”今回は「時間」を題材に描く「生と死」。”
って、さらりとプログラムに書いてあるけど、それってそう簡単な事じゃないかと思うんだけど?
―簡単みたいです。前川知大さんにとっては。
どんだけ重くなるんかなぁ、と思いきや深く考え込むなんてことも無くって
きっとそれは、この町に住んでいたらありえる話だから、かもね。
経済活動、健康状態、あらゆる個人情報がIDで管理された町。
プライバシーが全く無視される分、税金も格安なあるモデル都市の話。
アサノユウダイ。
自分のIDが無効になった為、実在する他人になりすます事になった山根。
そのことにより、ただ何となく生きていた山根の生活は一変する。
大学生である浅野の代わりに通っている大学のキャンパスで
以前、マンションの屋上でストリートファイトを挑んできた女・黒澤と再会する。
聞けば、自分の死期が近く、そうする事によって時間を長く感じる術を覚えているらしい。
冷静になると相手の動きがコマ送りのように見え、相手と同じ時間内に何十倍もの時間を感じる。
ケンカに勝つ秘訣は、その中にあるひとコマの隙を狙うことだという。
―ひょんなきっかけから
IDから個人の寿命が分かり、さらに分単位で命が売れる闇の世界がある事を知る山根。
そして偶然、何者かによってこの町の住人の1/30秒の命が無断で売買されてる事が判明し
また、黒澤に残された時間も知ることとなる。
(…薄っぺらな話、と思われてしまうと申し訳がたたないので
弁解させて貰いますと、登場人物あと8人(細かいの入れて)います。)
突然ですが、自分死ぬのイヤです。
怖いから。漠然と、怖いから。
その怖さの先にある理由なんて考えたことなかったけど
「今生きてる時間を失うのが怖いから!」って胸張って言えたらカッコイイなぁ。
不老不死なんて、自分の持ってる1分1秒が有意義で価値のあるモノだと
思える人たち(そう思った大昔の人たちもひっくるめて)の発想なのかもね。
時間と時間の間の永遠の時間。
もともと無限であるはずの時間に永遠を求めるのは、きっと命が有限だからこそで…
あれ?どっちだ。時間が有限で、命が無限?まぁ、いいかっ。
「終わる」って事を常に意識しながら進む物語の中で
不意に生まれる恋心や友情(ぐっと来た!)や思いやり。
…そういう事なんだろう。
『終わる事に理由は必要だけど、始まりに理由は必要ないでしょ?』
ですねっ!