”春は恐ろしい季節ですよ”
【道成寺】の中の台詞なんですけどね。
何が恐ろしいって、こんな三島を創ってしまったのが何より恐ろしい!
ってコトで、三島由紀夫の『近代能楽集』から、いきなり【綾の鼓】と【道成寺】の2本。
実は先月も別の劇団のこの『近代能楽集』の公演を見に行きましてぇ…がっかりしました。
そんな個人的なワケで、この公演には期待大。そして―
裏切られましたぁ!イイ意味で!!(笑)
ワークショップならではの、というか最初はお遊びか実験的なコトから始まったんじゃなかろうか?
って、感じのこの発想。さかさまで、さかしまのMISHIMA!
2本とも面白かったんですけど、自分的には【さかさま綾の鼓】
女御に恋した庭掃きの老人が、弄ばれた恨みを晴らす為に化けて出てきて
『あら恨めしや、あら恨めしや』って鳴ろうはずもない鼓を女御にひたすら打たせ続ける。
っていう元ネタの能「綾鼓」の老人に、三島は怨霊となった後も女御の命令で鼓を打たせました。
だけど、今度は音が鳴るんです。しかし、『きこえませんわ。』と言うマダム(女御)。
やがて疲れ果てた老人は、100回打ったところで手を止めて去ってしまいます。
そしてマダムは言うんです。『あたくしにもきこえたのに、あと一つ打ちさえすれば。』
で、何が「さかさま」かって言うと
男役の登場人物を女性が、女役を男性が演じるって、ただそれだけ。
ただそれだけなのに、この戯曲がこんなに表情変えるとは!
やっぱり印象的だったのは、怨霊となった老人と老人の心を弄んだ(試した)マダムの会話の所。
ここで男女今まで着ていた衣装をお互い交換して、本来のマダム役は女性になって
『女が証拠をもっているおかげで、男の人は手ぶらで恋をすることができるのよ。』
ガッツ~ンときまたぁ。しかも、今まで自分が演じていた役に言ってるわけですから
なんかこう、恋の問題は老若男女関係なく、いつまでも変わらず持つもんなんかなぁ~
とか、思ってしまいました。
うわっ!勢いでめっさ恥ずかしいこと書いてるよ。
アホやわぁ自分。恋とかほざいてる歳でもなかろうに。
だけど、劇中の老人の年齢70越えてるんだよなぁ。
さてさて自分はその頃恋の似合う素敵なおじい様か、それとも単なるエロジジィなのか。
ともあれ見習いたいもんです。