テーマ:『義経』(332)
カテゴリ:テレビ番組作品
二位の尼は最期に微笑む。
安徳帝の身代わりとなった親王と、 三種の神器の剣を抱いて、 海へ身を投げるその間際、 彼女は何を感じていたのか。 平知盛は、最後まで戦い、 覚悟を決めて身体に碇を巻き付けた。 「見るべきほどのものは、すべて見た」 背中から海へ、落ちてゆく。 壇ノ浦、その地で平家は滅亡す。 源氏の総大将、源義経が見るのは、 平家の女たちが海へ身を投げる姿。 手を合わせ目を潤ませ、 次々と海へ落ちてゆく。 死の間際、何を思うのか。 死地へ向かう夫、知盛に明子は、 再び会おうと涙を浮かべる。 死は終わりではなく、生の続き、 彼女の幸せは、夫とともにあった。 最後まで源氏に戦いを挑んだのは知盛、 「見るべきほどのものは、すべて見た」 もの終わりを決めるのは 他人まかせの運命ではなく、 おのれ自身だと言わんばかりに。 源義経は戦う。 兄とも思った知盛と戦う。 彼は目的を果たそうと必死である。 彼はまだ無我夢中で生きている。 先陣を願い出る梶原景時の気持ち、 船を漕ぐ者を攻撃する掟破りの奇策、 聡明で的確な判断ではあるが、 広い視野で世界をまだ見れないでいる。 平家の女たちの哀しい運命に 絶叫する優しさは、 まだ彼が戦の裏表を知らぬ証、 無我夢中で生きている証。 重りもつけずに身を投げる親子のは、 平家の総大将、平宗盛親子。 平時忠は、船の隅で震えていた。 なんとも彼ららしい。 二位の尼は微笑んでいる。 その目の奥には、彼女の生がある。 夫、清盛との日々、亡き後は一門を支え、 数々の苦難に耐えてきた。 そして、能子に安徳帝を託し、 平家の血筋を残した末に、 彼女の一生は海の底に沈んでいく。 命があるのは、限られたの時間、 「はじまり」と「おわり」がある。 されどもその時間、どう使うかは人の意志。 満足ある生が満足ある死か。 はたまたそれ以外の生と死なのか。 壇ノ浦、その地で平家は滅亡す。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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