子どもの頃の夢は、
カタチを変えて残っている。
きっと、誰の心にも。

源義経、頑なまでも、
願いは届くと信じているのか。
願えば届くと信じているのか。
兄、頼朝とともに生きる未来を。

武蔵坊弁慶ついに、
彼の目に映る現実を義経に説く。
義経の兄への想い、どれだけ強かろうが、
現実とはすれ違っていた。
すれ違っていることを見ずして、
兄への想いだけが義経を追いつめている。
願えば願うほどすれ違っていくことが。

木曽義高の供養塔で、
政子は義経の心遣いを知る。
気鬱のままの娘、大姫がために、
義経を鎌倉へ迎え入れるため画策する。
それをも彼は受け入れず、
頑なに兄にこだわっている。
兄の言葉を待っている。

だが、言葉はない。
言葉がなければ、進めない。
源義経主従、腰越に留め置かれる。

したためられたは、涙の腰越状、
一方通行の書状である。
兄頼朝宛でなく、大江広元に宛ての。

弁慶の進言に耳を貸さず、
一時は彼を遠ざける義経であるが、
千鳥たちの嘘が功を奏して、
再び結束が固まるのである。
それもまた、言葉があった故のこと。

平宗盛、清宗親子に会う頼朝、
直接会って、見極めようとした。
三種の神器の行方聞きながらも、
知りたかったのは、平家頭領の人柄である。
重衡との差を歴然と彼は見た。

兄と会えぬ義経、
顔を見ることも言葉を交わすこともなく、
腰越で留め置かれている。
願い叶わず、暗闇の中。
現実との折り合いをつけられぬまま、
さらに過酷な運命が待ち受けている。