テーマ:『義経』(332)
カテゴリ:テレビ番組作品
一体何があったのか。
戦を終えて京に戻った義経の屋敷に、 梶原景時の息子、景季が訪れたのは、 源頼朝の意向を確かめるためもあったろう。 「今後、義経には従わぬよう」 兄と弟の亀裂は、深まりつつある。 義経と主従の絆は相変わらず強い。 萌や静、女たちもまた、義経の帰還を喜ぶ。 言葉を費やさなくとも、 自然と通じ合う関係もある。 だが、逆にどれだけ想いは深くとも、 届かぬこともあるのだ、心というものは。 義経の中に今も残るのは、 安徳帝と宝剣を抱いた時子の微笑み もはや確かめる術もない。 確かめることなく、義経は、 二つの神器を後白河法皇に渡す。 お誉めの書状を賜った礼を述べる彼は、 法皇の真意を確かめてもいない。 頼朝は確かめようとしていた。 平家追討の功績はあれども、 法皇に取り込まれつつある義経の真意は如何? わざと彼は法皇から官位を受けた者たちへの 処罰の言い渡しを義経に命じた。 だが自分だけに咎がなかったことを、 温情だと誤解する義経。 二つの神器を法皇に渡したのは、 兄の手を煩わせないためと彼は言っていた。 「何もわかっていない」 苛立つ頼朝は、義経を見限ろうとしているのか。 彼の描く武士の国の障害となろう義経を。 もはや確かめることはなくとも、 時子の微笑みは、 建礼門院徳子に受け継がれている。 しかと、義経は確かめに行ったのだ。 本物の安徳帝は、どこにいるのか。 義経は戦にて正しい決断をしたのだろう。 不意打ちに掟破り、先陣は梶原季時に任せず、 漕ぎ手を射て勝機を得た。 それらは勝利をもたらしたが、 勝利以外のところに人の気持ちがある。 鞍馬の師は、手に余れば捨てよと言うが、 義経は何もかも得ようとしていた。 人の心とは千差万別。 愚かで間違った決断であっても。 兄と弟の亀裂は深まろうとしている。 気持ちを確かめるというのは、 なんと、難しいことなのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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