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2021年09月04日
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カテゴリ:俳諧人物事績資料

甲斐ゆかりの俳人 辻嵐外 『辻嵐外発句集』(乾)(二) 

 

嵐外三回忌追善集 序文 嘉永元年(1848)

  山梨県立図書館蔵 甲州文庫。安楽林社編。

三月末つかた天目山に分入て

春ゆへに梅にはうめの咲にけり

古の殺生を見る蚕飼哉

 

伊勢に七度熊野へ三度とかや、

甲斐の子供の唄ふを聞て小田返す

往来を春に芳野山

 

 浅草寺に詣

 

平内が秋よりして別れ霜

行春やさびしき琵琶の糸の数

ゆくはるや畳にこぼす酢の匂ひ

行春や長きひとつの瀬田の橋

春の暮思ひ離れ昼の雨

海案や扇の箔の散て行

花は葉にかまはず落る椿かな

紫にまでもち込で咲躑躅(つつじ)

持なれて倦もしたやら落し角

庵の軒飛は鼠の鵜かな

 

 春の夢は焼に消て

佐保姫にかくして捨る虱哉

三月の晦日過けり三輪の松

岩そ立て松はみなく暮の声

 

夏之部

 

更衣傾城尼になりにけり

父は三十年の昔、

母は二十年の昔いづれも夢のゆめの人となりて

ころもがへして親のある心かな

何時やらからふとかりそめに脚気といふを悩みて

病なれるやまひ三年更衣

牡丹見て寒さまぎれん初袷

老ぬれば人がましさよはつ袷

綿服や本よ本よと身をととのふる

はねかへる魚なげいれん青簾

青々と都をふさぐすだれ哉

 

時鳥妻子を逃し声いづこ

不如帰鴫くと思へば夏のそら

初音追ふ雲一はしりほととぎす

柳には雨のたまりて杜鴎

乙鳥は戸に人にけり子規

蜀魂なくや田にまく灰の中

 

市中真景

階子から植田が見えて杜宇

 

信中別所如々庵一景

浅間山ふらじと鴫やほとごさす

時鳥遅しと思ふとしはなし

 

六庵落成の日

鉋屑風のあるなりほととぎす

子規はつ声笥のころぶ先

あの声をかへず一日閑古鳥

どのように巣を拵らへるかんこ鳥

花なしとすましきる日の牡丹政

一鈴のぼたん白くて一重なり

 

求己亭に碁うち遊ぶ時

牡丹さくかたに止長のあたりけり

魚売のことづかりけりかきつばだ

三度見てひらきとけけり杜若

仰の花や花を遁れて葉のすこし

うの花や跣(はだし)で参る神佛

一とろにむら葉すたつてわか楓

老けるや隣々の新茶時

傘や蛙の子育つ知恩院

春過て乙鳥黒き卯月哉

はつ茄子花珍らしとみるやいな

あぢきなや蝶のとまりし蝸牛

波かけし頬も乾かずはつ鰹

椎の木の若葉ひそかにはじめけり

 

 庭上実生の一木あり、漸く杖ほどに立たり

まだ花は咲ずに梅の若葉する

降ものの雨がふるなり米嚢の花

白けしの思ひたがへず白かりし

芥子に目のとどかず夏の長閑なる

紫陽花や杖のあつまる咲下地

 

 平臥

あぢさゐの雫のかゝる枕かな

瓜の形つくるや其日盗まるふ

貰ふ時その葉につゝむ胡瓜哉

笹にかゝる薄荷のにほひかな

竹の子やおのれが露に流す土

たけのこや顔もあはさず呉て行

短夜や牛は居りて寝入つく

 

戸を開けば釜川みなぎり

向ふ所一山にむかふ一清亭

瀬の音の明るに安しふじの山

 

如斯古古杯丘の三子熱海の温泉より江戸にまはりて

頓て嵐雪が庵の夜も少しづつ短かくなるといふに帰庵

深川の明やすき夜に逢ずして

 

夕顔や闇のさておく花ひとつ

夕がほの蒼むや咲をおよび腰

笠市のあつた其夜に飛ほたる

蕗の葉に見るはつかげの蛍哉

くらきより長閑に返る蛍かな

 長きその月日のうちに栗の花

二筋と値ぬに蔦は茂りけり

柚の花のさはりもせぬにこぼれけり

土筆から杉菜も過て百合の花

いやしからず水の湧けり八重萍

摘とってつみ交るなり蛇覆盆子

またとなき物や扇の新らしさ

桐殼を刈や扇をさしながら

句を書た扇みたれば扇の句

 

機山公御廟北山岩窪といふ処に

御修復あらたなるに額づく

かならずも岩窪にもつ扇かな

 

岨の木に倚そへば蝉の今年哉

蝉の声竹を退く時きよとくし

追やれば殖るや蝿のあと戻り

 

許六が足の跡をゆく

数の蝿都の蝿もまじるべし

 

一隅ははづれしまぶや昼の蛎

ひとり寝てうらやまれけり蚊帳の中

 

余所目にはさることながら

とり始末蚊屋むづかしき独哉

根のつよき蓬が宿の蚊遣り哉

蚊やり火のすれからし也老一人

麦を刈鎌持ながら寝付けり

骨折の見えてあるなり麦の藁

 

北越名古屋懐旧

橋の跡問ば聾よ小麦刈

 

楽庵

 

麦糠のながるゝ水も今しばし

幾年も菖蒲をくれる隣かな

蓬あやめ持合せてぞにほひける

是ほどに巻た綜をほどきけり

乙烏に身をひるがへる競馬哉

忘れ川烏の毛ぬけて流れけり

溢れずば咲をもしらじ柿の花

散てのち草にかはるか合歓の花

大黄にながれをはめて五月雨

さみだれや笹のびる墓の前

かたびらや帯も結ばずひとりただ

夕立や葱しげりて畑むら

白雨や骸(からだ)は垢のぬけるおと

箒結ふうち見て居て涼みけり

蒲団着ん橘の広葉の下すゞみ

靸(くつ)で居て高い足駄や夕涼み

野に有て野より涼しき窓の内

 

草も木も御法の身延山にて

身に葛のかゝる処にすゞみけり

 

駿河人某来りて処の旧地語り出るに

隣まで涼しかるらん柴屋寺

昨目見し蓮まだ匂ふ筵(むしろ)かな

蓮剪て骸にみちるにほひ哉

朝起やいちひを浸す細ながれ

麻刈や鎌の曲りのつかひみち

夜歴のも是であつだの火とり虫

珍らしく蝿のとまるか氷室守

寉(かく)守の膝に手をおく土用哉

 

人の閑居を訪ひてかのひやひやと

壁をふまへながらしばし飲楽を

 きはむるに当中おのづから一景あり

 

夢の山足のさはらん簟(たかむしろ)

 犬神人になく子は喰はす怖し哉

 稲妻に向て読なり夏ばらひ

 尊げに身をおもはる上矛の輪かな

 榊葉や橡の下から御祓川

 






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最終更新日  2021年09月04日 09時49分41秒
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