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カテゴリ:社長の一人言
日本からアンタルヤへ戻って、初めて店に出た日。
ふと、私の前に姿を現した人がいた。 最初は似ているなあ、と思った。 相手が親しげに寄ってきて「しばらくぶり、イクミ姉さん」と手をさしだしたので、本人だとわかった。 もう7、8年会っていない人だった。 キリムがとにかく好きで好きで、アンティークキリムを見ると、我慢ができなくなる。目の色が変わる。 キリム病のトルコ人である。 貧しい青年で見た目は怪しげなので、トルコ人には好かれないタイプだが、心はピュアな人物で、壊れかけた頭も行動も私は嫌いじゃない。 「ああ、もう一生会えないかと思ったよ」と私も再会を喜んだ。 絨毯業界で、悪意のある人たちに騙され、どん底になり、5年ほど田舎にこもっていたそうだ。 今年、心気一転、気分をあらたに、アンタルヤへ集金に来たそうだが、もちろん昔のお金の回収なんて、できるわけがない。 帰る術もなく、知り合いの絨毯屋で寝泊りしながら、私のくるのを待っていたという。 店の管理人の元軍人ハムディおじちゃんに「警察呼ぶぞ!」と怒られながら何度も訪ねてきたようだった。 もちろん私と会えたからって、何があるわけではない。 仕事やお給料を与えられるほど、裕福な絨毯屋じゃないし、人の面倒を見れるほど余裕もない。 でもなんだか哀れであった。 本人が努力しなかった、間抜けだったといえばそれまでのことなんだけど、トルコで仕事を探すこと・・・・たとえ仕事を選ばずともとても難しいことである。しかもお金を得ることはもっと難しい。 彼もタバコを買うお金もなく過ごしていた。 日本に日本人として生まれた自分の環境に感謝する。 少なくとも、今、今日、明日のご飯を食べ損ねることはないもの。 彼のために私ができること・・・・・修理屋としての腕は確かな男だから、彼に仕事を与えること、仕事を探してあげること。そのきっかけが作れないでいるのだから(誰も彼を知らないから)、それができれば、後は本人の努力次第である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年08月19日 15時00分00秒
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