〈原案・監修〉 木ノ下裕一
【三番叟】
〈振付〉 芦谷康介
〈演出〉 杉原邦生
芦谷康介 磯和武明 京極朋彦
【娘道成寺】
〈振付・演出・出演〉 きたまり
泥に汚れた、黒と白と灰の定式幕。
1年ぶりのご対面。待ってましたっ!!木ノ下歌舞伎。
だけど今回は芝居じゃなくてダンス。『道成寺』は分かるけど…『三番叟』って?!
どうなるんだろう。興味津々で待っていると、3人の男が並び粛々と長い間(ま)から
『どうどうたらりたらりら』
で、後ろの幕が一気に引落とされ、そこに現れたのは見事な紅白幕。
んでもって…
なんだコレはーーっ!!
めでたいと言えばめでたいけど、メチャクチャと言えばメチャクチャだぁ。
種蒔いたら稲が芽を出しとか、ボンボン持って応援してみたりとか祝言舞ってことを表現した後
汗だくになりながら、ただがむしゃらに乱舞、乱舞っ!
わかった。めでたい、めでたいよ。もう十分伝わったって!だから、めでたいんでしょ!
とか思ってたら、ちゃぶ台でご飯を召し上がる御三方。その恩恵を受けて育ったお米?
おわり。
だけど、そうだよねぇ。
歌舞伎が『翁』の神聖さを受けとめていたら(細かい事は省略でお願いします。)
”郭”や”舌出し”なんてパロディ恐れ多くて作れるはずないし
めでたさが一番だもんね!三番叟って。
―紅白幕は床に敷かれ
薄暗い中、天井から吊るされたロープに揺らる、望みを成就した女の戯れ。
それとも、これから行う悪戯への予兆。
打って変わって『娘道成寺』はコンテンポラリーダンスで真っ向勝負。
「花笠踊」「鞨鼓」のところも、らしき振りは見せるけど小道具な一切なし。
いくら舞踊劇だからといって長唄とかあるわけで、物語性は薄くなんのかなぁ
と思っていたら、きたまりさん。顔でお芝居されてます。
誘うように艶っぽく、かと思えば冷めた眼つきで白けた表情を浮かべたり。
床に伏せた女。紅白幕はするすると彩りを消し―
素人目から見ても『娘道成寺』のほうが見ごたえあるし、もう一度見たいっ!
だけど、思い出すのは『三番叟』のことばかり。
不思議なもんです(笑)
ダンス月間、その2。
イデビアン・クルー『排気口』 【世田谷パブリックシアター】
舞台は旅館。
ダンスなのにパンフレットに登場人物の相関図なんかがあって、何だか演劇ちっく。
それは昼ドラでも見てるかのような、いささかムチャな人間模様、恋模様。
と、思うのは「温泉へ行こう!」とか「はるちゃん」とかの勝手なイメージ。見たことない…。
始まってみればやっぱり愉快なドタバタコメディ調で、何回もクスクス笑かしてもらいました。
だけど、終盤から微妙に様子が変わって。そうだ!この作品のタイトルは『排気口』だった。
その空間や心に沁み込んだ思い出も
感情の揺らぎや世代に追い出されるかのように、やがては当てもなく消え去っていくもの。
新しいものを受け入れるための循環の中にあったささいな出来事。
ちょっぴり切なさも感じる、そんなダンスでした。
黒藤院『朧』 【文京シビックセンター】
10月の山海塾公演を控えた蝉丸さん。
娘さんの舞さんと今回舞台デビューになる6歳の麗さん、親子3人での嬉しい公演。
麗さんの筋肉を見せることのないか細い腕や、無垢に泳ぐ眼差しが何とも妖艶。
お二人とは対照的に、隆起しながら全身を蠢く蝉丸さんの肉塊。
透明のアクリル板に砂で描かれた、星雲のように回転を加えながら放射する無数の帯。
開放?―にも思えるし、吸収とも考えられるしなぁ。う~ん。
それは、もろくも崩されて…
分散した意識の集合体。
実体を得た創造物は喜びと力に満ち、さらに大きな媒体を得るが如く辺りの粒子を鼓舞するよう。
まるで能を見ているような、いつまでも余韻に浸りたい。そんな気分でした。
Baby-Qは、見に行けなかったぁ~。
と、凹んでいたら『SePT独舞 vol.19』は東野祥子さんっ!
よっしゃあぁぁーーーっ!!