テーマ:映画館で観た映画(8561)
カテゴリ:合作映画
トルコとの国境も近い、
イラク北部クルディスタン地方の小さな村。 2003年である、 まさにアメリカ軍の動向が、 この地方の大人の最大の気がかりな頃、 子どもたちは元気に駆け回り働いていた。 リーダーの少年はサテライト、 近郊の村を回り子どもたちを率いながら、 便利屋として大人たちに重宝されていた。 その日はバラボラ・アンテナを買い求め、 村に設置してテレビの取り付けを行っていた。 ほんの少し英語を知っている彼だが、 アメリカのニュース番組を訳せるほどの力はない。 適当に言いくるめ大人たちを煙に巻く。 しかしながら誰もが皆、 「ニュース」が必要なのは確かである。 足のない子が器用に松葉杖をついて、 サテライトの回りにいる。 地雷がそこら中に埋まっているのだ。 そして子どもたちは地雷を掘り出し、 サテライトの手配で国連の出先機関に売るのだ。 ある少年は口で信管を取り外していた。 誰よりも地雷を取り出した彼には、 両腕がなかったのである。 隣にはいとけない少女がいて、 二人は兄妹のようである。 もうひとり、幼い幼児を連れていた。 サテライトがその妹に恋心をを抱くのも、 サテライトの周囲の子どもたちが にやついてその様子を見てるのも微笑ましい。 彼らは危険と隣り合わせの中で、 無邪気さと明るさは失わないでいた。 だが、両腕のない子とその妹には、 辛く狂おしい暗闇があった。 マジックリアリズムと呼ばれる手法で、 ドキュメンタリーのようなニュアンスに、 少年たちの物語をない交ぜにしてゆく。 バフマン・ゴバディ監督作品。 戦禍にも元気で明るい子どもたちに焦点をあて、 暖かいまなざしで包みながらも、 しっかりと見据えられているのは、 「未来」のようである。 大人たちは「ニュース」を欲しがり、 両腕のない少年は「未来」を「予言」する。 だが彼は妹と妹の産んだ子どもに起こる悲劇を、 防ぐことはできなかったのである。 自分の力で必死に生きようとする子どもたち、 サテライトもまた、彼なりに必死である。 恋した少女の子どもを救うため、 足に怪我をしたというのに、 少女もその子どもも世界からいなくなった。 その代わりのように、 フセインの銅像の腕と 染められた金魚が彼にもたらされる。 どれだけ懸命に生きようとも、 戦争は人の命をもてあそび運命を変える。 サテライト少年のもとに、 両腕のない少年から「予言」が届けられた。 だが今は通り過ぎる戦車の列を観るのが 精一杯のようであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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