●●●ファミリー・ビジネス
NYは人種のるつぼ、シドニー・ルメット監督は、3人の俳優を親子にして泥棒にした。ショーン・コネリー、ダスティン・ホフマン、マシュー・ブロデリック。1989年の作品。Danny boy, Oh Danny boy, I love you so.アイルランド民謡に見送られ、祖父であるジェシー・マクマレンは獄中で逝く。残された父ヴィトーとアダム、新しい親子の関係が始まろうとしている。泥棒稼業から足を洗って、精肉店を営むヴィトーはとにもかくにも、息子のアダムを全うな人間にしようとした。彼も期待に応えて、か、マサチューセッツ工科大学へ。だが、アダムは父よりも、今も泥棒稼業を続ける祖父が好きだった。保釈金を出せと、息子に金の無心をするような自由だけど気ままな男だったが。全く似てない親子三代、自称スコットランド人のジェシーは、シチリア島の女性とNYにやってきた。二人の息子ヴィトーはユダヤ系の女性と結婚。そうしてアダムが生まれた。それでも三人揃うと血のつながりが見える。アダムは父の期待を裏切って、大学中退、祖父に研究開発中の酵素細胞とデータブックを盗みだす計画を持ちかける。さんざん反対したヴィトーも、アダムを守るため計画に参加する。そうして親子三代のファミリー・ビジネスは、成功したかに見えたのだが。「人は愛されていることを武器に、なんでも言えるのさ」ジェシーは、自由にアダムと接し、ヴィトーは、息子に厳しくあろうとする。やりたいことをしようとする孫に、手をかすこととと、息子の将来を考えて道を指し示すこと。祖父も父も同じようにアダムを愛している。その深さを比べることなど出来ない。成功したかのように見えたファミリー・ビジネスだが、取りこぼしがあった。アダムが捕まり、ヴィトーとジェシーも。判決は祖父に過酷な運命をもたらす。まるで、息子の孫の身代わり。アダムの心に父へのわだかまりが生まれる。But come ye back when all the flowers are dying,If I am dead, as dead I well may be.自由気ままな祖父と真面目な父に、前しか見えない若者。三者三様の姿を魅力ある俳優が演じる。アクションは少な目、ほどよくコミカルだ。ストーリーに強さはないが、後に強く残る「愛情」がある。祖父の愛情、父の愛情、成長した若者も愛情を与える側になる。そして、死は全ての人間を故郷の大地に連れ戻していく。Danny boy, Oh Danny boy, I love you so.ラストシーンの『ダニー・ボーイ』見送る側と見送られる側は順番だ。NYは人種のるつぼ、さまざまな血が混じり合いながらも、人生の節目はジンワリやってくる。ヴィトーとアダム、新しい親子の関係が始まろうとしていた。