とともに帰らぬ旅に赴かれけり。

さるかの老子の所謂死して亡びざるものは命長してふ物あり。

そは歳ごろすさび置ること草也。

そをこたび寿梓におこなふとて予にはし書を乞り。

流石に同門の因あれば否み難くて比一言をかいつくるものにそ

      八十翁 梅室

 

 春の部

 

元日は何国も春の名処哉

元日はつゝみかくさぬおもしろき

今朝の春一度は不尽(富士)も登りけり

 

 北亭鶏且

 

若水や蕗の根にそふ一匂ひ

屠蘇の香やここも都の空あかり

蓬莱を餝(かざ)るや雲も居るばかり

御降やそこらに見たき玉津島

万歳やうしろをみせて一位ゐ

七草さや芹は捜さぬありどころ

鶺鴒(せきれい)のついて来て摘薺(なづな)かな

菜を摘にけふは蘿蔔(すずしろ)菘(すずな)哉

 

 知ず六十になりぬ知らず明日又いづれにかならん

俎(まないた)や薺をのせて珍らしき

 

この道や小松を引し葉のこぼれ

ほのぼのと左義長みゆる外山哉

帋(かみ)に尾を包んだ鯛や朝霞

柴折てほろりと匂ふかすみかな

 

 村落

 

箕に升にかふる霞や朝なく

梅一木不そのかたに野はなれにけり

折れた跡あるを見てをる野梅哉

子をもたぬ人と人との梅見かな

梅が香や薄縁敷て舟に乗る

うめが香や朝日の霜のきりみじか

梅の花けふをきのふに一日づつ

梅の花墨と硯のむつまじき

 

章安大師の言葉とかや処の幽閑大なる智識と聞に

京は京にして京の春色に堪ず

梅の花さくや三条からす丸

今朝になりて道埋もれぬ春の雪

家見えてはるの朝寝や清水山

春の夜や軒端に高き鹿の尻

鶯や今にはつ音の五七日

黄鳥や杉の実落てうしろむく

うぐひすや枯木を見ればかれやすむ

声過て鶯ばかりあそびけり

黄鳥の鴫けり炭が白炭になる

あるもあるも同じ木ふたつ柳哉

一枝も冬まけのなき柳かな

柳青うなるや芽のまだ見へぬ内

西に青く東に青き柳かな

 

 下戸

 

餅を煮てよき青柳の目なりけり

 

 上戸

 

朝酒の調子はのらぬ柳かな

  酔ては醒さめては酔さらに大杯にあらず

青柳にかう活て居ていつ死ぬか

細ながれ蕗の墓から瀬のかはる

遊ぶ目の鐘に顔出す蕗の薹

若くさにかきあげ城を隣りけり

葩(はな)草や薺(なづな)花さく目のつもる

春風や家ひとつある足の跡

 

 楽庵池上

 

泥亀や芹をば退て鳴出す

はるの川垣よりうちを流れ行

養父入やとり掲婆々にあふ途中

白魚や壁の隣のふみづかひ

 

応々が十時庵にこもり居て、

処がらみるもの聞ものみな俳諧なりと

嬉しがるといふに

しら魚の漁火今やいま時分

 

水の上や手足忘れてうく蛙

飛かはづ膝を崩すと見るよりも

蛙なく田にはいつなる諏訪の湖

井筒からひとつ出て舞小蝶かな

舞小蝶ゆふべの宿の覚束な

蝶飛やけふは隙ある臼と杵

蝶飛や蟻のいとなむ塔ひとつ

垣越に見るや畑の春の月

在明てまだいさよひぬ春の月

春雨の交らぬ音や山の水

はるの雨多賀の花表の内に降

春のあめ魚島の皃撲てふる

 

百里あなたに故園をおきて

何とはなしにものがなしき日

春雨やこゝから拝む親の墓

 

古くさやふるきうつりのつづくし

何やらに出て来てここに摘土筆(つくし)

秋風に吹れた色をつくづくし

野と京の間ひと足董草

春の水流れぬ他のあはれ也

春の水水の中より涌にけり

石ひとつ動かし初てはるの水

里の木は桑ばかりなり鳴雲雀

身を声にのせかけて居る雲雀哉

夏の日に似たむら雨やなくひばり

執着や猫のはまりし藍の壷

眠る時あまる心かねこのかほ

大雨の闇の晦日を猫の恋

獺(かわうそ)の祭りは幾日おぼろ月

犬の吸ふ酒のこぼれや朧月

 

 誰人の薦着ていますと吟じたまひし

湖辺いよいよしたはれて

朧(おぼろ)月近江は何処も湖の音

捨るまで梅の花折る二月かな

葺上た庇や凧の落初る

柿の本に柿接隙な目なりけり

はつ午や葱畑も神ごころ

人は族へ拘仔的ながら暇乞

尊さに泣ぬ仏のわかれかな

早蕨(わらび)や岩おし分て萌出る

呉もする声して売や濁活蕨

山の裾打てば出てくる畑かな

畑まで来てはたけ打身ごしらへ

朝かげにみた畑打の日は暮ぬ

帰る雁波におはれておもひつゝ

かへる雁来た空よりは低いそら

燕や舞羽の糸を蹴て通る

つばくらの子もまだもたず飛走る

皃よりは口ならべるや乙鳥の子

草の野に継子のつくらぬ道もなし

水に入火にいるばかり継子の声

身動きもせずして肥る田螺(たにし)哉

葺上だ庇や凧の落初る

柿の木に柿接隙な目なりけり

はつ午や葱畑も神ごころ

人は族へ拘柘植ながら暇乞

尊さに泣ぬ仏のわかれかな

早蕨(わらび)や岩おし分て萌え出る

呉もする声して先々獨活蕨

山の裾打は出てくる畑かな

畑まで来てはたけ打身ごしらへ

朝かげにみた畑打の日は暮ぬ

帰る雁波におはれておもひつつ

かへる雁来た空よりは低いそら

燕や舞羽の糸を蹴て通る

つばくらの子もまだもたず飛走る

臼よりは口ならべるや乙鳥の子

草の野に矩子のつくらぬ道もなし

水に入火にいるばかり嬢子の声

身勣きもせずして肥る田螺哉

虎杖にとまって見ゆるやけ野かな

苗代の田一枚づつはなれどり

瞬に萍青むはじめかな

若鮎のおなじかたむく流れ哉

永き日や蛙の居る水の底

耳に珠数かけて日永し天王寺

夜の明るから日は永し鳩の声  

朝洞貢を蒔て出代る男かな

出がはりの沼や薪のひといぶり

今日までは柳機嫌やはつ桜

尋ゆくかたより余処に初ざくら

 手枕の不行儀は見ず夜の雛 

 ひなはみな親子孫彦玄孫かな

雛の中ににくまれひなも一つあり

野は山に山は野にそふ桜哉

 ちることのかくてくはしき桜かな

 起き起きのさくらうなづく尾上かな

 桜散処なりけり膝がしら

一頻りものも交らずちるさくら

 

大神山のさくらは清信公

手して植たまふ木なりと也。

二百余年の今古木猶存せり。

老ぬれど春をやすまぬ桜哉

乙鳥のうつけ遊びや八重ざくら

 

山里は花の雫のなかりけり

花の風身を吹よりも多かりき

花の香や薄紙一重夜のかふる

  

西光精舎にけふを忘る

 

花の香のながれかゝるや堂の橡

横に寝て竪に起けり花ざかり

水の泡折角花のちりかくる

底ぬけし花見心や劈まくら

行々てゆきあたりけり花の宿

桃の花葉のいそぐより散りかNる

枯枝も背かず見えて挑の花

香を色にかへてぼっく桃の花

梨の花ちるや蓋する御膳水

山吹のはつ花竹を見てゐれば

花がちに葉がちに山の藤の花

連翹(れんぎょう)や菜種山吹花ふれて

芋植える親子につきぬはなし哉






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最終更新日  2021年09月04日 09時48分15秒
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