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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年11月23日
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カテゴリ:甲斐武田資料室

「甲陽軍艦」品第一 甲州法度(ほっと)の次第

 

一、

甲州国中の地頭人(領主)がくわしい理由も上申せずに、勝手に犯罪者の知行する財産だからといって没収したりするのは、いわれのないいきすぎである。

・もし罪人が晴信の被官(直接の部下)だったならば、地頭が干渉してはならない。

・没収した田畠については命令により別人に書き替えること。

・年貢、諸労役はすみやかに地頭へ弁償すること。

・祖先の論功によって得た恩賞地の場合にいたっては、記載するまでもない。

・次に在郷の農民の住居、園宅地、ならびに妻子、財産のことは当然慣例にならって各筋の機関に引き渡すこと。

 

二、

訴訟については、裁きの場、白州に出たのちは、奉行以外の人に披露してはならないこと。ましてや判決が下った模様などは公表してはならない。

もしまだ訴訟にいたる以前ならば、奉行人以外の者に対しても禁ずるにはおよばない。

 

三、

詐可、承諾もなしに他国へ通信、文通することはすべて禁止する。ただし信州在国の者で、謀略のために甲斐国内を通行し得る者はやむをえない。

・もし国境の人が、常日ごろ手紙をやりとりしているのであれば、これをまでも禁ずることはない。

 

四、

他国と縁組を結んだり、あるいは領地の所有や官職に就く件で契約をするのは、はなはだしく違法の因になる。だから堅く禁ずる。

・もしこれにそむく者がいたら厳しく誡(いまし)めるべきである。

 

五、

土地所有権をめぐる紛糾、すなわち所有不明の田畠は、税のかかる年貢地においては地頭がとりはからうこと。恩地ならば命令でもって定める。

・ただし借金などの事についてはその程度多少に応じて、相応の処置がなされる。

 

六、

農民が年貢を滞納することは、重罪だ。百姓地では地頭の判断に任せてとりたてをすること。

・もし本来の責任がなく特別の事情であるなら、検使を通して改めて調べること。

 

七、

年貢、公事を名田単位で賦課する所有明らかな名田地を、正当な理由もなく地頭が没収するのは違法の極みだ。

・ただし年貢の滞納がひどくかさなり、その上それが二年以上にわたる場合は特別やむをえない。没収権の行使を認める。

 

八、

山野の地の境界線の紛糾が激化したために、その土地の四方に立札の標をたててとりしきる者は、もとの境界をよく追調査して定めること。

・もし旧境界によって、決定できぬときは、境界の真中をとり、それぞれ一円的に所有し干渉しないことにすること。

・それでも紛糾する者同士がいる場合は別人の所有にする。

 

九、

地頭の申し渡しによって、訴訟物件である田を凍結のため田札を立てると、作物の刈取りをやめてしまうといった場合は、翌年からその田地は地頭の判断に任すべきこと。

・けれども紛糾のため耕作していなくても、年貢を弁済していればどうこうということはない。

・次に地頭赤定年貢以外の理にあわぬ課役をした時は、俸禄の半分をとりあげること。

 

十、

恩地が自然の水害、旱魃にあっても、替地を望んではいけない。獲れる分量に応じて奉納すること。

・特に忠勤の者へはそれ相当の替地を充補すること。

 

十一、

恩地を所有する人で、天文十年(一五四一)以前から十カ年間、地頭へ命じた賦課、夫役、知行を勤めることがないならば、改替はしない。時効が成立する。

・ただし九年におよんだ場合のものは事情によって指図を加えるがよい。

 

十二、

本来の私領の名田のほか恩地領は、事情もなしに売ることは禁止すること。

・本条のような次第だが、やむをえない時は、その理由を書類にて上申し、売却の年限をつけて売買させること。

 

十三、

百姓を人夫として障中で働かした折に殺されたりした場合、その一族は人夫を出すことを三十目間は免除すること。

・そのあと前と同じように労役を課すこと。

・荷物を失ったりした場合は配慮する必要もない。

・それから人夫が逃亡して、それを報告もせずにすませて数年経っていたとしても、罪科を免れ難い。

・人夫にそれほどの咎(とが)なくて主人赤殺害したりした時は、地頭への勤めは十カ年間、右の夫役・陣夫・詰夫等の労役を勤めることはない。

 

十四、

親類となり、被官となるための誓約を詐可なく自分勝手にするのは謀叛と同様である。

・ただし戦場にあって、忠節を深めるため盟約するのは別である。

 

十五、

先祖からの功により代々仕える古参の家臣然、他人の下人を召しかかえた折り、元の主人が見つけて捕えることは禁ずる。

理由を説明してから受けとること。

・さらに元の主人が伝え聞いて訴訟にもちこんだ際に、訴訟期間中に抱えていた主人が下人を逃がしてしまったときは、他の者を一人弁償としてさし出すべきである。

・奴稗、雑人の場合は所有権を主張する訴訟もなくて十年たったならば、「御成敗式目」(四十一条)にそって時効が成立し、そのまま所有してよい。

 

十六、

奴稗が失踪したあと、たまたま路上で見つけ、現在の主人に糺す前に、自分の家に連行していってしまうのは不法である。

この場合まず当の主人に返し置くこと。

・但し遠隔地での場合は処置が遅れるのも当然で、三日や五日くらいまで遅れてもさしつかえない。

 

十七、

喧嘩は理由の如何を問わず両成敗すること。

・ただし喧嘩をしかけたといっても、堪忍した者に対しては処罪すべきでない。

・そこでひいきにして不公平な助勢をする共犯者がいたら、文句なしに同様に処罪すること。

・もし犯意がなく、思わぬ事の成り行きで誤って殺傷におよんだ場合の成敗は、妻子、家族が連座するまでにおよんではいけない。

・ただし喧嘩人が逃亡してしまったりした場合は、たとえ不慮の場合であったとしても、まず妻子を当府に拘置し、事情をただすこと。

 

十八、

直属の家来の喧嘩や盗賊等の狙罪でも主人に直接関係しないのは当然だ。

・しかし、事実関係をただしている最中に、当の主人が無実をしきりに陳上し、かばっている途中で喧嘩した家来が逃亡したりした時は、その主人の資産の三分の一を没収すること。

・資産がない場合は流罪とすること。

 

十九、

特に恨むべき理由もなくて、義理で結ばれ、武功をたてて奉仕すべき将である寄親(よりおや)をきらう事は身勝手で不当なことだ。そういう者にはこれからのちに理不尽なことがきっと出てくるはずだ。

・ただし寄親が権限をこえて際隈なく無理をいう時は、理由書をもって訴え出ること。

 

二十、

乱舞(能の舞)・遊宴・狩猟・川猟などにふけり、武道を忘れてはならぬ。

・天下は戦国であるから、すべてをなげうち武具の用意に全力を尽くすことが肝要である。

 

二十一、

水害などのおりの流木材木は慣習としてひろい所有してよい。橋材は本の所に返えすこと、

 

二十二、

浄土宗と目蓮宗の信徒とは国内で論争しないこと。

・もし仲介するような者があれば僧侶も檀家もともに罰する。

 

二十三、

被官が出仕したおりの座席順序のことでは、あらかじめ決められてあったならあれこむ言わないこと。

・およそ、戦場でない場面で恨み言めいて意見するのは卑怯なことだ。

 

二十四、

裁定を申し出た者は、裁決が下されるまで待つこと。

・審理の途中の仮処分の段階では、訴えの正当性のいかんにかかわらず、乱暴狼籍など禁を破れば敗訴とすること。

・したがって当然この訴訟の対象物権は勝訴した相手側に引き渡すこと。

 

二十五、

子供の口論は特に問題にすることはない。

・ただし両者の親が止めにはいらなげればならないのに、かえって激昂するならば、その親こそ世のために諌めめなげればならない。

 

二十六、

子供が誤って友を殺害した場合は、成敗するにおよばない。

・ただし、十三歳未満の子供は刑事責任はない。

・それ以上の者は、罪をまぬがれがたい。

 

二十七、

訴訟に関係する寄親、指南をさげて、別の筋を通して訴訟におよんだり、寄親の方で他の寄子をのぞむのは極めて悪いことだ。

これは今から禁止すること。

このことは前条に定めたことである。

 

二十八、

訴訟は直接、信玄公に上申しないこと。直訴しないこと。寄子の訴訟については、当然寄親を奏者(訴訟の取りつぎ)として介すること。

・しかしその場合でも先令をみはからって考慮するのがよい。

・裁定の日のことは、先にも記したように、寄子、親類、縁者が上申することはいっさい禁止すること。

 

二十九、

たとえその職務者に任せてあるといっても、分国の諸法度、それぞれに違反してはならぬ。細かい事でも、報告せずに勝手な執行をする者については、ただちに停職解任すること。

 

三十、

主君に近く奉仕する役の者は、番所においてはたとい留守のおりであっても、世間を論評したり、声高に話すことは禁止する。

 

三十一、

他人を養子にする場合は、諸事を取りつぐ寄親の奏者に届け、跡目相続する遺跡帳に押す印章許可証をうけること。

・こうした後であれば、養父が死去したときは、たとえ実子があった場合でも、その者に相続させなくとも違反にならない。

・ただし継母に対して不孝ならば、継母はいったん養子に譲与した諸権利を女性であってもとり返すことにしてよい。

・次に恩地のほか田畠・動産についての処置は、亡父の遺言状に任すこと。

 

三十二、

棟別家屋一棟ごとに課す棟別銭の税法のことは、書類(棟役帳)を作り部落中へ申渡した上は、逃亡したり死亡したりしても、その郷中ですみやかに弁済すること。

・そのために、本屋のほかの新屋、までは弁済の対象としない。

・本屋二百文、新屋五十文が基本という。

 

三十三、

他郷へ家を移す者があれば、追って棟別銭を徴収すること。

 

三十四、

家を捨て、あるいは家を売って国中を流浪する場合も、どこまでも追って棟別銭を徴収すること。

・そうはいっても本人にすこしも支払い能力のない場合は、その屋敷を貸している者がかわって弁済すること。

・ただし屋敷主について二十疋(十文の称)以内は棟別の規模に応じて命じられた分を弁償する。

・そのほかは郷中が一体となって連帯で償うこと。

・たとえ他人の屋敷や家であっても、同じく家屋敷を貸している場合は、当然弁償する責を負う。

 

三十五、

棟別に関する訴訟事はすべて禁止すること。

・しかし逃亡、あるいは死去の者も数多く出て、棟別銭が元の二倍に及んだなら、申し出ること。

・事実関係をただし、赦すかどうかを程度に応じて配慮する。

 

三十六、

謀叛的な衆だったため成敗断絶した家の場合は、棟別銭の件はやむをえない。

・連帯の弁償もしなくてよい。

 

三十七、

洪水によって流された家の場合は、新屋を建てて棟別銭を償うようにすること。

・新屋というわけにいかなければ、郷中で協力して弁済すること。

・十軒に達する水流れの場合は、特別に考慮し、調べるにおよばない。

・死去のため断絶した家の場合は右に準ずる。

 

三十八、

利息をともなう借金法度について。

・訴訟にまでしないで、返済のない借主が所有する田地を一札によって各面からさし押えられた場合、先札の債権をもって有効とする。

・ただし借用証書の貸付月目等が紛らわしい場合は、正確な証書を優先して先札とみなし、田地はその方の債権に帰属する。

 

三十九、

同じく田畠などの質権設定を書き入れた借状は先札が優先するけれども、謀略的な偽文書は罪科に処する。

 

四十、

親の負物(債務)借金をその子が弁済するのは当然だ。

・しかし、子の負物を親の方へ請求してはいけない。

・ただし親が借用証書に加筆したら、子の負物も親が責任をとること。

・もしまた子が早世し、親があとの遺産を引継いでいる場合は異例ではあるが、子の債務を親が弁済すること。

 

四十一、

債務者が合法的な根拠を求められるあまり、遁世したといい、あるいは失院者だと称して分国を流浪させるのは罪が重い。

だからそれを許容した一族は、その借金を弁済すること。

ただし身を売る奴碑等の場合は先例にならうこと。

 

四十二、

悪銭は、市場で流通する場合は精銭を選り分けられるが、町中以外の場面では撰銭してはならない。

・皇朝銭、渡来銭、甲州銭など一文銭が何十種もあって、商取引きを阻害するので。

 

四十三、

恩地を借状に記載して借地のかたにすることを、許可も求めずにしてはいけない。その上、印判(信玄公の認可)を求めていて決裁にならぬうちに、もしその借金した領主が失院したりしたら、事の次第によっては取りたての訴えを認める。

・借状の年限がすぎた場合は、先の印判状に記してあった通りにせよ。

・もし年期が過ぎて質流れとなり、金を都合した当の者がその土地を欲したら認める。その場合も恩給地を支給されたのに応じて恩役など勤仕しなげればならぬ。

 

四十四、

失踪した人の田地を借金の担保にとった者は、年貢、雑貢租以下を地頭へすみやかに弁済する事。

・ただし地頭は債務の弁済がすんだら、その田地を認めること。

 

四十五、

穀米地(米地とも称され、諸役を負担しない一色田)を借銭のかたにすることは禁ずる。

ただし作手より下級の耕作者が嘘をついたりした場合には、年月が経過していても罪科に処すこと。

 

四十六、

借金した負債者が死去した場合、売買・借銭たどの取引きを周旋する保証人の名判(姓名と印判)をただして、そこへ催促すべきこと。

 

四十七、

連帯債務の場合、もしその中の債務不履行の誰かが逃亡、あるいは、死去したら、たとえ一人残った場合でもその者が弁償すること。

 

四十八、

債務に相当する質物は、契約通りにしてよいが、少額の債務につき過分の質物を取った者は、前六からの契約の期限をすぎても、ぶしつけに売却してはならぬ。

・利潤の勘定の上で損がなかったら三カ月ないし五カ月待ってから、しきりに催促してもその上まだ誠意がないならば証人をたてて売却することができる。

 

四十九、

借人の利率は一年を基準に定め、年期がすぎて田畠を渡すことを契約する場合は、田租として上納する産物の分量を書き加え、売買する場合は両者ともに地頭へ届けること。

・その手続きをせずに、折檻によって主人が剥奪したり、あるいは事情によって地頭が没収する時は、たといそれを買う人が借金人の借状、券契をもっていても信用できず、売買してはならぬ。

 

五十、

本銭や本物()の借用が元金合計の二倍になったら、しきりに催促を加えること。

・その上でなお滞納していたら過料を加えてよい。

・万が一、地下人・百姓が借金した場合で、支払い能力が著しく低くて遅意した時は、申し出すこと。この時も右と同様である。

 

五十一、

信玄公認可の質主が失失踪した場合は、調査し書類をととのえ、不足金があったらその田地、屋敷を没収Lてよい。

・ただし期間つきでない借状券契が甲乙和違する場合は請求できない。

・期限の定めある債権のための担保地については没収を認める。

・年貢、夫公事等は、地頭へすみやかに勤仕すること。

・借金した人の借状が約東の年限をすぎたら負担させることはできぬ。

 

五十二、

神官ならびに山伏などにおいては、主一人としてたのむような身分関係を結んではならぬ。

・違反すれば分国内を巡礼を禁止すること。

 

五十三、

譜代の被官が寄親に届けずに、権威をふりまわして実子を他人の被官とし、そのうえ田畠をことごとくその者に譲り与えることは今より後、禁ずる。

・ただし嫡子を本主人の被官とするならばそれ以外の場合は禁制とはしない。

 

五十四、

百姓が年頁・夫公卓を滞納した場合、質物をとり、許可もなく財産を分散させることは不法の至りである。

しかし、弁済期限を経過した時はその限りでない。

 

五十五、

信玄の定めた家法、法度についてその主旨に違反する者があるなら、貴賎を問わず訴状をもって申し出ること。情況によって処置するであろう。

 

右五十五ケ条は、天文十六年丁未六月に定め終ったもの。

追補の次のニケ条は天文二十三年甲寅に定めた。

 

五十六、

年限を定めての田畠を担保とする場合、十年を基準に質地代金として受領すること。

当人が貧困により弁済能力がない場合は、受領証を十年延ばして猶予を与えること。

それを過ぎたなら、買った人の自由にまかせること。

そのほか十年以上の年期の場合も右に準ずること。

 

五十七、

百姓が年貢をおさめない隠し耕作田をもっていたら、十数年経っていても、地頭の調査によって取りあげること。

けれども百姓に異論があれば口頭弁論で応じ、それでも決着がつかぬ時、調査のため現地へ派遣する実検使を直行させて、在地古老人の証言などをもとに解決すること。

もし地頭に分に過ぎた行為があれば罰金をおわせること。

 






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最終更新日  2021年11月23日 09時55分34秒
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