山梨県歴史文学館　山口素堂とともに

○芭蕉翁金澤集合の説　

資料　『奥の細道詳解』「逸話集」岩田九郎氏著　昭和五年

　　　　　発行　至文堂

　　　　　一部加筆　山口素堂資料室

金沢にて北枝と秋の坊とは、ことさらに睦まじき余りに獨鈷鎌首の争い絶えず、おのづから中あしきようにも見え侍るに、奥の細道行脚の時、金沢にに暫らく杖を休め給い、北枝などにも対面ありしに、例の仲悪しければ、この事を北枝より秋の坊へ露ばかりも告げず。

しばらくして秋の坊この事を聞出して、急ぎ芭蕉翁借のやどりにまかりて、対面を遂げけれども、なお北枝が告げざる事を甚だ憤り憎みて、北枝、秋の坊や曾良など翁諸ともに會したる席にても、其の終日は北枝とは一向もの言わずで有けるを、翁も可笑しがり給ひて、坊が気性を称し給ひけるとぞ．（俳諧世説第三）