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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年11月23日
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カテゴリ:甲斐武田資料室

甲陽軍鑑 品第二 九十九ケ条の事(~49)

 





  『甲陽軍鑑 名勝』現代語新訳解説

  腰原哲朗氏著 (こしはら・てつろう)

1936年、長野県生まれ。東洋大学大学院中退。

長野県立松本所ケ丘高校校長を経て、

現在、松本大学松商短期大学部教授。

主要著書に、『島崎藤村・詩と美術』

・『リアン詩史;1930年代』

・『眩めく詩抄』などがある。

発行人 高森みどり

   発行所 株式会社ニュートンプレス

   

一部加筆 山梨県歴史文学館

  

信玄公の舎弟典厩が子息へ異見 九十九ケ条の事

 

一、 

主君に対しては謀反の心を抱いてはいけない。

『論語』では、急ぎのあわただしい時でも仁に違わず、

倒れんとする危急の場合でも仁を忘れないことが君子だ、という。

またいう、君に仕えるには、一身をささげ全力を尽くして勤めること。

 

二、 

戦場においては、いささかも未練をもたず、全力で戦うこと。

●『呉子(ごし)』(春秋戦国時代の兵法の名著の一つ)にいう、

死を覚悟して戦えば生きることもある。

生きようとばかり願う心で戦えば死ぬ。

 

三、 

油断なく言動を慎重にすること。

●『史記』にいう、

自分か正しければ、下のものは命令しなくても動くが、

自分の行いが正しくなければ命令しても従わない。

 

四、 

武勇をもっぱら心がけるべきこと。

●『三略』(『六韜(ろくとう)』と併称される中国兵法の古典。

上略・中略・下略の三巻)には、強き将の下に弱兵なしとある。

 

五、 

いつでも虚言をしてはいけない。

神のお告げによれば、正直は一時は損することもあろうが、

ついにはそのうち恵みとなってかえってくる。

「つけたり」

ただし武略の時は適宜、嘘も方便で駆使すべきか。

●『孫子』(『典子』とならぶ中国兵法の古典)にいう、

兵力が充実していても攻撃を避け、

時には敵の予想もしないことをして勝て。

 

六、 

父母に対してはいささかも不孝をしてはいけない。

『論語』にいう、父母につかえては全力で孝養につくすこと。

 

七、 

兄弟に対してはいささかもぞんざいな態度をとらないこと。

●『後漢書』(後漢の事跡を記した史書)には、

兄弟は左右の手なり、とある。

八、 

自分の力量に達しないことは発言すべきではない。

人の一言で、その長短を知る。

 

九、

 諸人に対してすこしも不作法をしてはいけない。

袖足していう。

憎・童女・貧者にも、ますますその人に応じて丁重に接すること。

●『礼記』(五経の一つで儒者の礼に関する書)にいう、

人は礼がきちんと行われている間はいいが、

無礼だと危い状態になる。

 

十、 

武芸の嗜みで肝要のこと。

信玄とその時代 品第三 信玄公、父信虎公を追放

 

 『甲陽軍鑑 名勝』現代語新訳解説

  腰原哲朗氏著 (こしはら・てつろう)

1936年、長野県生まれ。

東洋大学大学院中退。

長野県立松本所ケ丘高校校長を経て、現在、松本大学松商短期大学部教授。

主要著書に、『島崎藤村・詩と美術』・『リアン詩史∴1930年代』

『眩めく詩抄』などがある。

発行人 高森みどり

   発行所 株式会社ニュートンプレス

   

一部加筆 山梨県歴史文学館『論語』には異端、

つまり本筋をはなれた事を学ぶのは益がなく、

むしろ弊害がある、とある。

 

十一、

学問において油断してはいけないこと。

『論語』にいう、

学ぶだけで自分で思考しなければ深まらない。

逆に乏しい知識信玄とその時代 品第三 信玄公、父信虎公を追放

 

 『甲陽軍鑑 名勝』現代語新訳解説

  腰原哲朗氏著 (こしはら・てつろう)

1936年、長野県生まれ。

東洋大学大学院中退。

長野県立松本所ケ丘高校校長を経て、現在、松本大学松商短期大学部教授。

主要著書に、『島崎藤村・詩と美術』・『リアン詩史∴1930年代』

『眩めく詩抄』などがある。

発行人 高森みどり

   発行所 株式会社ニュートンプレス

   

一部加筆 山梨県歴史文学館で考えているだけで、

学ばなければ不確かで独断になる危険がある。

 

十二、

歌道に精通すること。

『新古今和歌集』にいう

かすならぬ心のとかになしはてし、

しらせてこそは身をもうらみめ。

 

思いのとげられぬのは、物の数にも入らない、

つまらぬ我が身のせいにはしてしまうまい。

相手に我が恋心をうち明けずに、

我が身のつたなさを嘆こう。

 

十三、

諸礼、油断なく身につけるべきこと。

『論語』には、孔子が周公の廟(霊を祭る堂)

に入って祭に関与したおり、

儀式について先達にくわしく質問した、とある。

 

十四、

風流過ぎてはいけないこと。

『史記』にいう、

酒は度をこすと、すなわち乱れ、

楽しみも極限に道すると道に悲しみとなる。

『左伝云』(『春秋左氏伝』 

戦国時代に成立した『春秋』の注釈書)にいう、

遊び暮らすことは鴆毒……の羽にあるという猛毒……

と同じで、必ず身を滅ぼすもの。

また『論語』にいう、善いことは善いこととし、

賢くあろうとするならば、情欲をおさえること。

 

十五、

ものをたずねた人に対して、失礼な応答をしてはいけない。

『論語』にいう。

友と交際して信用を失うような

非礼なことは言わなかったか反省する。

 

十六、

いつでも堪忍の二字を心がけるべきこと。

古語にいう、

若い時、韓信が股をくぐらされて聡をかかされたが、

よく忍んで後年漢の功臣になった故事のように、

●また、『論語』に、

「一時の怒りにわれを忘れ、その身を失う」

とあるように忍ぶ心が大切だ。

 

十七、

小さなことにつけ、大きなことにつけ、

命令に違反してはいけない。

水は容器に応じてどうにでもなる。

人も周囲の状況によって善くも悪くもなる。

 

十八、

知行(土地、財産の分配)

ならびに助勢を信玄公に望んではいけない。

●『左伝』にいう、

功績がないのに受ける賞は不正による富みであり、

禍の遠因となる。

 

十九、

詫言(愚痴、訴え事)や雑談すべからざること。

●『論語』には、貧しうして諂うなく、

富みて鎬ることなし、とある。

 

二十、

家中の家臣に対しては、慈悲肝要のこと。

●『三略』にいう、

民は両手両足のようなものであるから。

 

二十一、

家来の者が病気の時は、

たとえ手数がかかっても見舞うこと。

●『軍議』(勝敗を予言する中国の兵法書)には、

臣下の身を、自分の、のどの渇きのように思うこと、とある。

 

二十二、

忠節の臣を忘れてはいけないこと。

●『三略』にいう、

臣下の働きの善悪を混同して

評価していると功臣は離れる、と。

 

二十三、

人をおとし入れるために

悪く告げ口する者は許容できない。

ただし隠密の場合は別で、

内容についてはひそかに調べ確認すること。

●『論語』にいう、

真直ぐな板をとりあげて、曲がった材木の上にのせておくと、

いつの間にか材が真直ぐになるように民も服する、と。

(正しい人を邪悪な人の上に評価していけば民は服従する)

 

二十四、

正しい諌言にはそむかないこと。

古語にいう、

良薬は口に苦く、病に利あり。

忠言は耳に逆うて行うに利あり。

●また『尚書』(古社の別名)にいう、

忠告はその時は耳が痛く苦痛だが、実際の場面で利益になる。

曲がった木も墨なわを当てて削ればまっすぐにいく。

同様に人の忠告を快く受けいれれば政治を誤ることがない。

 

二十五、

家臣たちが奉公の意志はもっているが、

何らかの事情で困窮しているものに対しては、ひとまず援助する。

一年の計は五穀を種(うゝ)るにしかず、

十年の計は木を種るにしかず、

一生の計画は人を育てること、という言葉がある。

 

二十六、

自分の用事のために、屋形(御館)の裏門を出入りしてはならない。

●『礼記』(五経の一)にいう、

父子席を同じくせず、男女席を同じくせず、

とあるように、もの事のけじめをはっきりさせる。

 

ニ十七、

友人から仲間にされないような者は、

仁の道に励まなければならない。

●『論語』にいう、

食終える隙も仁に逢わず。

 

二十八、

毎日の出仕、懈怠してはいけない。

『論語』にいう、

畢境、出仕の侍は同僚と同じ所に居て、

それから奥へ行くべきである。

自分のいるべき場の判断が大切である。

●古語にいう、

三日も会わずにいた後では、

相手を今まで通りと思ってはならない。

まして修業している君子のような立派な人物の場合には

なおさらで、ずっと向上しているものだ。

 

二十九、

親密な知己たりといえども、

人前においては雑談すべきではない。

●『論語』にいう、

十分思案してから発言をして、行動せよ。

 

三十、

禅の修行に励むこと。参禅別に秘訣なし。

生死切なることを思え、という言葉がある。         ゛

 

三十一、

帰る時は前もって使者を出すこと。

突然の帰館では留守の衆の不行儀が目につき

叱責ということになる。

細かい事まで糾問していては際限がない。

●『論語』にいう、

教育しておかずに法に背いたと処罰するのは、残虐である。

 

三十二、

主君からいかなる、つ連れないされかたをされても

不平不満をもたぬこと。

主君が主君らしくなくとも臣下として勤めること。

またいう、

鹿をおう者、山を見ず。

またいう。

下の者が長上の者の意をやたらに探らないこと。

 

三十三、

召使う者の小さな過失は叱責ですまさなければならない。

そうでないと大きな罪を犯した者を死罪にみちびくことになる。

大公(周の文王が釣をしていて見出した呂尚太公望)はいう、

双葉のうちに悪はつみとらなければ、

そのうち斧を用いなければならない。

ただし小さな罪に対し度々罰すれば

かえって畏縮するおそれがあろう。

●『呂氏春秋』(葉の呂不章が撰をしたという。二十六巻)

にいう、

命令が厳しくなければ聴かないし、

そこに禁ずることが多ければすなわち実行しなくなる。

 

三十四、

褒美のこと、

大細によらず則ち応ずべきこと。

●『三略』にいう、論功行賞はすみやかに機を失わずすること。

 

三十五、

自国、他国の動静、政治の良し悪しにつきくわしく確認しておく。

●『書経』にいう、

古人の教えを手本にしないと永続しない。

 

三十六、

百姓には定めた役務のほかは、

むやみにそれを上まわって課してはならない。

●『軍談』にいう、

統治者が残虐な政治をすれば人々の生活は破滅し、

搾取を重くすれば、犯罪が際限もなくおこり、

人々は道義を破り荒れる。

 

三十七、

他家の人に対して、家中の悪事を決して語ってはいけない。

よい行いは、なかなか世間に伝わりにくい。

だが悪いうわさは千里をゆく。

●『碧厳』にいう、

家醜を外に向いて揚ぐることなかれ、と。

 

三十八、

人を召使う様、その適性によって用所を考え命ずべきこと。

古語にいう、

良匠はどんな材も捨てず、上将はいかなる士もすてず登用する。

 

三十九、

武具は怠りなく用意しておくこと、

●『老子』にいう、

九階ほどもあるような高い展望台も、積み重ねた、

すこしの土台から築かれる。

 

四十、

出陣の際は、一日も大将の後に残ってはいけないこと。

●古語にいう、

戦場で退却の鐘に心痛め、進軍の太鼓に勇む。

 

四十一、

馬に丹精をこめるべきこと。

●『論語』にいう、

犬は守禦をもってし、馬は労に代わるを以てするから、

よく人に養われるものなり。

 

四十二、

敵味方打ち向う時、

相手が未だ備えを定めないうちに撃つべきこと。

●古語にいう、

よく敵に勝つ者は、敵の形の定まらないうちに勝つ。

またいう、

まっしぐらに進撃する家風で躊躇しない。

 

四十三、

軍の時、敵を遠くまで深追いしないこと。

●『司馬法』(斉の司馬穣苴の撰になるという兵書。一巻)にいう、

逃げる敵を追うあまり、隊列をくずし、人馬の力を空費しない。

 

四十四、

勝軍に至っては、踏み止まらず一気にかかって圧倒せよ。

但し敵が陣容をたて直すときは、留意すること。

●『三略』にいう、

戦は風の発するが如く攻勢は迅速に一気にせよ。

 

四十五、

軍が近づく時は兵を荒く扱うべし。

その訳は、

兵の怒りが戦いにつながり、激しく懸命に戦うものだ。

●『司馬法』にいう、

相手が威力なく柔かならば水のように弱く、

人はこれをもてあそび、

威力あり剛なれば火の熟するようで、人は恐れをなす。

 

四十六、

敵勢の強力さを人前で語らないこと。

●『三略』にいう、

敵の素晴らしさを人に語らせることを許さないようにと。

四十七、

諸卒は敵方に対し、悪口を言わせてはいけない。

●古語にいう、

蜂を怒らせれば、竜のような勢いで猛り狂い襲いかかってくる。

 

四十八、

たとえ心安い親類、被官といえども柔弱の姿勢を見せるべきでない。

●『三略』にいう、

勇猛さを失っていると、配下の役人も兵士も畏敬しなくなる。

 

四十九、

あまり進退に心のままの行為に走らず、

挙動の面で慎しむこと。

●『論語』にいう、

本筋からはずれた事を多く望み好むと結局得られない。

またいう、

過ぎたるはなお及ばざるが如し。






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最終更新日  2021年11月23日 15時00分48秒
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