テーマ:『義経』(332)
カテゴリ:テレビ番組作品
郎党は舞い踊る。
人の歌があり、笑い声がある。 呆れ顔の義経を傍目に静は、 ひとときの幸せを噛みしめているようだ。 目に見えぬものであっても、 暖かい空気は確かに其処にある。 木曽義仲の首が晒される。 京の町の人々は死者をも罵倒し石を投げる。 ただ一人かつての女武者は 涙をためて運命を呪っている。 巴御前、義経に刃を向けようとする。 義仲の傍らにいつも彼女はいた。 その幸せを奪った源氏が憎い。 幸せも憎しみも哀しみも。 同じ場所に同じまま在ることはない。 ひとときの幸せ、消えた幸せ、 生まれてしまった憎しみや哀しみ。 父親の死を受け止めたかのような義高も、 身をひそめ息を殺し床下で泣く。 幼い心なりの生き抜く術を考えながら、 抱え切れぬ哀しみは、押さえきれない。 一日を一生と。 静御前は義経に言う。 永遠の幸せも永遠の哀しみも、 人は決して得られない。 源頼朝は我が身を振り返る。 栄華にある平清盛と対面する自分の姿を。 抱えきれない憎しみを押さえて、 射るように仇の顔を観ていた。 あの時の感情が彼を動かし、 同じ感情を木曽義高が持っている。 いつしか頼朝は、憎まれる側に立っていた。 いずれにしても、修羅の道。 鞍馬の師、覚日禅師は義経に語る。 白髪混じりの老いた師は、 世俗で戦う源義経の哀しみに触れる。 ひとときの幸せ、消えた幸せ、 生まれてしまった憎しみや哀しみ、 流転する人の感情は、 人そのものを傷つけてゆく。 西国で勢力を盛り返す平家、 十万の軍勢で都に近づいている。 明日をも知れぬもののふの命、 源義経もまた、戦へと向かっていく。 永遠を人は抱きしめられない それでもうつぼは、義経を想っている。 幼い頃より変わることなく。 一日を一生と。 静御前は義経に言う。 母より受け付いた白拍子の装束、 明日をも知れぬ別れに涙をこぼす。 今この時の哀しみに涙をこぼす。 想いだけを、胸に抱いて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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