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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年09月04日
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カテゴリ:俳諧人物事績資料

『嵐外発句集』(坤)(三) 

 

 山梨県立図書館蔵甲州文庫。安楽林社編。

 一部加筆 山口素堂資料室

 

秋の部

 

初秋や西日をかへす犬の五器

秋立や明日へまはらぬ水のおと

七夕の馳走するらん茶立虫

七夕や乞喰の妻も鉄漿ふくむ

ててれ干す竿をはづれて天の川

見えぬうち昼は濁るかあまのかは

 

巨鼇山(きょうごうざん)

 

山風や樫も檜も天の川

 北越行脚のとき小池谷より長岡へ下船中

鵠の橋の下こげ妻有船

 宮阪桃庵を訪ひて茶を呑で帰る時

希目のなりに流れて天の川

居合ぬく遊びになるや生身魂

借歩行一口袴や墓参り

今年また誰に数そふ麻木箸

畳屋は今かへりけり霊祭

霊まつりひとことづつに心より

送り火や唇うごく口のうち

夕顔の棚から出るや盆の月

踊子や萩に吹れて足袋をはく

 

 鳥羽の孝には冬文やわらはすらん黒崎の

船の中にはただともやしのぶらん

音頭とり多賀の杓子の杓子皃

桐一葉扇は手より落にけり

牛かくす秋の桐の葉落にけり

桐一葉ひとはなりけり一葉づつ

萩を見に行や鈴ほどの病上り

夕露を昼からもっや萩の花

稲妻や何時見しまぶの徒弟共

いなづまの果や夜明る山の兀(ごち)

稲妻や波に家するかゝり船

稲つまや豆に兎のつき初る

 

哭政徳

 かたみに匍匍はらばひて、

土器をあけ、かはらけをかわせて、

わらひもしわはせもせしは、

みすみすきのふの政徳にして、

今日たちまちけふは卒都婆に拝みぬ。

きのふの我いまだけふの我にして、

 比けふにあひ今日の卒都婆になく、

それこれはうつっか夢かさらにさだむることなし。

稲妻もいはれず我もかたられず

 

朝顔の傾きもせず開きけり

葺の藍ばかりさく盛りかな

 

定めても咲てあまたの女郎花

色見えて花こそみえねをみなへし

枯はせで終には消ん女郎花

哀れなり身延拝みに角力取

水の上行や花火の消いそぎ

小枝から苔はじめる木僅哉

 

 感偶

 

鶏頭を赤く見て居て年のよる

後の声思はずになく鶉(うずら)かな

 草間車三の江戸へ帰るを送る

大根まく道のはしにて別れけり

 

信中別所の里に維茂の古墳とて、

田畑のひまに九重の石の宝塔あり。

 八重葎しげりにしげり苔青むしにむして銘文を分つ。

維茂は良和三年甲辰の年逝去と也。

今又文化丁卯のとし迠(まで)凡七百九十余年也。

 一目処の人の跡につきて此碑前にまゐりて、

はるかにいにしへを落涙す。

 

斑螫(はんみょう)に維茂が墓の残暑哉

 

 別所より上田へかふるほど

舞田といふ里の道のかたはらに、

息をやすめて

早稲の葉に舞田生れの為政

 

秋の風藪にかゝらぬ日はあらじ

身を笠にまかせておけば秋の風

 

ハ旬にあまり七旬に及ぶ父母に先だちて

十にもたらぬ稚子三人に思ひを残して、齢四十にも足らで、

六月末の八日謙斎樗むなしくなりぬるよし、

太年がつげるに胸つぶれ勝ちぎれ、

意身に添ずぞ覚る。

かこつにつけなぐさむにつけ、

うらなくかたりうらなくむつみたるも、

たちまちけふの夢になりて、露の袂たゞ一時にくちぬ。

秋風や活てたゞ此人を泣

 

壹からみてはをられぬ芒かな

今迄のすゝきでも居ず穂に出る

乱るゝをおのが冨貴や花芒

 愛にふれてほたへほたへ飛で歩行に

蜑(あま)が子や親にかくるる花すふき

 

文月廿七日穂屋の御射山(長野県)に詣。

みさ山はかのしばし里あると詠れたる哥枕にして、

神事などもことふりたる事ども残りて

供御の箸に芒を持て捧るなど、

清く神々しきわざども見えけり。

此日人をもてなすにも猶芒を箸にもちゆるめなれず。

古代の姿にこそ。

 

そこの子の左に持ちぬ芒箸

 

こしらへて鳴子提行山の道

半分は肚(はら)もっぶれし案山子哉

ただは居ぬ露や稲妻の下り上り

むら雨やよごれもやらぬ露の玉

露の宝むしった草に跡を引く

むつかしく羽はつかいぬ蜻蛉哉

とんぼうの向を揃へる西日かな

 

 北越柿崎より柏崎へ行途中

蜻蛉のこころさへして砂の道

はつ雁のかぞへて来るか澪標

野になれる雁ちらかりて鳴にけり

 

窓前

 

あてにして来るか此田に落る雁

三日の月岩にのぼれば入かふる

月まちてうしろはるけし壱岐対馬

名月や風も影もつ海の上

名月や竹を火に焚竹の音

名月や欝金畠に井戸のある

 

 峡中一望

 

名月や朝と晩との山のうへ

大彿の柱の穴もけふの月

旅をする姿に月は歩みけり

寉乱(かくらん)の株のはらの月見かな

山の端やはなるる月を見おふせる

いろいろに月をみる也歩行渉り

月の雲雲から先に離れ行

 

 幽居

藤の実に成ていつしか月の客

 

 草庵

能月を言尽しけり山おろし

月の雨定まりて降庇かな

既望(いざよい)や薦僧(こもそう)宿に立帰る

  十六夜や丁声こぼす五位の声

いざよひの雨流るふや隅田川

十六夜やきらりと月のありふれる

さはなくもいざよふものを月の空

 

潰れても仕舞ずむしの枯る声

虫のこゑ火を吹おこす調子哉

 

草庵盆池あり名月暑しといふ夜頃

こふに辺して声頻りなりければ

興梠(こうろぎ)啼て蟹にはさまれな

 

たのみある隣は城や総嫁

 

凡寝覚ること九たび

冷腹を鳴てくれるかきりぐす

切岸やなく鹿あとも先もみず

鹿うつうつ眠りころぶや昼の内

しらぬ木のおのれに余る紅葉哉

柿の葉のもみぢしどけし一ちから

捨る迄白きはしろき扇かな

すて扇妻子珍宝及王位

重なって砧(きぬた)聞える山辺かな

 

田家

打までを椎の本におく衣かな

秋の日や雨を忘れて木の枝に

 

 幽処

奈良のうたから蝶のくる芙蓉哉

引ずりて花野歩行ん玉椿

梅が香に似るもたまく草の花

喰て寝て牛のみて居る紫苑哉

早稲刈て一肩いれし夫婦哉

稲刈や雫にぬれる一蓮寺

僧の来て岡穂かる也垣さかび

何修行せむ菊の香のひと味覚

菊にみな成て匂ふや藪ひとつ

 

 病床 

身ひとつを蒲団の薬や菊の花

きくの国芥子は今年の種をまく

菊の咲家から出るや荷ひ茶屋

菊の香は尽きぬ九月九日哉

 

 兼好の実見にも背きて々れよりして良、

それともなくこれともなく、

今年既に古稀の齢をたもつ

きくの香や覚えては居る年の貪

きくの花にほはんとする香ではなし

初かけの月夜になれて后の月

深山木は風を離れずのちの月

後の月厩にさして一しきり

鴛鴦に闇の走りて十三夜

 

 十三夜も四五夜は過て

 

本に月の出てあり露が霜になる

山雀の来て居らぬ本はなかりけり

見て登る峠や椋鳥のむれかへす

粟刈て秋の山のみのこりけり

 

孤村

 

草もみな荻にかたらふ夜の声

住替る隣に黄ばむ密柑かな

 

獨酌

 

栴檀の実の飛込し新酒哉

蕎麦あふつ薬の行衛や妙義山

末枯やちりぢりに日の照りせまる

 

 






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最終更新日  2021年09月04日 13時12分10秒
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