テーマ:映画館で観た映画(8561)
カテゴリ:合作映画
記念写真なんだから、
さあ、みんなで寄り添って。 そう、笑って。 三人とも、50歳はとっくに越えてる。 でも、家族。 「ウィスキー」 南米の小国、ウルグアイ。 久しぶりに故郷にやってくる弟に、 兄は嘘をつかねばならなかった。 ほんとは結婚してないのに、 彼はとある女性を“妻”として紹介した。 「ウィスキー」 記念写真をとるときに、 三人はそう言って笑ってはいるけれども、 どこか、ぎごちない。 お兄さんの名前は、ハコボ。 お父さんから譲り受けた靴下工場を 細々と経営している。 弟はエルマン、 どうやらブラジルで大規模に 靴下工場を経営しているようである。 そしてもうひとりハコボの“妻”マルタ。 けれども本当は、工場の従業員。 長年ずっと寄り添うように働いていた。 最初に出勤するのはマルタで、 しばらくすると何も言わずハコボが登場、 工場の入口を開いて機械にスイッチを入れる。 その間にマルタは事務服に着替えて、 ハコボのために飲み物を作って彼の机に。 毎日、同じことの繰り返し。 まるで長く連れ添った夫婦の朝の風景。 ハコボはいつもマルタに、 小さな用事を言いつけている。 「お礼はするから、私の“妻”に。」 マルタは何も言わずに、 ハコボの申し出を受け入れた。 美容院に行って、オシャレしてきた。 でもハコボは何も言わない。 ハコボの家をキレイに掃除した。 でもハコボは、感謝もしない。 けれども二人は夫婦として写真を撮った。 「ウィスキー」 ぎごちなく笑いながら。 弟のエルマンがやってきたのは、 1年前に亡くなった母親の墓石の建立式のため。 ブラジルで成功して 幸せな家庭を築いているようだ。 彼は彼なりに兄に感謝しているようで、 資金提供を申し出たり、 二人を旅行に招待したりした。 マルタにもとても優しい。 時折、ハコボとマルタを疑っているようだが でも一言だってそんなことは言わない。 ほとんどが三人芝居、 ハコボ、エルマン、マルタの掛け合いである。 疎遠だった兄弟と 偽りの夫婦ではある、 どこかぎこちなく戸惑っている。 なのに決して恨み言を言わないのだ。 俳優の味わいある演技が、 洒脱な中に三人の気持ちを見せる。 疎遠ではあったけれど、 偽りの夫婦ではあったけれど、 ずっと気にしていたし、 昔からずっと大切な存在だったのだろう。 兄は流行遅れの地味な靴下を、 弟は都会で流行の靴下を作っている。 兄の人生、弟の人生。 そしてやっぱりハコボの工場にいる マルタという女性の人生がある。 「ウィスキー」 ぎごちない笑顔だけれども、 紛れもなく彼らの人生が浮かんでいる。 ウィスキー公式サイト お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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